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ホリエモンこと堀江貴文氏が私設秘書として国会に戻ってくるらしい

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東スポが「堀江貴文氏が秘書として国会に戻ってくるらしい」と書いている。さっそく田中角栄元首相は5年間登院しなかったのに除名されなかったなどと主張し、多くのいいねを集めたそうだ。「バカの革命」が始まったと思った。堀江さんがバカだと言っているわけではない。

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この文章で使う「バカ」とは政治システムが理解できない人たちの便宜的な記号だ。

ガーシー氏除名に抗議するデモで旧N国は「登院しなければならないという規則は法律に小さく書いてあるだけでだった」と主張した。法律の隅っこに書いてあるだけなので「俺たちにはわからない」というのである。つまり「自分達に理解できない法律に支配されるのはおかしい」という主張をしたわけである。このようにシステムを理解できない人のことを今回は便宜的に「バカ」と言っている。正確には政治にアクセスできない人たちと言って良いだろう。

日本において現在の「バカ」たちは政治に参加しない。自分達など政治に参加する資格はないと考えているからである。国際的に見てもシステムの枠外にいる人たちが単独で革命を起こすのは難しい。

共産主義は「資本主義なんか訳がわからない」と考える人たちの「バカの革命」だった。知識層によって基礎的な理論構築がなされたためなんか科学的だと捉えられ疫病のようにシステムの中に浸透してゆくことになる。資本主義は彼らを排除できず「自分達で失敗して潰れてくれる」のを待つしかなかった。

さらに共産主義は資本主義システムが強固なヨーロッパでは開花せず、後進地帯だったロシアで開花した。つまり「バカの革命」が成就するためにはある程度の知識化と脆弱性を持ったシステムが必要だ。

おそらく、政治家女子48党と呼ばれている立花孝志氏の政党は既成政治の破壊運動である。幸いなことに彼らはまだそのことに気がついておらず支持者たちもそれに気がついていないようだ。YouTubeの企画ユニットのように行動しておりこれは幸いなことである。

ただし革命の素地は政治の視界の外で徐々に整いつつある。

Quoraで「大津綾香さんの「若い世代はムカついてきた」で一気にフォロワーが4000人増えたそうです。若いそこのあなたは今の政治にムカついていますか?」と聞いた。

「政治は高齢者に支配されているのだから自分達が参加しても仕方がない」という回答がついた。ただこれは長い方の回答だった。そもそも文章を構成できない人が増えている。つまり自分なりの考えがまとめられないという人が多いのだ。

その中でも、かろうじて「シルバーデモクラシー」という言葉を知り、若者と高齢者が分断されているのだから若者が政治参加しても結果が得られないと納得している人が多い。例えば成田悠輔氏の「高齢者自決」発言が炎上しつつ支持されるのはそのためなのだろう。よく政治の分断などと言われる。だが高齢者が政治に納得しているのかと改めて問うてみればいい。おそらく中高年の中にも「自分達が政治参加しても意味はない」と考えている人は意外と多いはずである。

さらに堀江氏についても聞いてみた。回答はどれも「期待しない」となっている。だが実はこの2つの質問は政治ネタにしては閲覧数が高かった。黙って読んでいる人が多いこともわかる。

その意味では立花孝志氏の「アルゴリズム戦略」はそれほど間違っていない。政治に絶望しつつ外から眺めている人やそもそもどうやって入ってゆくべきかが全く掴めていない人が多い。

今の政治は難しくて複雑であると考えられているため「何をやっても変わらないだろう」という諦めが蔓延している。この諦めが参入障壁となっていて「政治が理解できない人たち」は政治に入ってこない。

当選後のガーシー議員が不発だったのには決定的な理由である。ガーシー氏もまたシステムの内部でルール通りに振る舞おうとした。つまり彼は議員が「システムの外に出ることができる特権を持っている」ことに気が付かなかった。

議員には不逮捕特権と免責特権がある。彼が国会の内部に留まって内側から暴露を始めるという発想を持たないのはシステムにとって幸いなことだった。録音機を仕込んで議員たちを挑発した上で暴露するくらいのことはできたと思う。理論的には「国民の知る権利」を行使したといえば良い。記録に残して報道する必要はない。「アルゴリズム」に乗って自然に伝わるからだ。

もう一つの素地であるシステムの脆弱化はすでに進んでいる。国会ではすでに二つの破壊行為が完了している。

安倍総理時代には「ご飯論法」が横行した。つまり国会議論はすでに破壊されている。行政府が議論を無効化すればなんでもできてしまう。安倍総理が強かったのは彼が一度政治的に死んでいる上に議論ができるほどの優秀さを持たなかったからである。知的階層からなる国会議員や学者たちはこの「ある種追い詰められた無能さ」に対応できなかった。

さらに官僚も人事により押さえつけられた。日本は吉田学校時代から官僚が議員になるという半官僚制国家であった。この最後の首相が宮澤喜一だ。だが安倍総理は官僚の議論も理解できないため「人事によって押さえつければ支配できるだろう」と考えそれを実行した。相手の言っていることが理解できる人にはここまでのことはできない。

高市早苗大臣の行政文書問題はこうした破壊行為の結果として行政文書の信頼性が失われているということを示している。岸田総理はまだこれを修復できていない。

さらに鈴木宗男懲罰委員長は「国会に出てくるという決まりなのだからそれに従ってもらわないと困る」という程度の理屈で懲罰を推進した。これに反対するものは誰もいなかったし、論理的になぜガーシー氏の28万票が否定されなければならないのかを説明した議員もいなかった。最終的に「国会はバーチャルのお遊びではない」という理屈で除名を強行してしまった。

彼らの理屈は単に「今までもそうだったからこれからもそうあるべきだ」程度のものなのだから、それを論破するのは容易いだろう。そもそも現在の脆弱性には気が付いておらず従って修復するつもりもない。

いずれにせよ政治家女子48党が「中途半端」な状態に留まるならば、今後も議論・文書・国会議員の存在意義が曖昧なままで国会運営を続けても何ら問題にはならないだろう。中途半端な人たちは自分からシステムの外に出るようなことはしない。

堀江さんについては若干気になる点が三つある。第一に彼は理論的な言語化ができる。今回ガーシー氏が思いつかなかった田中角栄の事例を思いついた。さらにいえば国会議員や起業家としては一度社会に殺されている。システムの外に弾き出された後で戻ってきた人はおそらくかなり手強い。

さらに政治家本人ではないためいわゆる「説明責任」が軽い。そもそも斉藤氏は自身が「ホリエモンの考えを国政に反映させる」というように堀江氏のプロキシーである。国会議員という立場には責任が伴うと考えている堀江氏にとっては秘書をプロキシーに立てた方が何かと便利だったのだろう。つまり責任は負わずに好きな時に情報発信だけができるのだ。

一縷の望みもある。

一つはこれが東スポの記事であるという点だ。軽いノリで発言して「やっぱりやめた」は十分に考えられる。

さらに堀江さんはいまだに事業家活動を継続している。つまり現在のシステムを破壊する動機は薄いものと思われる。HORIE MOBILEという格安SIMを売り出そうとしているそうだ。インフルエンサーと組んで活動をしているということなので「単なる話題作り」として秘書を選んだものと思いたい。仮に単なる広報活動であれば攻略は容易だろうし、それなりにシステムとうまくやってゆこうとするはずだ。

国会がそれなりに平和であるためには、堀江さんの事業がそれなりに成功することが重要だということになる。ビジネスの方が面白くなればきっと堀江さんは面白い方を選ぶのではないかと思う。」

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