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スーダンのクーデター騒ぎをかいつまんで短く説明

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突然の騒ぎだったようだ。街が騒然とし空爆が行われた。人々は逃げ惑う。テレビ局ではニュースが流されていたがスタジオの外から「ガンガン」という音がしたと思った次の瞬間ニュースはブルースクリーンに変わった。本稿ではまず短く「例え」で説明し、その後で経緯を書く。「例え」を読むのは1分もかからないだろう。これだけ読めば他の人に大体のことが説明できる。だがその後の経緯は恐ろしく複雑だ。さらに最後にロシアのウクライナ侵攻の話を書く。実はスーダンの金がロシアの資金源として利用されている可能性もあるそうだ。

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「例え」による簡単な説明

バシル大統領はスーダン版のプーチン大統領だ。そしてスーダン版ワグネル(独裁者を守る私設の軍隊)がRSFである。プーチン大統領が倒れたのにスーダン版ワグネルは国軍に吸収できなかった。結局国軍に吸収されたくないRSFが抵抗し内乱が引き起こされた。

スーダンは長い間オマル・バシル大統領の独裁体制にあった。ダルフール紛争ではICCからバシル大統領に逮捕状が出ているという点もにている。

このバシル大統領が自分の体制を守るために作った即応部隊がRSFである。ダルフールではジャンジャイウィードとして知られており今も厄介ごとを引き起こしている。TBSは次のように解説する。

RSFは、2003年に始まったスーダンのダルフール紛争で、バシール政権の支援を受け住民を虐殺したアラブ系の民兵組織が母体となっています。


だいたいこれでなんとなくわかったような感じになる。もちろん詳細はかなり異なっているので専門家は「これは単純化しすぎだ」と考えるだろう。つまり、その詳細は極めて複雑である。

状況をややこしくしている理由は二つある。スーダンは南北でイスラム・非イスラムという違いがあり、定住者と遊牧者の二重構造になっている地域もある。次にさまざまな国の名前が出てくる。きっかけを作ったのは石油利権に関心があるアメリカだが、中東のイスラム圏もイスラム教を通じてバシル政権に関与している。中国もバシル政権を支援しており、最後にはロシアの名前まで出てくるといった具合だ。

実際の経緯

スーダンではバシル大統領が国内のイスラム主義者と組み石油利権を背景にスーダンを支配してきた。クリントン大統領(民主党)時代に「スーダンはアルカイダなどのイスラム過激派を支援している」としてスーダンをテロ支援国家に指定する。ところが結果的にアメリカはスーダンの石油を利用できなくなった。状況を改善しようとバラク・オバマ大統領(民主党)はスーダンのテロ支援国家解除をちらつかせて南スーダンを独立させた。アメリカが直接関与しやすくなるからである。

バシル政権を支えていた南部の石油利権がなくなるとバシル政権は軍などの不満を抑えきれなくなったようだ。石油利権を失ったバシル大統領がカタールやトルコに接近し始めたことも政変の原因になっている。サウジアラビアやUAEがバシル大統領の離反を嫌いサウジアラビアに近い軍人支援に切り替えた。(バシール政権崩壊から暫定政府発足に至るスーダンの政治プロセス――地域大国の思惑と内部政治主体間の権力関係――

バシル大統領に取って代わったのはアフメド・ビン・オウフ第一副大統領兼国防大臣らだった。集団指導による軍政に移行した。国民の間には「盗人が盗人の政権を引き継いだ」とあまり評判は良くなかったようである。

この後トランプ大統領(共和党)時代になって2020年末に27年間続いたテロ支援国家指定は解除された。

ところがスーダンの内政は一向に安定しない。2019年のクーデター直後には民主化要求のデモが起きた。当局の発表によるとこの時点で46名が死亡しているがその実態はよくわかっていない。

この時のニュースに暫定政権側の民兵組織・急速支援部隊(RSF)が出てくる。一般市民に銃口を向けて攻撃しているという話があったそうだ。この組織はダルフールで残虐行為をしていたジャンジャウィードという組織が前身になっていると言われている。

バシル大統領は国内のイスラム教徒の支持を得るために南部の非イスラム教地域にシャリア(イスラム法)を押し付けたと言われている。中には南部の住民を奴隷化したなどと書いている記事もある。この時にバシル大統領の手足となって働いたのがジャンジャウィードである。リーダーは政治的に立ち回りバシル大統領を守るためにハルツームなどにも展開していったようだ。

