ICC（国際刑事裁判所）がプーチン大統領に逮捕状を請求したと各紙が一斉に報じている。実際に逮捕される可能性は高くないうえに起訴できたとしても裁判には長い時間がかかるだろう。むしろ長い戦いが始まったと言って良い。では一体今回のICCの逮捕状にはどのような意味があるのか。実は日本からも検察官が派遣されているという。
プーチン大統領に逮捕状を出したのはICC（国際刑事裁判所）である。ICCは実は国連の機関ではなく123カ国が批准した国際条約によって作られた裁判所で個人の犯罪を裁く枠組みだ。つまりロシアが国連から起訴されたわけではなくプーチン氏が個人的に起訴されたということになる。
ロシアもウクライナもICCには加盟していないそうだがウクライナは自国の領土で行われた犯罪を起訴する権利をICCに許諾している。ICCは独自の警察力を持っていないため加盟国が容疑者を拘束する必要があるが、おそらくプーチン氏がウクライナを訪問することはないだろう。
アメリカ合衆国、ロシア、中国はそもそもICCに加盟していない。例えば、トランプ大統領はICCの捜査に抵抗して職員を制裁したりしている。この時の容疑は米軍のアフガニスタンでの戦争犯罪だった。
つまり、プーチン大統領がロシアに留まる限り大統領が逮捕される可能性はないことになる上に常任理事国もイギリスとフランス以外は入っていないという枠組みだ。戦争をやめさせる必要はそれほど高くないと言って良い。
中国も加盟国ではないためプーチン氏が訪中しても逮捕要請に応じる必要はない。習近平国家主席は3月20日にロシアに訪問することが伝えられている。仲介者という位置付けだが欧米勢力と対峙するために連帯を深める狙いがあるものと思われる。
そもそも逮捕が難しい上に、裁判に持ち込めても解決までに途方もない時間がかかる。
例えば旧ユーゴスラビア地域での戦争犯罪は旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所で裁かれている。安全保障理事会によって設立されており、国家指導者を含む多くの戦争犯罪が裁かれた。
内戦のセルビア人武装勢力の司令官だったムラディッチ氏はセルビア治安当局が16年もの間行方を追っており、2011年に逮捕された。その後裁判は長期に及んで続けられ終身刑が確定したのは2021年だった。
そもそも逮捕できる見込みがほとんどないにも関わらずプーチン氏を起訴する狙いは何なのだろうか。
ICCはすでに2022年6月にウクライナに事務所を開いている。戦時下で行われたありとあらゆる行為を調査し犯罪行為の有無を調査している。さらに、証拠保全も重要な役割だ。「戦争」が終わってからでは遅いのだ。
実は日本からも検察官が派遣されているそうだ。NHKの報道によると2022年9月に検察官を２名派遣しているのだという。国際社会と共に「戦争犯罪は決して許されるべきではない」というメッセージを連帯して発信するという意味があるものと思われる。
NHKは「戦争犯罪」と鉤括弧で括っている。宣戦布告のない武力行為である上に安保理でも認定されていないため「戦争」と鉤括弧で表現されることが多い。それでも許されるべきではないという意志表明は極めて大切である。
アメリカ共和党の大統領候補の中にも、これは単なる領土紛争だからアメリカは支援すべきではないという声が出始めているそうだ。日本を含む国際社会が強い意志で「戦争犯罪で民間人の人権を蹂躙すべきではない」と訴え続ける重要性は実はこれからもっと大きくなってゆくのかもしれない。
Comments
“拘束見込みのないプーチン大統領に国際刑事裁判所が逮捕状を出す意味” への2件のフィードバック
領土紛争が許されるなら今後とも侵略戦争は続く！
アメリカは自国が世界一の軍事国家だから勝手な事が言える。
一刻も早く戦争状態を終わらせることだね。
他国の役割は争いを仲裁すること。間に割って入って互いを落ち着けさせること。
普通、喧嘩してるのを見つけたら、即座に間に割って入って互いを引き離し、落ち着かせるだろ。
何やってんだ。やめろやめろ。っていうのが普通の対応。
それを、周りがはやし立て、もっとやれ、この武器使え、死ぬまでやれと、火に油を注ぐように面白がって焚きつけてるの現状は、ほんと異常だと思うね。
ケンカの仲裁したことなくても、人として常識で考えればわかること。
停戦の方向へ導くような支援が必要だよ。踊らされすぎだね。