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岸田総理が日韓関係正常化に向けて「保守離れ」を試みる

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唐突な記事だった。「在日コリアンへの連帯表明検討 首相、宇治市のウトロ祈念館巡り」と共同が書いている。支持率アップを目指して子育て支援を表明したり、LGBT問題について触れてみたり、何かと忙しい人だなと感じた。だが在日コリアンには今の所は国政参政権がなく票田にはならない。いったい、岸田さんにはどんな狙いがあるのだろう。

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まず思いつくのが「日韓議連会長に菅義偉前首相が就任へ 額賀氏から交代」である。菅義偉氏は非主流派のリーダーとしてポスト岸田を虎視眈々と狙っているとされている。そんな中、政局的興味でこの話題は比較的大きく扱われた。菅義偉さんは表向き岸田批判は行っていないためどうしても行動が注目されてしまうのだろう。

この記事と比較すると、ライバル派閥の動きを抑えるために岸田さんが「自分も何かしなくては」という焦りを持っているのではないかと思えてしまう。ちなみに前任者の額賀福志郎氏は茂木派なのだそうだ。茂木派とはつまり元竹下派である。

ではそもそもなぜ日韓関係が注目されているのか。実は日韓ビジネスが再加速しそうなのだ。もう一つ次のようなニュースがあった。読売新聞が「「元徴用工」韓国側が解決策なら日本政府も呼応、過去の談話踏襲を岸田首相表明へ」という記事を出している。

韓国の財界は日本とのビジネスを加速させたい。そのためには政治を正常化する必要がある。このため文在寅政権下で起きた「日本離れ」の動きを修正しようとしている。このため徴用工への補償を肩代わりする形にして問題を清算しようとしているようだ。財団を作り補償金を寄付で賄うという。

こうすることで日本は自分達のポジションは変えずに「韓国が自発的に問題を解決した」と言える。しかしながら、韓国側も条件を出してきたようだ。それが「おわびと反省」である。読売新聞のリードは次のようになる。

  • 日本政府は(主語)
  • 日韓間の最大の懸案である「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題を巡り(課題)
  • 韓国政府が解決策をまとめれば(条件)
  • 岸田首相が、日韓関係に関する過去の共同宣言や首相談話の立場を踏襲していると表明する(行動)
  • 方向で調整に入った。

問題はこの「過去の立場」の内容だ。読売新聞によると、日本はすでに植民地支配へのおわびや反省をしているのだから「日本は何も態度を変えていない」と主張するようだ。従来の姿勢を強調することで日韓ビジネスは加速し自民党側にとっても利権になる。この機運をめざとく見つけた人たちが日韓議連を再度テコ入れしようとしており岸田さんもこの列に並びたいのだろうということになる。

いかにも自民党らしい流れが見える。

ただ、これまで安倍自民党を支持してきた保守の人たちはこの動きをあまり喜ばないのではないかと思った。実利を求める人たちは日韓関係が正常化されればおそらくビジネスチャンスが増えると考えるだろう。もちろんそこに加われない「ネット保守」と呼ばれる人たちは単に切り捨てられたと思うのではないだろうか。

結局、岸田総理は「実利」を取ろうとしており、ネット保守と言われる人たちが次にどこに向かうのかはよくわからない。今のところ強硬な保守姿勢を持った政治家は自民党の中に見当たらない。かといって野党にも保守の受け皿になりそうな政党がない。

いずれにせよこれまで「安倍支持」だった政治家たちが従来の姿勢を貫くのか別のポジションに鞍替えするのかは注意してみておいた方がいいだろうと思う。おそらく単に「主流派だから」という理由で話を合わせていた人も大勢いるはずなのだ。

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