結局国際社会の介入でバシル氏は排除されたがならず者集団の排除はできなかった。プーチンはいなくなりワグネルが残ったということになる。

軍は民主化要求派も懐柔できなかった。このためデモを組織していた市民団体と軍事評議会(TMC)の間には3年の後に民政に復帰するという基本合意が結ばれた。

2021年10月に軍事クーデターが起こり民政府を代表していたハムドク首相が追放された。この時にクーデターを率いたのがアブドゥル・ファッターハ・ブルハーン将軍である、政府内の内紛のせいで軍事行動を起こしたと説明したという。ブルハーン将軍は軍民共同統治体制でトップを務めていた。

だが、このクーデターは1ヶ月余りで収束した。ハムドク首相は11月には軍と権力分担を行うという取り決めで復帰した。おそらくきっかけになったのはアメリカや世界銀行の支援停止だった。AU(アフリカ連合)もスーダンの参加資格を停止していた。だが民主化の試みは長くは続かなかった。結局ハムドク氏は2022年1月に自ら辞任している。

RSFの前身とされるジャンジャウィードはその後もダルフールで遊牧民を襲ったりしていた。ダルフールでは2022年4月にアラブ系と非アラブ系の衝突が起きたというニュースが確認できた。


ハルツームで何が起きているのかが当初はよくわかっていなかった。

BBCの速報で「今回クーデターを起こしたのはRSFのようだ」などと流していた。BBCは敵対勢力だと表現しているが、大統領官邸、国営テレビ、軍本部などを巡って銃撃戦を繰り広げている。食糧支援をおこなっている国連WFP職員3人も巻き込まれた模様である。報道の中にはジェット機が何かを空爆しているように見える映像もある。軍隊がRSFの基地を攻撃しているようである。

のちにBBCは情報を整理し、国軍とRSFが主導権争いをしているようだと書いている。国軍側はRSFを懐柔して国軍に組み入れたいのだがこれがうまくいっていないというのだ。国軍側はRSFを殲滅させるまでは戦闘は終わらないとしている。またRSFのダガロ将軍側も国軍を殲滅させると息巻いている。これを単純化するとプーチン亡き後に国軍とワグネルが仲間割れをしたと例えることができる。

このようにスーダン情勢は時間をかけて徐々に悪化している。

西側の関心は南スーダンの石油利権にしかない。スーダン情勢が不安定になるとヨーロッパに難民が押し寄せるのだからあまりこの地域に波風を立てなくなかった。バシル大統領に悪い評判があることを知りながら民主化勢力を支援することはなくダルフール地域のジェノサイド(民族虐殺)もなかなか認めようとはしなかった。

当面最も心配されるのは難民の発生であろう。チャドは内紛が波及するのを恐れて国境を封鎖した。サウディアラビアの航空会社サウディアとエジプトの航空会社エジプト航空はハルツームへのフライトを停止している。空港でサウディアのエアバスが炎上し他ことを受け手の措置である。

ここまでのまとめでも「とにかく面倒なことが起きている」ことは十分伝わると思うのだが、それでも中国やロシアの関係は記事の中に含めずに書いている。中国はスーダンのバシル大統領に軍事支援を行い南スーダンにも介入している。

さらにロシアのワグネルが現地の軍指導部と組んでロシアに金を輸出しているという話がある。見返りは軍事支援だったようだ。だがこのCNNの記事を読んでもその軍幹部が国軍なのかRSFなのかは書かれていないが次のような一節がある。

  • 準国軍部隊「迅速支援部隊(RSF)」の指導者モハメド・ハムダン・ダガロ将軍は、ロシアの支援で恩恵を受けている主要な人物で、ロシア政府から武器や軍事訓練を受けている。
  • CNNのスーダン情報筋は、スーダン軍のトップであるアブドゥル・ファッターハ・ブルハーン氏もロシアから支援を受けているとの見方を示す。

つまりウクライナの戦争で国際社会から切り離されたロシアが双方に軍事援助をし状況を混乱させている可能性もあるということになる。

このように国際社会の思惑が作用しスーダン情勢は徐々に複雑化している。

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