ざっくり解説 時々深掘り

異例の第八師団長の視察と台湾海峡の緊張

カテゴリー:

陸上自衛隊のヘリコプターが墜落したあと「台湾海峡の問題」と結びつける憶測が多く出たという。防衛省は早々に事故と発表したがその後の情報提供がほとんどないことが背景にある。

着任早々の師団長がわざわざ担当警備区域を超えて視察しなければならない状況とはなんだったのか?と疑念を抱いている記事を見つけた。第八師団は「南九州が担当」で南西諸島は有事展開地域となっている。一体何が起きていたのか。「現代」の記事に触れつつ、台湾海峡の緊張も時系列でまとめてみた。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






現在、ようやく1名の方が見つかったのではないかというニュースもあったがその1名も天候不良のため再び見失ってしまったようだ。

まずは先日の事実誤認を訂正しておきたい。そもそも第八師団は宮古島周辺を管轄していないそうである。

あくまでも「この記事によれば」なのだが、沖縄県の管轄は第15師団なのだそうだ。浜田防衛大臣は「なぜ第八師団長」がこの地域の地形確認をおこなっていたのかという説明をいまだにしていない。このため当初の記事を読み「第八師団長が視察しているということはこの地区は第八師団の担当地域なのだろう」と思い込んでいた。マスコミも「管轄地域ではない」と書いてしまうと「ではなぜ?」を聞かなければならなくなる。記者クラブに加盟している社の記者たちはこれが書けないのだろう。結果的に「週刊現代」で知ることになった。

この現代の記事に書かれていることにどれくらいの確度があるのかはわからない。さらにいえばこの記事も余計な憶測をうまないように抑制的な書き方にとどまっている。このような形で知ってしまうと、つい「何か不都合なことを隠しているのでは」などと感じてしまう。

いずれにせよ、台湾海峡に緊張の度合いが高まっており、この地域が「準有事」という状態にあったのは確かなようである。下地島にはアメリカのF16戦闘機がエンジントラブルで緊急着陸している。NHKによればオサン空軍基地所属だという。オサン空軍基地はソウル近郊にある。つまり周囲から動員できるものをかき集めて警戒していることになる。

では、その台湾の緊張とはどのようなものだったのか。経緯を簡単にまとめてみたい。

中国政府が実弾演習を予告。ペロシ下院議長が台湾を訪問した際には日本のEEZにも弾道ミサイルが着弾していたため「何かあれば対応しなければならない」という状態にあったことは間違いがない。

蔡英文総統がアメリカ大陸を訪問しアメリカ下院議長などと面会。中国はこれに反発。しかし制裁を強めると、台湾の独立派を煽ることになってしまうため、現在の制裁はやや抑制的だ。どちらかといえば国民党の馬英九氏を取り込み「台湾の自主的な統合」を促したいものと思われる。馬英九氏は「このまま中国と対立を続けても戦争になるだけ」として世論の説得を試みている。「共通の政治的基盤」を提案しており、香港の一国二制度のようなものになるものと思われる。香港では「50年は制度が維持される」とされていたが、その後約束は骨抜きになった。大陸中国に台湾併合の野心があることは間違いないのだが、そのシナリオは「ロシアのように力づくで併合を狙う」という単純なものではない。

では中国が軍事的に何もしていないのか?ということになる。もちろんそんなことはない。

中国共産党政権は台湾を実効支配できておらず「領土を守る」と言いつつも台湾を取り囲む形で軍事的なプレゼンスを高めることしかできない。直接は手出しができないが何かしなければならないという状態にあり返って周辺地域の緊張が高まるという皮肉な構図になっている。台湾政府は台湾周辺に中国の軍艦8隻と軍用機42機を確認した。軍用機29機は防空識別圏に侵入したという。

軍事演習は台湾包囲のリハーサルだと説明。西側のナラティブだと「中国は虎視眈々と軍事侵攻を狙っている」ことになり、中国側のナラティブだと「アメリカなどは台湾の引き剥がしを画策しているのでいざという時には阻止しなければならない」となる。

いずれにせよ周囲は緊張しておりなんらかの不幸な衝突つがあったとしても不思議ではない。

また普段は展開しない不慣れな地域にヘリコプターを差し向けたことで不具合が起きたという可能性も考えられる。もともとヘリコプターの部品調達体制には問題があったようで2018年の事故の時には攻撃用ヘリコプターの整備体制を懸念する声が出ていた。この時も定期整備後の試験飛行で起きた不幸だったなどと解説されている。佐賀新聞は「米国メーカー側と、整備・運用する自衛隊側のいずれにも原因を絞り込まない形」で調査を終えたと書いている。つまりどちらかの責任問題にならないようにうやむやにしているのだ。

今回墜落したヘリコプターもアメリカのヘリコプターのライセンスを日本で受けて製造しているため同じような問題が起きかねない。調達側の制服組の説明問題にも発展しかねないため、はっきりとした情報が出てくる可能性は残念ながら低いのではないかと思う。

だがそれは現場で活動する自衛隊の隊員の安全を犠牲にするということを意味している。これをそのまま放置するべきなのか問題視すべきなのか。意見は一人ひとり異なるのかもしれない。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です