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バイデン大統領の予算教書と演説のポイントまとめ

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バイデン大統領が予算教書演説を行い分析記事が出揃った。ポイントは次の通り。

  • 歳出の要求総額は6兆8830億ドル、日本円にして940兆円余りで前の年度から8%増加。
  • 国防費はウクライナへの支援などを含めて8864億ドル3.3%の増加。対中国対策でも予算を要求。
  • 共和党が反対している子育て予算なども充実させたい考え。
  • 財政均衡化目標を早めており対策として富裕層に対する増税を行うと表明。

参考資料

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以下ポイントになりそうな詳細をまとめた。項目は下院との関係・国防費・バイデン大統領の支持率・共和党の内情である。

下院との関係

バイデン大統領は債務上限問題を抱えている。このため下院に対して協力を求めたほうが良かった。しかしながら、次の選挙を見据えて対決姿勢を鮮明にすることを選んだようだ。民意が大統領に味方してくれることを期待しているのかもしれない。

当然、予想外のイベントが起こりやすい環境になっている。その最大のものは「アメリカのデフォルト」である。パウエル議長は議会に警告を送っている。

アメリカ政府の債務は上限に達しており予算の裏打ちとなる財源は6月に完全に枯渇することが予想されている。これを回避するためには債務上限を引き上げるしかない。しかし、共和党は上限拡大に反対している。「プログラムの一部を削れ」と言っているのである。

共和党が富裕層増税を含む提案に賛成する見込みはないがバイデン政権はまずは対決姿勢を見せている。支出拡大と同時に赤字削減目標は早期に達成したいとも表明した。

そのための解決策が富裕層に対する増税である。

このようにバイデン大統領がハードルを上げすぎてしまったため、バイデン政権は債務上限引き上げと予算案交渉という二つの要求を同時に走らせることになってしまった。共和党の妥協を引き出すのは難しいだろうとロイターは見ているようだ。

国防費・対中国対策

国防費はまずは3%増だが国際情勢の成り行きによっては増加の可能性もあるという。

対中国向けの予算も要求している。まずはアメリカのことを考え(アメリカ・ファースト)国境対策や治安維持に予算を振り向けてほしいと考える一般の人たちは「なぜ外国を優先するのだ」と不満を感じることになるだろう。

つまりバイデン大統領が国防費や対中国対策を表明しているからといってそれがそのまま実現されるかどうかはわからない。日本の報道はアメリカの要求に追随する動きを見せる可能性があるが「ハシゴを外される」危険性もあるということだけは知っておいたほうがいいだろう。

外務大臣経験のある岸田総理はこれがよく分かっているはずだ。難しい判断を迫られるだろう。

バイデン大統領の支持率

バイデン大統領の支持率はこのところ微増している。インフレ懸念が後退したためと見られる。つまりインフレと大統領の支持率には相関がある。

パウエル議長はタカ派政策の継続について「指標次第」と言っている。このため一旦タカ派政策の継続が予想されドル円相場が円安に触れた。ところが労働市場が冷え込んでいるという観測が出ると一転して円高・ドル安に触れている。

このようにこのところのアメリカ経済は「指標」に振り回される状態が続いている。仮にインフレが再加速すればバイデン大統領にとっては不利に働く。おそらくバイデン大統領にはこれはコントロールできないだろう。経済動向次第ということになる。

共和党の内情

バイデン大統領の挑戦状を受け取った共和党は対決姿勢を示している。要因は2つある。バイデン大統領は共和党に対して挑発的な態度をとっている。富裕層を狙い撃ちにしており共和党のコアの支持者から反発が高まることが予想される。

ただ、エスタブリッシュの共和党は「金持ちの政党」とみられたくない。富裕層だけをターゲットにしたのでは十分な支持が得られないからだ。そこで「国境政策」などで一般市民の危機感を煽っていた。これが保守層を刺激し一部ではトランプ氏への期待が高まり続けている。

以前トランンプ氏を熱狂的に支持する保守系の集会についてご紹介した。ポイントは共和党がトランプ派とエスタブリッシュメント政党に分裂しつつあるという点だ。このため共和党は各地で内紛が起きている。最終候補が決まれば沈静化するのではないかという楽観的な見方もあるが予断を許さない状況だ。

アメリカの会計年度

蛇足ではあるが、アメリカの会計年度は10月1日から9月30日までの1年間だそうだ。このため現在話し合われているのは2024年度予算と呼ばれる。現在2023年度予算の審議をやっている日本と違っているのでこの点には注意が必要だろう。

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