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きっかけはヤギの屠殺 イスラエルでユダヤ教徒とイスラム教徒の衝突がエスカレート

イスラム教の断食月であるラマダンが始まった。3月22日に始まり4月21日に終わる。ユダヤ教では4月5日に過越際が始まり4月13日に終了する。つまり両方にとって大切な時期だ。皮肉なことに中東ではこの時期にイスラエルとアラブが衝突することがある。今回もかなり危険な状態になっている。きっかけはユダヤ教徒が「ヤギの屠殺」を試みたことだった。

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イスラエル警察がアルアクサ・モスクに突入した。アルアクサ・モスクのある地区はイスラム教で3番目の聖地とされるため、ハマスの指導者は「パレスチナ人が腕を組んでじっとしていることはない」と報復を誓っていた。

突入の一部のユダヤ人がモスクでヤギの屠殺を行おうとしたことだった。古代に行われていた過越祭の儀式だが現在では実践されていなかったという。このところイスラエルでも過激な復古運動があり「聖地を取り戻せ」という主張だったのだろう。

ユダヤ人はかつてエジプトで奴隷として虐げられていた。彼らはパレスチナに逃れようとするのだがファラオは許さない。そこで神は家畜でも人間でも全ての長子を殺すことにした。ただ門に羊の血がついている家は例外とすると示す。元々は遊牧民の魔除けの習慣だったようだが、この故事により羊(またはヤギ)の屠殺は神聖な儀式とされるようになったようだ。

ただ、この地区は今はイスラム教徒のものになっている。そこで「暴挙」を阻止しようとイスラム教徒が立て篭もる。さらに、それを排除するためという名目でイスラエル側から警察が動員された。350人以上の逮捕者が出るという大騒ぎになり、当然サウジアラビアなどのアラブ圏の国がイスラエルを非難し始めた。

その後、レバノンからイスラエルに向けて数十発のロケット弾が発射された。ロケット弾は34発前後で6発がイスラエル国内のガラリア地区に着弾した。2006年に戦争が起きて以来最大の衝突だ。この報復としてイスラエルはレバノン南部にあるハマスの拠点を攻撃した。続いてガザ地区にも攻撃を加えたと明らかにした。レバノンに展開している国連平和維持軍UNIFILは自制とエスカレーションの回避を求めている。

だがこれだけでは終わらなかった。

ヨルダン川西岸地区で銃撃事件がありイスラエル人姉妹2名が死亡し母親も重傷を負った。
テルアビブで車が通行人をはねて男性1名が死亡した。イスラエル警察はテロとして捜査している。車に乗っていたのはパレスチナ人だったという。緊張は今も続いている。

イスラエルのネタニヤフ首相は訴訟をいくつか抱えており一度は政権を失った。右派と協力して政権を再奪還したのだが、入植地のパレスチナ人との衝突が増えていた。イスラエルには憲法がなく司法がかろうじて民主主義を保っている状態なのだが、ネタニヤフ首相は「司法改革」を断行しようとしており、ホワイトハウスが懸念を表明していた。司法改革はいったんペンディングになっているが、パレスチナ人に対する強硬姿勢は継続していることがわかる。

各国はアメリカ合衆国の調整能力に疑問を感じ始めており、中には中国に接近する国も出てきた。

古代エジプトが文明化される中で周辺の遊牧民が経済的に隷属させられていったというところから話が始まっている。彼らはローマに支配されて一旦故地を離れる。その土地はアラブ人によって占拠されるのだがオスマンの支配を経てヨーロッパのものになり、かつてのユダヤ人と呼ばれる人たちが帰ってきた。そして今度はこの地域にいたアラブ人を虐げようとしているというのが全体のあらましだ。

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