旧NHK党が「新しい段階」に突入したようだ。関係者によると「取り付け騒ぎ」が起きており立花孝志さんと新党首の大津綾香さんが決裂したなどと伝えられている。最も注目されているのが11億円の借財の行方だ。選挙ウォッチャーのチダイさんは立花さんが「返済できない」旨を宣言したと指摘している。こうなると現在代表をしている大津綾香さんがどの程度法的責任を負うことになるのか、さらにその責任を果たせるのかに注目が集まる。
目次
- 錯綜する当事者の意見
- TwitterやYouTubeを舞台に当事者たちの意見が錯綜
- 政党が投資スキームのように理解されている
- 選挙ウォッチャーのチダイ氏は「持続可能でないことはわかっていた」と主張
- 既存政党も実は似たようなことをやっているのだが
- 民主党と50億円
- 選挙前に2.2兆円の予備費支出を決めた自民党
錯綜する当事者の意見
まず、よろずーの激震!立花孝志氏が政治家女子48党事務局長辞任 党の運営からも退くという記事を見つけた。読んでみたのだがよく意味がわからない。いろいろ調べたところ借金を「旧党」に押しつけたままで消えてしまうという話のように思えた。押しつけられるのは大津さんということになる。
立花孝志氏は3月8日にガーシー議員が懲罰に応じなかった責任を取るとして辞任していた。当時は「事務局長として資金管理をする」と約束していた。
結局この時に「お金の面倒は自分が見るから」として大津さんを説得しその後に問題が拡大した時点でお金の責任も取らないことにしたと考えるのが自然である。
ところがそのあとで大津さんのTwitterを見ると「代表を立花さんに返します」となっている。大津さんは「通帳なんか見たことがない」と当惑気味だ。結局、大津さんはこの後は弁護士を通して話をすると言っておりデイリーが「決裂」と言う記事を書いた。表向きはこれだけのやりとりだ。まとめると次のようになる。
- 立花孝志氏が「旧NHK党」の活動からいっさい身をひき新しい政治団体NHK党を作る。
- すでに解任されていた黒川敦彦氏の政治団体「つばさの党」が旧NHK党主催と受け止められかねない政治資金パーティーを開催したが詐欺行為だとして支援者が反発した。結果として「取り付け騒ぎ」が起きていた。
- 立花孝志氏はすでに借金が11億円あるとしているが、現在の残高は2400万円しかないと明かしている。つまり「借金は返済できない」というわけである。
よろずーはいわゆるジャーナリズムではないので立花氏の言い分だけが書かれている。
- 支援者は大津さんに納得しておらず大津さんにはお金を貸してくれないだろう。自分は大津さんに代表権を戻すように言ったが大津さんは応じてくれなかった。
- 党首は新しく国会議員になった斉藤さんがやるのがいいのではないか。
- 私は責任を取ってやめる。
「これまで集めた政党助成金や支援者からの借金を何に使ったのか」を全く説明しておらずよろずーも全くこれについては質問をしていない。普通に考えれば「11億円使ってしまったがもう私は関係ないからあとは残った人でやってくれ」という話のように思える。
このあとで大津さんのTwitterを見ると大津さんは立花さんに「紙を出します」と言っている。つまり代表権を返すというのだ。「金曜日か土曜日でもいいか」と聞いているのだが、立花さんは「いつ取り付け騒ぎが起きるかわからない」と言っている。ただしデイリーによるとこれは「立花氏とみられるアカウント」に過ぎず、チダイ氏のNOTE記事によって伝えられる立花氏の主張とも異なっている。大津さんに取材をしたメディアも今の所はなさそうだ。
この件をQuoraで書いたところ選挙ウォッチャーのチダイ氏のNOTEを紹介してくれた人がいた。このNOTE記事によるとチダイ氏のNOTE記事は政党は「破綻した」と言っている。またチダイ氏によると立花氏は「法的アクションは大津さんに……」と主張しているそうだ。大津さんには「代表権を返せ」といいつつ引き受ける気はないということになるが、立花さんの真意はわからない。
