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習近平中国の漁夫の利を許しかねない、岸田総理の「必勝しゃもじ」外交

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アメリカがシリアを報復爆撃した。アメリカは紛争当事者になり世界和平の主導役としての地位を失いつつある。一方で一連の問題から距離を置いていた中国の存在感が増している。厄介なことについにヨーロッパの中にも同調する国が出てきた。中国の躍進は日本にとって安全保障上の影響が大きい。岸田政権に打ち手が残っているのかが気になる。ウクライナにしゃもじを持って行って喜んでいる場合ではない。このままでは習近平国家主席が「和平のリーダー」になりかねないという状態になっている。

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アメリカがシリアを空爆したというニュースがあった。シリアでアメリカ人1名が殺されたことでバイデン大統領が報復を命じたようだ。親イラン派の拠点が攻撃された。報復の是非はこの際論じない。だが、報復はエスカレーションしやすい。アメリカは国内でもさまざまな問題で分断を伴う批判合戦を展開している。おそらくアメリカが現実的な和平路線に転換することはー少なくともバイデン政権の期間にはー起こらないだろう。

中国はこの隙を利用しサウジアラビアとイランを結びつけた。イスラエル問題でもアメリカは準当事者になっている。サウジアラビアのイランに対する視線はかなり複雑なものだがそれでも「アメリカが当てにならないのならば」中国に頼りたいというのが本音のようだ。イランよりイスラエルの方が脅威としては大きいのである。

「所詮中東問題」と考える人もいるかもしれない。つまり世界情勢には影響がないというわけである。だが日本中がWBC優勝の甘美な思い出に浸っている中で状況が変わり始めている。

スペインの首相が中国を訪問する。それに先立って「調停者としての中国の声に耳を傾けては?」と言い始めた。おそらく本音では中国との経済交流を再開させたいのだろう。だが、そのためにはウクライナ問題を「片付ける」必要がある。習近平国家主席は実際にプーチン大統領とも話をしている。このためにこのような発言になったものと思われる。つまり習近平国家主席を和平の立役者として祭り上げた方が国内政治上は「トク」なのだ。

中国には世界的に存在感がある。われわれ全員でこの戦争に終止符を打ち、ウクライナが領土の保全を取り戻せるかどうかを巡り、明らかに中国の声に耳を傾けなければならない

実はフランスのマクロン大統領も訪中を検討している。マクロン大統領は国内の経済停滞を背景にしたデモに直面している。年金改革への反対者よりも同調者の方が問題だ。つまり経済停滞が続けば続くほど国内の混乱が長引くことが確実なのである。つまりスペインよりも問題は深刻といえるかもしれない。つまりマクロン大統領にも習近平国家主席を持ち上げる動機がある。

ただフランスだけが抜け駆けしたとは思われたくない。そこでEU委員長を同行させるというプランを思いついたようだ。フォンデアライエン氏が同行する。つまりアメリカ不在のままで和平提案が進む可能性がある。こうなると「ドイツはどうするのだろう?」ということが気になる。

EU/NATOと言ってもさまざまな国がある。東欧の国はロシアの脅威を感じておりハンガリーを除くとウクライナを支援したい。だがフランスもスペインもロシアとは遠く離れている。このため「ウクライナ問題」を片付けたいと考えるようになっているようだ。

誰かが妥協しなければ問題は解決しない。だがおそらく犠牲者は出るだろう。最終的には「トロッコ問題」になる。意思決定としては極めて難しい局面だ。だが、アメリカは国内外でさまざまな紛争やいざこざに巻き込まれており調停者としての役割が期待できない。するとどうしても紛争から距離を置いている中国が「漁夫の利を得る」という構造ができてしまう。

習近平国家主席こそが和平の立役者だという世界は日本にどのような影響を与えるだろうか。想像してみてほしい。

日本人は「中国の習近平国家主席は台湾有事を画策している」というシナリオに没頭して安心したいという気持ちが強いのだろう。こうすることで「習近平という悪をアメリカが抑えてくれる」という馴染みのシナリオに耽溺できるからである。このシナリオが足元から崩れてしまうのかもしれない。

だが、現実を直視しない日本政府の対応は結果的に中国に漁夫の利を与えている。つまり、結果的に台湾海峡問題を複雑にし日本の立場を不利なものにする。

「みんなが行っているから岸田首相もゆくべきだ」という大局観なき動機で実行された岸田総理のウクライナ「電撃」訪問だが、最終的に「しゃもじ問題」に矮小化されてしまったようだ。

おそらく岸田総理はこの問題をG7の事前キャンペーン程度にしかとらえておらず、その動機もおそらく地元アピールなのだろう。非常に言いにくいことではあるのだが、そろそろ国益上はふわさしくない総理大臣になっているのではないかと感じた。

しかし野党からも対極的な批判は出てこない。

岸田政権にどのような外交的シナリオがあるのかを誰か聞いてくれないだろうかと思う。そろそろ与野党を超えて議論を始めた方がいいのではないかと思う。

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