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バイデン大統領は徴用工問題を「解決」した尹錫悦大統領を国賓待遇で招待。ただ韓国では火種もくすぶる。

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徴用工問題を「解決」した尹錫悦大統領が国賓級で訪米することが決まった。岸田総理の訪米よりも格が上であり、尹錫悦大統領は大きな外交的成果を手に入れたことになる。ただこの「解決策」は韓国内でかなり反発されているようだ。原告団は納得していないため問題がこじれれば岸田政権にも批判が飛び火する可能性がある。

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尹錫悦大統領の国賓待遇での訪米が決まった。時事通信によればバイデン政権で国賓級で迎えられるのはマクロン大統領に続いて2人目になるという厚遇ぶりだ。

岸田総理が訪米した際には共同記者会見も開かれていない。日本では「アメリカがバイデン大統領の失言を警戒したのだろう」という説明になっているのだが真相はわからない。取り立てて目新しい成果も期待できないためあえてやらなかった可能性もある。またバイデン大統領が日本にさほど注意を払っていない可能性も捨てきれない。

読売新聞はわざわざ「菅総理大臣が共同記者会見ができたのはバイデン大統領就任後始めての日本の総理だったからである」という外務省の釈明を紹介している。つまり岸田総理に共同記者会見がなかったことを外務省も保守系のメディアも気にはしていた。

この尹錫悦大統領と岸田総理の待遇差そのものが日本の保守系を刺激する可能性がある。だが、問題はこれだけではない。

タイトルには「解決」と書いたが実は韓国国内では尹錫悦大統領のやり方に反発が強まっている。謝罪を勝ち取れず金だけ受け取ることが屈辱だと受け止められているようだ。屈辱外交だという批判はあるが必ずしも日本批判にはなっていない。抗議を示すパネルの中にはバイデン大統領と尹錫悦大統領の顔にバツがついたものもある。むしろバイデン大統領と尹錫悦大統領に対する反発となっている。

韓国大法廷は日本製鉄と三菱重工業に対しての3件の判決を確定させており資産を売却して賠償にあたる「現金化」を要求している。当時も文喜相議長による肩代わりの提案がなされていたが原告から拒否されていた。今回も原告の一部は代位弁済を拒否しており足下の問題が消えたわけではないことがわかる。

読売新聞はあたかも日本企業が何も言わなければ問題は解決するかのように書いているのだが、Yahoo!ニュースのコメント欄で辺真一さんが「うまくゆくとは思えない」と反論している。元徴用工からの了承が得られなければ先に進むことはできない。

韓国でも若者を中心に「日本製品の不買運動などはうんざりだ」という声は多い。一方で白黒はっきりつけたがる国民性もあり「悪いことをしたのに謝らないとは何事か」とする人たちもいる。尹錫悦大統領の厚遇ぶりはアメリカ国内では政治的なパフォーマンスの効果があるが、韓国の反米・反日感情を煽りかねない。

トランプ大統領は板門店を訪れて北朝鮮に「歴史的な一歩」を踏み入れた。バイデン大統領も韓国大統領との雪解けをアピールしたいのだろう。米韓同盟が成立して70年の記念の年なのだという。

バイデン大統領の外交下手は今に始まった事ではないが、結局日本企業の資産を売却して補償に充てるというプロセスは続行中である。つまり「日韓会談を行った後で日本が反発していた資産売却が行われた」ということにもなりかねない。おそらくこの種の決定が行われれば日本国内の保守は「関係修復は拙速だった」と岸田政権を非難することになるだろう。

そもそもこの現金化はどれくらいのところに来ているのだろうか。2022年ごろのニュースを見ると文在寅政権下で最終判断が先送りされ続けているようだ。時計の針は着実に「ゴール」に動き続けているのだが最終地点にまでは到達していないという状態のようである。

おそらく岸田政権はアメリカの強い働きかけに応じて「日韓雪解けムード」を演出することに決めたのだろう。だがこのために自分達では管理ができないかなり危険な状況にコミットすることになってしまった。このまま日韓正常化がうまくいってほしいとは思うのだが韓国世論の反発や日本国内保守の反発が岸田政権に及びかねないというリスクはありそうだ。

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