少し前に岸田総理が「花粉症はもはや社会問題」との認識を示し関係閣僚会議を開催することにしたというニュースがあった。花粉症は「もはや」ではなく「ずっと前から」社会問題なのだから「何を今更」という気がする。だが、総理大臣の発言ということで重要視され、実際に関係閣僚会議が設置されることになったようだ。
どうやらこれは総理大臣の言い間違いによって生まれたようだとテレビ朝日の官邸キャップがネットテレビでひそやかに解説している。「王様は裸だ」と言えない今の官邸とその報道姿勢がわかる。
自民党の山田太郎議員の「花粉症対策に取り組めば後世に名前が残るのでは?」という提案に対して総理大臣は次のように述べたとNHKは書いている。
そこで実際に花粉症対策のための連絡閣僚会議が設置されたというのがNHKニュースの内容である。
一方で、総理大臣の「リーダーシップアピール」に批判的なメディアは批判的に伝えている。
東京新聞は総理の考えについて思考を巡らせた上で「ポピュリズム」と断じる。統一地方選対策ということになっているが「総理が花粉症対策をしてくださるそうだ」として投票する有権者などいないだろう。批判としては少し無理がある。
とにかく増税に結びつければいいと考えているFLASHも次のように書く。ネットの声を上げておりこれも批判記事としては少し安易だ。
政府広報になっているNHKは真面目な調子で首相の強いリーダーシップを強調し、反対の論調を書けばそれなりに部数が稼げるマスコミもそれなりの根拠を作って反論する。だがどうも何かおかしい。どうしても「なぜ今これを?」と思えてしまう。「スギ利権」でもあるのだろうかと思って調べてみたがもちろんそんな記事は見つからない。
そこに新説が登場した。
単なる総理の言い間違いではないかというのだ。テレビ朝日の官邸キャップ千々岩氏の取材に基づいているのだが、地上波ではなくインタネットテレビのABEMAの枠内で伝えられた。
恐らく総理の答弁書には『関係省庁担当者連絡会議』と記載されていて、これを岸田総理が『関係閣僚会議と誤って読んでしまった』と私は見ています。
記者クラブ体制の中で政府広報や政府批判が自動化する中で「王様は裸です」と気がついた人がいたということになる。だが地上波ではおそらく枠がなく報道ができずにインターネットテレビでこっそりと報告した。NHKはこれを「総理のトップダウンでやることになった」と説明している。
カリスマ性に欠けるという自覚のある岸田総理はとにかくあらゆる機会を作ってリーダーアピールがしたいのだろう。山田太郎議員の「名前が残りますよ」につい力んでしまったのだろうと思う。
だが、やはりこれは周囲の人が誰か修正すべきだった。周りの人は気を遣ってトップダウンと言っているがどうやらあれは勘違いだったんですってよということになれば総理大臣の権威はガタ落ちである。
さらにこれが勘違いだったとすれば、関係閣僚たちは単に首相の勘違いにお付き合いしていることになる。仮に政府全体として取り組むのであればKPI(達成や進捗の指標)を決めた上で具体的な対策を実行すべきだろう。他にも「形式的な会議」はいくつもあるのではないかと感じる。大臣級会合のために無駄な資料を作らされる官僚たちも単なる無駄骨ということになる。時間とお金の無駄である。
さらに、高市発言のように「どうせ捏造に決まっている」が「捏造だったら私はやめます」というようにノリでエスカレートしてしまうこともある。その後であの発言がどれくらいの国会リソースを焼尽したのかを考えると首相の不規則発言に対するリスク管理もきちんとやっておくべきだろう。
突然閣僚会議が開かれると聞いて野村農水大臣は「知らぬ存ぜぬだ」と反応している。おそらく「寝耳に水だ」と言いたかったのだろう。誰か突っ込める記者はいなかったのかという気になる。だがマスコミ各社ともに仕事をするつもりはないようだ、大臣の発言をそのまま右から左に伝えている。マスコミはこのような細かいところからまず報道姿勢を正すべきなのではないかと思う。
今回は地上波や全国紙だけをみているとかえって状況が分かりにくくなるということがわかった。インターネットテレビは視聴者が少ない上に時間がふんだんに使える。つまりネットメディアの方が一つのトピックについて詳しく解説ができるわけだ。おそらく既存メディアしか見ない人と外国やネットの報道に接している人のリテラシーは今後大きく差が開いてゆくことになるだろう。深さが全く違うからである。