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全く注目されなかった城内実議員の「ウクライナが正しいと考えるのはむしろ少数派」発言の意味

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少し前なのだが、ポストセブンが興味深い記事を書いているのを見つけた。城内実議員がオフレコで「同性婚はウクライナが正しいという人と同じで少数派」と発言したというのである。最初は意味がわからなかった。だが、考えているうちに「神道系保守層の意見を代弁しているのかもしれない」と感じた。彼らとってみれば「アメリカへの協力」というのは単なる便宜上のものに過ぎないのだろう。つまり本心ではウクライナ支援も納得していないということである。

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城内実議員は東京大学教養学部を卒業し外務省に入省した。現在57才である。最初は無所属で出馬し初当選しているがその後とても選挙に苦労している。まず、郵政民営化法案に清和会所属議員として唯一反対した。結果的に刺客として片山さつき議員を送り込まれて敗北し離党している。

ただしその後の選挙の「成績」を見ると得票率はそれほど悪くない。地元企業などから強力に支援されているのかもしれない。

その後、小選挙区で復活すると自民党に復党した。清和会には復帰しなかったが安倍総裁誕生に貢献し外務副大臣などの要職を経験している。その後は「保守」として行動することが増えたようである。

郵政民営化反対で風を読み間違えてからは一貫して保守として行動していることからLGBT問題の解決に消極的なことは理解できる。かなり「保守の人たちの偏見」を代弁している発言が多くその姿勢は一貫している。

例えばこども家庭庁の設置に関しても「子供政策に第三者機関は必要ない」としている。保守には「ジンケン」という名前が付くものは全てリベラル系活動家の飯の種に過ぎないと言う偏見を持つ人がいる。子供に対する目線はなく背後にいる「運動屋」を軽蔑・警戒してるのだ。

一般国民はLGBT問題・女性の活躍・子育てなどについて考える時「どうすれば当事者たちが生きやすくなるだろうか」と考える。社会のメンバーの幸せがゆくゆくは自分の幸せにもつながると考えるからである。

全て問題を「利権」として捉える彼らは「人が他人のために行動することなどあり得ない」と決めつけ「きっと裏に壮大な利権があるに違いない」と理解している。

ポストセブンの発言でも「LGBT運動というのは仕事が欲しくて目立ちたい人の活動である」というような発言を繰り返している。

ただ、こうなるとウクライナの問題がよくわからない。保守は親米であり、従ってウクライナ問題に対してもウクライナに親和的なのではないかと思える。城内さんも表向きはウクライナを支援する発言を続けている。

ウクライナ侵攻が始まった当時には「ウクライナ侵攻は暴挙である」という政府見解をTweetしている。また、なぜか神社本庁の人たちを連れてコルンスキー・ウクライナ大使を訪問している。義援金を渡したとの活動内容が報告されていた。

この発言が保守の言論を引き継いでいるとすると、保守の一部には本音では「ウクライナのような厄介ごとに日本が巻き込まれるのはごめんだ」という空気があるのかもしれない。ただし、アメリカは強い国なので安全保障上は話を合わせておいたほうが得という認識があるのだろう。

少数派が何やら騒いでいるが、お付き合いもあるから支援しておきますか

と考えていることになる。LGBT運動も子供の支援をする人もウクライナもざっくりと「少数でことを荒立てる人」に過ぎないと見ているということだ。

日本は台湾有事懸念を抱えており中国と対抗するためには表向きはアメリカなどと価値観を合わせておく必要がある。だが、ウクライナのロシアへの抵抗を「少数者の異議申し立てに過ぎない」として嫌悪する保守が意外と多いのもまた確かである。

つまりこの発言は「失言」でなはなく、普段保守の人たちがうちうちで語っている本音がわかる貴重なものだったと言えそうだ。今回の発言はオフレコである。つまり報道を念頭にしたものではないので城内さんのアピールではない。

ここから考えると彼らは表向きは欧米の価値観に合わせつつ裏では「日本の事情もあるからなあ」などと言いつつ議論を遅らせようとしているのだろうということになりそうだ。問題はこれが社会で活躍を望む日本人にとって大きな障害になっていると言う点である。

「お花畑正義感の人」発言にはある程度の反感が集まっており、選挙区の性的マイノリティ当事者・支援者の団体から質問状を出したそうだ。神道政治連盟の会合では「(同性愛は)好天的な精神の障害、または依存症」という冊子が配布されていたと言うことも問題視されている。背景に日本の宗教保守の根強い同性愛嫌悪があることがわかる。

一般国民の意識とは必ずしも一致せず、国際社会に出しても恥ずかしいような意見がまかり通っているのは問題だとは感じる。

だが城内実氏が選挙のために支持基盤を必要としているというのもまた確かなことである。つまり、今の政治を実際に支えているのが国際常識からはズレた人たちだけという厳しい現実があるのかもしれない。静岡7区は浜松市と湖西市からなる選挙区であるが、おそらく他にもこう言う地域は多いのかもしれない。

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