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中国のスパイ容疑拘束に「公安調査庁」絡みの可能性が浮上

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中国当局に拘束された日本人2名の判決文をTBSが独自に入手した。この記事によると中国当局は拘束された2名を公安調査庁の協力者と見ていたようだ。松野官房長官は記者からの質問に対して「公安調査庁に直接聞いてくれ」とだけしか対応せず疑念は払拭できていない。だが拘束当事者である鈴木氏はさらに別の指摘もしている。実は公安調査庁の調査は中国当局に筒抜けだった可能性があるというのだ。こうなると日本の諜報活動の不手際に民間人が巻き込まれたことになる。

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本日のテキストは次の二つだ。TBSと毎日新聞なので同系列の取材である。

TBSは17人のうち少なくとも2名は公安調査庁に接触した容疑で有罪判決を受けたようだと書いている。まず、本来は機密であるべき判決文をなぜTBSが入手できたのかという点が気になる。

中国の裁判制度の恐ろしさは、そもそも判決が公表されないこと(つまり当局が罪だといえばそれが罪になってしまう)という点である。

安全な国家とはいえずビジネスを遂行するのは難しい。仮に巻き込まれたくないなら政治から距離を置き日中友好などには関わるべきではない。単に市場としてしか見てはいけないことになる。それでも成長機会が限られた日本から進出せざるを得ない企業があるという点に複雑な感情を覚える。余剰人員の吐口として利用する企業もあるのだろうが、実はこれは社員を危険に晒していることになる。

裁判記録が機密であるということは中国当局にとって都合の良い記録が流されてくる可能性があるということを意味している。つまり、このほかの事例では中国当局がハイテクやバイオの分野で先端情報が欲しいからという理由で「スパイ」を拘束しているという可能性は残るが、部分だけを見せることで「全部スパイ絡み・公安調査庁絡み」という印象操作ができる。

ところが話はここでは終わらない。当事者である鈴木英司氏は著書の中で「偶然誤送者の中で再開した」とする旧知の外交官から「公安調査庁の中にスパイがいる」と聞かされたと言っている。

起訴後に鈴木氏は東京の中国大使館に勤務したことがある旧知の中国外交官(スパイ容疑で起訴されていた)と護送車の中で再会を果たした。この外交官は、公安調査庁の中にはスパイがいると指摘した上で、「ただのスパイじゃない。相当な大物のスパイですよ。私が公安調査庁に話したことが、中国に筒抜けでしたから。大変なことです」と語ったという。

鈴木氏はこの発言を完全に信じているわけでもなさそうだが、それでも中国当局がなぜ公安調査庁のIDを複数枚持っていたのかについては気にしているようだ。

日本人の一人としてはまず中国政府を疑いたくなる。

そもそも機密であるべき裁判記録が流出した裏には何らかの意図があるはずだ。さらに鈴木さんのエピソードも「外交官と偶然再会する」というのは破綻した安いドラマのシナリオのように感じられる。つまり中国側が「日本の公安調査庁の関与」を仄めかすために情報を出している可能性がある。

そもそもこの外交官は本当に起訴されていたのだろうか?という気にさえなる。

TBSはその意味では中国当局の掌の上で踊っているだけということになるのだろう。だが、おそらくTBS・毎日新聞もその自覚はあるのではないか。そうした自覚はありつつもやはり日本の関与が気になっているのではないだろうか。

問題はこれに対して松野官房長官が何も答えなかったという点だ。「事実無根」で済んだ話なのだ。この問題を官邸では処理できなかったということを意味する。これも毎日新聞が記事にしている。

仮に事実無根なら否定すれば済むだけの話である。否定できないということは何か言えないことがあるのだろう。

結果的には、民間人を巻き込んで諜報活動をやっては見たが中国当局から「お前たちのやっていることは全部わかっているんだぞ」と突きつけられていることになってしまう。国家の威信に関わる重大事だ。

となると次に気になるのは林外務大臣の訪中の意義だ。政府は何も説明しないのだから、林さんは知っていた可能性と知らなかった可能性がそれぞれ排除できない。

仮に公安調査庁からレポートが上がっていたなら「巻き込んだ可能性がある」と知りつつ形ばかりの解放要求をしたうえで日中交流促進のために李強首相と会ったことになる。中国が公安調査庁の関与を疑っているとすればおそらく林外務大臣は拘束されているアステラスの社員が解放されることはないとわかっていただろうから、単に中国の気持ちをつなぎ止めに行ったというわけだ。

毛寧報道官は

近年、同様なケースが多発しており、日本は国民にスパイ活動をしないようさらに注意喚起する必要があると指摘した。

と言っており、アステラス社員の問題を「一連の問題」と考えていることは明らかだ。

だが、仮に公安調査庁から何も知らされていなかったとしたらどうだろうか。日中友好を促進したい宏池会系内閣の意図とは裏腹に公安調査庁が独自に動いておりその事実を中国から突きつけられてしまったことになってしまうのだ。

中国のメッセージは極めて簡単だ。「日本もいろいろやっているようだが、全部こっちはわかっているんですよ」である。おそらく政府は全体像を把握しているのだから、このメッセージがどのような意味を持っているのかよくわかっているだろう。つまり、岸田政権の幹部は「公安調査庁からレポートが上がっていたのか」を含めて全てわかっているのだから、その意味合いもよく理解できていることになる。

ただ、真相がどうであったにせよ日本政府には積極的な説明はできないだろうなと感じる。どちらにせよ何らかの不手際を認める必要があるからだ。となると中国が出したい情報だけを出したい時に出して日本の世論を好き勝手に撹乱できてしまうということになる。安全保障上は受身に追い込まれることが最も危険なのだが、今の政権に積極的な対策を求めるのは無理なのかもしれない。

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