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【地方選前半を3分で斜め読み】 維新が躍進し立憲民主党は後退

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統一地方選挙の前半戦が終わった。結果的に維新が躍進し立憲民主党は後退した。文書問題で身動きができなかった高市早苗さんは責任を問われそうだが、追求した側の立憲民主党もトクはしなかった。徳島県で後藤田正純氏が初当選したところからも「そろそろ新しい顔を」をいう雰囲気が出始めているようだということがわかる。またこれといった争点がなかったことから道府議会選挙・知事選挙の投票率は低下したそうだ。

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本当に概略だけを知りたいという人は次の点だけを知っていればいいだろう。

  • 全体的に関心は高まらず
  • 自民党は勝ちも負けもせず
  • 維新は躍進
  • 公明・共産などの高齢支持者に支えられている政党は凋落傾向
  • 立憲民主党は組織づくりに失敗し退潮したが原因はよくわからない

維新の躍進

今回も主役は維新だった。大阪府議会では過半数を維持し、大阪市議会でも過半数を獲得する見込み。この結果「公明党との協力関係を見直す」という宣言も飛び出した。馬場さんの言葉は「リセット」だが詳細は不明。大阪都構想に代わる新しい提案が出るまではどこの党とも組まないと宣言している。

公明党は大阪市議会で「全員当選」を果たせなかった。4回連続だった。内紛のあった京都・共産党は府議会で3議席を失った。維新の議席は3倍になりここでも堅調だったようだ。つまり高齢者に支えられていると見られる組織型の政党は勢いを失いつつある。関西では特にこの動きが顕著だった。

参議院選挙の時にはこれが一時的なものなのかあるいは維新が政権を担える政党として認知され始めたのかが議論されていたのだが、今回の選挙を見る限り大阪とその近郊では地方自治体の運営を任せて良い政党として認知され始めているようだ。アンチも多い政党なので少し不思議な気はする。

新しく市長になった横山英幸氏は41歳、吉村府知事は47歳だ。維新は執行部の世代交代のイメージづくりにも成功している。

求められる「新顔」

今回のもう一つの特徴が「多選批判」だ。意外なことに現状をなんとなく変えたいという人は多いのである。

もともと奈良県は地元自治体首長と「べったり」の荒井氏ではもたないのではないかということになり、高市さんが強引に東京から候補を連れてきたことが問題視されていた。おそらくこれが「文書問題」を誘発し高市さんは今回の選挙で身動きが取れなかった。文書問題を仕掛けた人がいるならば「狙い通り」と言って良い。だが、漁夫の利をさらったのは維新の54歳の新人だった。

徳島県でも同じようなことが起きている。こちらは現職飯泉氏に多選批判があり「後藤田ブランド」を持つ比較的若手(53歳)である後藤田正純氏が初当選した。飯泉氏は参議院議員を辞職して臨んだ三木亨氏(55歳)にも及ばなかったようだ。「保守や改革系」で手頃な年齢層の人がいるとそちらに流れてしまうのだ。

荒井さんは78歳で飯泉さんは62歳だった。飯泉さんはまだ60歳代であり「高齢」とは思えないので多選が嫌われたということになるのだろう。

札幌市長はオリンピック推進の現職が当選

オリンピックが争点になっている札幌市ではオリンピック推進の市長が再選された。秋元克宏さんは67歳とそれほど若い人ではない。

同知事選挙でも立憲民主党は勝てなかった。資金面で不安があり良い公募者が集まらなかったというのが立憲民主党側の敗戦の弁である。組織作りができていないことがわかる。だが大阪での維新が組織に頼った選挙をやっていないところから考えると無党派層から離反され党を組織として支えてくれる支持基盤も見つかっていないということなのかもしれない。当選した鈴木直道さんは42歳だ。

札幌オリンピックの招致に関しては賛成がやや上回るものの市民の中で意見が分かれるという状態のようだ。つまりそれほど大きなドライバーになったとは考えにくい。高齢・多選やリベラルでなければ現状維持で行きたいという人が多いということなのかもしれない。

立憲民主党の凋落

小西・文書問題で悪目立ちした立憲民主党は今回道府議会レベルでは議席を減らしているという。そもそも改選前が200議席だったことから新しい組織づくりに完全に失敗したと言って良いだろう。北海道の例でもわかるように、無党派層のニーズを掴みきれておらず左派が得意としていた組織型(労働組合か市民運動)の選挙からも脱却できていない様子がわかる。立て直しはかなり難航しそうだ。

京都の共産党や大阪の公明党が衰退傾向にあることから、高齢化した組織に依存する政党が厳しいことはわかる。問題は立憲民主党の一部を支えてきた市民運動がどの程度若い「市民」を囲い込めているかである。実は「市民」と言っても高齢化が進んでいるのかもしれないのだが、その実態はあまり知られていない。YouTubeなどのSNSメディアではほとんど存在感がなく実態がよくわからないのである。

不倫問題で揺れた神奈川県知事選挙でも独自候補が立てられていなかった。つまり地方レベルでは「改革勢力」とは見做されなくなっており「ケチばかりつけている」というネガティブな面のみが印象に残っている可能性がある。対無党派に限って言えば小西さんの一件で損をしたと言って良い。

さらに国政レベルで「争点になる問題」がなかったことも影響したようだ。道府議会議員選挙や知事選の投票率は落ちているそうである。少子化問題が解決できていないのは今に始まった事ではない。コロナのような新しい問題もなくなり、岸田政権は「安全運転」でとにかく失敗さえしなければいいという政権運営に徹している。国政レベルでも「国民の反対が強い増税はどうせやらないだろう」と考えている人が多いのかもしれない。こうなると立憲民主党には役割がなくなってしまうのだろう。

総括すると

  • おそらく高齢化している旧来の組織依存から抜けきれていないこと
  • 無党派を瞬間的に惹きつける大きな争点(コロナなどの災害レベルの何か)がなかったこと
  • SNSで存在感がなく、新しい無党派の獲得に失敗していること

が長期低迷の原因になっていると言えそうだ。

とはいえ、維新が躍進したり新しい知事が誕生しているところから有権者は漠然と「リベラルは嫌だけど、なんとなく新しい顔が見たい」と考えているのではないかと思う。つまり有権者は国や地域を大きく変えてほしいとまでは思っていないが、なんとなく古い体制にも飽きてきており新しい何かを期待しているという空気になっているものと思われる。

カップラーメンで言うと「カップヌードル」でいいのだがたまには新しい味を食べてみたい程度の変革欲求があると言うことなのではないかと思う。

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