本来「取り付け騒ぎ」というのは一斉に預金を引き出すことを意味している。ところが今回のケースは「投資を返してくれ」ということだから言葉の使い方が無茶苦茶だ。さらに大津さんは「預金通帳なんか見たこともない」と言っておりお金について全く関心がなかったこともわかる。
さらに誰も債務者に取材をしていない。つまり「申し出ればすぐに返してもらえる」のか「債務者が政党なのか個人なのか」などわからないことが多い。チダイ氏は法的アクションを起こしてもおそらく債権者はお金を取り戻すことはできないだろうと言っているがこの根拠もよくわからない。
政党が投資スキームのように理解されている
色々とわからないことが多い今回の「取り付け騒ぎ」だがわかったこともある。政党が政策実現の装置ではなく、一種の投資スキームのように理解されているという点である。
おそらく政党助成金制度を作った人は予期していないのだろうと思うのだが「既存政党は投票してもらえただけで金儲けができる」と理解した上で「だったらその制度に乗らないと損だ」と訴えて5%という高い利子を約束していたと言うことになるだろう。
過去のYouTubeでは供託金で没収されても政党助成金で儲かるから「できるだけ多くの候補者を立てた方がトクなシステムである」と説明していたそうだ。選挙ドットコムに記事が残っていた。政党助成金という国の制度を利用して合法的に儲けましょうという制度になっている。
だが、まだ破綻はしていないため非合法な投資スキームだったとまでは言えない。チダイさんは「政党助成金で借金を返すことはできない」と指摘している。つまり持続可能なスキームではなかった可能性が高い。そもそも債権者が訴えていないので「事件」にはならないのだ。
既存政党も実は似たようなことをやっているのだが
ではこうした問題が起きるのはなぜなのか。二つの理由が挙げられる。
第一に政党助成金は漠然としたGoing Concernの前提に基づいて作られた制度だ。つまり政党が政党として存続し続けることが前提になっておりそれが善意に運用されるであろうという性善説的な見込みがある。ところが政党の継続性を管理する仕組みはない。企業の場合出資者が「株主」として監査する仕組みがあるが、政党にはそれがないのである。議会を構成する議員たちの都合によって作られており、細かい点まで練られていないのだろう。
例えば、民主党が蓄積した政党助成金などの50億円の分配をめぐって「ゴタゴタいうようなら(玉木氏は内ゲバと表現)国庫返納するぞ」と玉木雄一郎氏が牽制するというようなことも起きている。本来なら政治資金規制法などできちんと管理されているはずなのだが、実は「政党がいくら持っているのかが当事者しかわからない」と言うようなことは実際に起きている
さらに与党である自民党公明党は国会に対して説明責任が発生しない「予備費」をつかって選挙直前に経済対策をやっている。統一地方選挙を目前位2.2兆円の予備費を支出しそのうちの1.2兆円は地方自治体に分配される。これほどわかりやすい選挙対策はないのだがあくまでも合法的に行われており「詐欺」ではない。ただ、現在の予算は1/3が国債を原資にしておりこの選挙対策が持続可能だと胸を張って言える人は誰もいないだろう。
つまり、既存政党も同じようなことを合法的にやっているのだから、新興政党も「創意工夫」で直接分配を目指して何が悪いと開き直られてしまうと説得のしようがない。
この件について最も特異だと感じたのは、既存のマスコミが全く気がついていないと言う点と支持者を含めた有権者たちが誰も怒っていないと言う点である。TwitterやNOTEを通じて何が起こっているのかはわかっているのだが、大手マスコミでこの話題を伝える媒体はまだ現れていない。ニュースソースを記者クラブに依存している大手メディアの情報収集能力が落ちていることがわかる。
支持者たちも「何か面白い騒ぎが起きればいい」程度に感じているのかもしれない。お金を返せと言う債権者はいるかもしれないのだが、そもそもイデオロギーベースの政党ではないために「期待していた政策が実現できなかった」と嘆く人はいないようだ。
その意味では旧NHK党は「利権集団」である自民党をさらに「純化」させた存在と言えるのかもしれない。