トランプ氏が自身のSNSで「自分は火曜日に逮捕されるかもしれないがこれは政治的迫害である」と訴えている。高市行政文書問題でも見られた「誰かが嘘をついている」というような程度話なのだが、アダルト女優が登場したりトランプ氏が抗議運動を呼びかけたりと「劇場化」の度合いは日本とは比べ物にならない。さらに実際に刑事罰の対象になる可能性もありこれまでの民事裁判とは少し様相が違ってきている。
トランプ氏が自身のSNSトゥルース・ソーシャルで「共和党の主要な候補者で元大統領(つまり自分のこと)が火曜日に逮捕される」と訴えている。実際に検察からそのような呼びかけはなされていないのだが、トランプ氏は「違法なリーク情報がソースだ」と主張しているそうだ。ニュースで自身に対する追及が始まっていることに対して恐れを抱いているということがわかる。メディアに捜査情報が伝えられることを「違法」と言っているのだろう。
「逮捕されるかもしれない」ではなく「逮捕される」と断定的に書いていることからメディアが反応し記事になった。
日本語の記事はトランプ氏の訴えだけを伝えているのだが、CNNの英語版は詳しいあらましを伝えている。
CNNなどのリベラル系メディアが心配するのはこの呼びかけが「選挙は盗まれた」とする過去の呼びかけに似ているからだろう。最終的に議会襲撃につながっていったため、今回も同様の激しい騒ぎが起きることを恐れているのだ。
実際にトランプ氏逮捕はあり得るのだろうか。
これまでトランプ氏は何度も民事裁判に巻き込まれてきた。だが今回は刑事事件に発展する可能性がある。問題になっているのはアダルト映画女優に対する口止め料だ。ダニエルズさんはトランプ氏と不倫関係にあったと主張し大統領選挙前に口止め料として13万ドルを受け取ったと主張している。
2018年にトランプ氏は支払いについては何も知らないと証言しているが、顧問弁護士のコーエン氏はダニエルズさんと別の女性への口止め料支払いをめぐり有罪判決を受けているそうだ。日本の政治家は秘書に責任を被せることがあるがこの場合は「弁護士が勝手にやったこと」とになっているようだ。
この口止め料が違法に支出された恐れがあるというのが検察の見立てである。
ことの発端はニューヨーク州マンハッタン地区検察が「トランプ氏は起訴される可能性がある」と示唆したことだ。これがニューヨークタイムスに取り上げられている。日本語ではロイターが後追いしている記事が見つかった。
BBCもこの件について詳しく書いている。まず弁護士がダニエルズさんに口止め料を払い、その後トランプ氏が弁護士に払ったのだという。つまり2018年の「知らない」という主張は虚偽だったことになる。ただしこれは選挙資金ではなく合法だというのがトランプ氏の主張だ。
ダニエルズさんが主張する性的関係については否定しつづけている。
確かに不倫は恥ずかしいことではある。トランプ氏はその事実は隠したいようだ。だがそれは犯罪ではない。つまり、不倫の口止め料がなぜ刑事事件につながるのか?と言う疑問がある。
BBCの報道を読む。
今回の場合はコーエン弁護士が「一度立て替えている」ことが寄付にあたると言うことだ。これをトランプ陣営が払い戻していなければコーエン氏が勝手にやったことになるのだが、払い戻したとなると形式的に「立て替え」が成立し規制違反になる。トランプ氏がコーエン氏に勝手に寄付をしたと言う形であればこれは「トランプ氏が弁護士に個人的に寄付をした」ことになり合法である可能性もあるということだ。
日本で言うと「公職選挙法に形式的に違反した」と言うような事態だ。仮に報道の内容を全面的に採用すると、おそらくトランプ氏はさまざまな揉め事にさらされており弁護士を使って色々なことをやっているうちに形式的に選挙関連の違反を犯してしまったことになる。
現在日本では高市早苗さんと放送法を巡る行政文書が問題になっている。関係者の間に認識のずれがあり「誰かが嘘をついているのだろう」と言うことになっている。BBCの記事を読む限りトランプ氏の件も基本的にはこれに似ている。つまり関係者の間で意見が食い違っているため誰かが嘘をついていることになるのだ。渦中のコーエン弁護士は黙秘権を主張している。
ただ、登場人物の一人が子持ちのアダルト女優であり騒動とは比べ物にならないセンセーショナルな内容である。さらに当事者であるトランプ氏が「自分は政治的に迫害されているのだからみんなで俺を守ってくれ」と呼びかけている。トランプ氏の呼びかけは結果的に議会襲撃の扇動につながった「実績」があるため、支持者たちがどう反応するのかに注目が集まっているものと思われる。