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宮古島ヘリコプター事故では依然10名が行方不明だが、防衛省発の情報は極めて限られている。

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宮古島近海で10人が乗ったヘリコプターが墜落したものと見られる。事故からしばらく経ったのだがあまり報道されていない。防衛省からの情報が限られており「あまり伝えることがない」と言ったところのようだ。予断を許さない状況だが「今どうなっているのか」だけをまとめた。2018年にヘリコプターが墜落した時には「陸自の攻撃ヘリ部隊は既に瓦解している」というような専門家の指摘もあった。

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「南西諸島シフト」が完成した矢先の事故

アメリカの対中国政策に合わせる形で南西諸島への防衛シフトが行われている。石垣島にはミサイル部隊などが所属する駐屯地が作られ、浜田防衛大臣が出席して式典が行われた。司令官は井上雄一朗1等陸佐だ。

石垣島の駐屯地は与那国島や宮古島への部隊配置に続くものだ。石垣島の駐屯で部隊配備計画は完了したことになるそうだ。

国のシナリオでは中国が台湾を軍事的にねじ伏せようとしていることになっている。岸田総理もウクライナは明日のアジアかもしれないとの認識を示し危機感を煽っている。アメリカの気持ちをつなぎとめるため対米支出を増やしたいのだろう。そのためにも岸田総理は防衛増税を成功させたい。

現在、アメリカから敵の攻撃に対して射程外から攻撃できるスタンドオフミサイルを購入することが決まっている。ミサイルの配置場所は決まっていないのだが、石垣島では「石垣島もその拠点になるのではないか」と警戒されているようだ。政府は丁寧に説明すると言っているが、政府の丁寧に説明するは大抵の場合結論を決めておいてその結論を繰り返すだけに終わることが多い。

少なくとも政治のレベルで最も優先されているのは国民の安全ではなくアメリカへの配慮である。

第八師団のトップが搭乗

第八師団は九州南部が管轄になっており、いざとなれば南西諸島にも展開するという部隊だったようだ。「展開」という表現からこれまでの日本の防衛は南西諸島を重要視していなかったことがわかる。米軍がいれば大丈夫だという気持ちが強かったのだろう。アメリカ合衆国は軍の効率的な運用を模索している。つまりアメリカはこの地域から一部撤退をする公算が強く、今後日本の責任分担は重くなることが予想される。現場の負担は重くなるだろう。

3月30日に着任したばかりの第8師団のトップである坂本雄一師団長は管轄地の地形を自ら確認するためにヘリコプター(UH60JA多用途ヘリコプター)で宮古島の基地を離陸しおよそ10分後にレーダーから航跡が消えたそうだ。離陸は15時46分で帰還予定は17時5分だった。風速や視界には問題がなかったとされている。

「南西諸島シフト」に備えての万全の人事だったのだろう。もともと衛省統合幕僚監部や陸上自衛隊で政策立案の中枢ポストを歴任しており、「将」というポスト名からもわかる通り制服組でのランクは最高位である。

トップを乗せて飛んでいるのだから、その時の整備体制は万全だったはずだ。

UH60は安全な機体のはずなのだが……

ネットでは早速UH60の事故についてまとめている記事が出ている。JAという枝番からもわかるようにUH60ブラックホークを自衛隊仕様にした機体のようだ。ロッキード・マーティン傘下の会社が製造し三菱重工業がライセンス契約を基に国産化している。過去に何度か墜落事故を起こしているそうだが、他の機体に比べて特に不具合が多いというものではないようである。浜田防衛大臣は「様々な訓練に投入されていた」と答弁している。時事通信も「信頼の厚い機体だった」との驚きの声を伝えている。

安全だったはずの機体がなぜ?ということになり様々な憶測が飛び交っている。

蔡英文総統がアメリカを訪問中であり人民解放軍は反発を強めている。このため中国の関与を疑うような指摘がネットでは出ているようだが、防衛省はこれを否定している。正確な広報の表現は「現時点でそのような情報は入ってきていない」というものである。

政府は航空機事故として調査をしている。ただ、陸上自衛隊の最重要人物の一人を乗せた「簡単な飛行」だったはずである。天候も安定していたようだ。何かあったのではないかと不安な気持ちにはなる。

陸上自衛隊・ヘリで検索すると運用体制について懸念する記事がいくつか見つかる。日付を見ると2018年のものが多い。

実は2018年にAH-64Dが墜落した時「陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している」という指摘があった。運用をするのは現場だが部品や機体を調達するのはまた別の人たちの仕事である。さらに外交がらみの思惑や政治との折衝も別の人たちがやっている。いわゆる「制服と背広」の対立である。

制服組の人たちは陸上自衛隊のヘリコプター整備は既に危険な状態にあり現在でもこの状態は改善されていないと考えているのだろう。ただし自衛隊は憲法の枠外の存在であり制服組の声が直接国民に届くことはほとんどない。

今回は「攻撃用」ではなく「多目的ヘリ」の事故だった。つまり部品調達の問題があったのが「攻撃用」だけだったのか、あるいは他の装備品にも広がっていたのかは重要な問題だ。そしてそれをきちんと知るためには現場の人たちの証言が欠かせない。だが、自衛隊は憲法の枠外にあり、左右対立が基本になっている。現在の与野党対立の枠組みの中で左派系の野党がこの問題について自衛隊の現役自衛官に調査をするのは難しいのではないかと思う。

国民は防衛増税を迫られているが、この状況では増税が現場の安全安心のために使われるかどうかはわからない。冒頭で指摘した通り「外交的な思惑」のために政治利用されてしまう可能性もあるうえに国内では右派・左派の対立に巻き込まれがちである。

防衛省からの情報は限られているが、おそらく広報は「背広の人たち」が担うのだろう。当然彼らの不守備は発表されないはずである。一方で制服組は最高ランクの指揮官を失った。表向きの情報は限られているのだが、おそらく背景ではいろいろな「議論」が出ているのではないかと想像する。表立った発言が許されない分だけ鬱憤が溜まっていたとしても不思議ではない。

岸田総理の「ウクライナは明日のアジア」という主張を受け入れるとするならば、この地域のヘリコプターや航空機の安全確保は我が国の防衛の最重要課題の一つのはずである。そのためにはこの地域の安全を担う人たちには安心して働いてもらう必要がある。つまり、日本国民はきちんと何が起きているのかを教えてもらう必要があるということになるだろう。

メンツにこだわる防衛省や現在の政府がどこまで包み隠さず真実を明らかにするのかと考えた時、その見通しはあまり明るくなさそうだ。

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