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2月CPIの評価はまちまち これまでの金融市場の読みはいったん白紙に

シリコンバレーバンクの破綻をきっかけに市場が動揺している。これまでのように急激には金利は上げられないだろうとする意見がある一方でインフレ対策を先行させるべきだという意見もある。仮にインフレが収まったという兆候があればFRBは金利の引き上げを緩やかにすると見られていた。結局アメリカの2月のCPIも評価が別れる内容になっており不透明性がますます増した形になっている。例えばロイターとBloombergで書き方が異なっている。

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とにかく相場だけが知りたいという人はまず「米国株式市場=反発、米インフレと米銀懸念が鎮静化」を読むといいだろう。ひとまず最悪な事態は避けられたとアメリカの株式市場は安堵したようだ。もちろん「今日のところは」という但し書きがつく。

一方で2月のCPIの評価は別れた。

まず最初に読んだのはBloombergだった。インフレは収まっていないのだからまた利上げがあるかもしれない。すると更なる金融機関の破綻も起きそうだなと解釈できる。これは大変なことになったなと感じた。

総合指数はエコノミストの予想値と合致したが、コアは前月比0.5%上昇で市場予測を上回った。2023年末よりは低い数字なのだが再上昇の兆しがある。値上がりしたのは住宅、娯楽、航空運賃などだ。またブルームバーグが独自に計算したサービス価格が昨年9月以来の大幅な伸びを示しているという。以下を総合してBloombergは「インフレが続行している」と読み取れるヘッドラインになっている。特にサービスの伸びを問題視しているようだ。

ところが、ロイターや時事通信のヘッドラインを読むと真逆の印象を持つ。

ロイターは季節調整した上で年率換算している。6.0%になり先月の6.4%から減速したという表現になっている。こちらは市場の予測とほぼ合致するので「喜ばしい結果となった」と評価している。金融機関を痛めつけるような金利上昇はやらなくても済むという見立てになっているのである。こちらは家賃の伸びを付け足し程度に根強いと表現している。

時事通信も「鈍化」と書いており市場の願望が滲む。こちらはサービス業のインフレが「付け足し」になっている。

おそらく一般投資家は「市場はどっちに向かっているのか」を知りたがっていると思うのだが、媒体によって評価が異なる。つまり、指標の読み方によってはどうとでも取れるという状態が続いている。

では具体的にはどのような数字になっているのか。少なくとも0.5%上昇という見方は消えた。金利先物市場は3月と5月の金利は0.25%の利上げを視野にしていると書いている。

世界の終わりと言えるような金融破綻は起きていない。だが市場の動揺は続いているようだ。人々は安全な投資先や預金の預け先を求めて右往左往している。

金融株は軒並み下落した。シリコンバレーバンクが破綻してから3日で62兆円の時価総額が失われたという。人々は「より安全」な金融機関に資金を動かしており、小規模の金融機関を中心に更なる問題が起きるのではないかと予測する人がいる。

FRBは別の複雑さを抱えることになった。預金者救済の短期的止血効果が評価される一方で、金融機関をきちんと監視していないという批判が出始めている。

パウエル議長も個人的に批判され始めているようだ。パウエル議長はトランプ政権下で就任している。2008年の恐慌の再発防止のために作られた金融規制改革法(ドッド・フランク法)の緩和に関与しており「これが過ちだったのでは」という議論が出ているそうだ。

総合すると金融市場は方向性を失っており、何が起きても不思議ではない状態が続いている。

鈴木財務大臣は日本への影響は限定的だと見ており「引き続き状況を注視する」といつもの答弁を繰り返した。

一方で円相場や株価は一定の落ち着きを取り戻しそうだ。

引き続き不安材料が残る金融市場だが冒頭でお伝えした通り、ロイターは次のように結論づけている。ひとまず最悪の事態は避けられたという安堵感が滲む。

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