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「ディルバート」原作者のスコット・アダムス氏が炎上し主要紙掲載が中止に

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BBCに興味深い記事が載っていた。決してマネージメントと相入れないエンジニアの悲哀を描いた「ディルバート」の作者であるスコット・アダムス氏の人種差別的な発言が炎上し主要紙の掲載が取りやめになったのだという。アメリカで一つの時代が終わりつつあるんだなと感じた。これに対して行きすぎたポリコレだという評価もあるようだ。

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BBCの記事「米漫画「ディルバート」作者が人種差別発言、ワシントン・ポストなどが掲載取りやめ」によると、スコット・アダムス氏の炎上発言は「黒人はヘイト集団の一部だから白人は彼らから離れるべきだ」というもの。確かに現代のコンテクストでは決して許されるものではなさそうだ。

1990年代に「非白人」として漫画を愛読していた立場から見ると「アダムス氏ならこれくらいのことは言いそうだ」という気がする。この漫画は平日の新聞に4コマ漫画として掲載されており週末にまとまったストーリーが掲載されるという形式だった。内容は無茶苦茶な注文を突きつけてくる無能なマネージャーとエンジニアの決して折り合わない関係を描いたものである。

中に「ドックバート」という犬が出てくる。独裁志向を持った犬であり、それらの発言からスコット・アダムス氏が民主主義に対してかなり懐疑的な見方をしていたことがわかる。ドックバードの指摘はつまり「民主主義は衆愚政治だ」という主張なのだ。

Quoraでこの記事を紹介したところ、アメリカに在住の人から「職場について諧謔的(サーキャスティック)な風刺を効かせた漫画にはまだ需要があるが」と前置きした上で、スコット・アダムス氏の発言には心配なところがあったという指摘をもらった。かつてはジョークで済んでいた陰謀論などに現実が追いついてしまったという点があったのだろう。

さらに加えて「職場が白人中心で黒人が出てこない点も懸念材料だった」という。ある漫画が添えられていた。

「多様性の推進のために黒人を雇うことにした」というボスに対して当事者の黒人が「私は自分のことを白人だと思っています」と言ってしまうという内容だ。ボスはそれに対して「あなたは全てを台無しにしているよ」という。アメリカの「人種多様性推進」など絵空事にすぎないという隠れた主張があることは明白である。

このほかに出てくる有色人種にはインド人インターンのアショークという人物がいた。アショークは極めて優秀だがアメリカの職場文化に馴染むことはできない。そしてそのアショークに対して周りの同僚たちはあれこれとあまり生産性のない「アドバイス」を吹き込むというのがお決まりのパターンだったように記憶している。

2015年のZDネットが「グーグルもマイクロソフトも–なぜ米IT企業はインド人CEOを好むのか」という記事を書いている。記事の中で「ここ10年は珍しくなくなった」と書かれている通り、アメリカの企業ではインド系がインターンどころか経営トップになることさえ決して珍しくなくなっている。スコット・アダムス氏の考える「古き良き職場」はもう漫画の中にしか存在しない。

BBCの記事にも書かれている通りディルバートの連載が始まったのは日本ではバブル崩壊前にあたる1989年だった。つまりその頃にはアメリカにも「職場の多様性」など全くなかったのである。ディルバートの職場が「ほぼ白いまま」だったとすれば時代を切り取る風刺漫画家だったはずのスコット・アダムス氏が多様性を増すアメリカ社会に必ずしもキャッチアップできていなかったことがわかる。

日本で言えばサザエさんの中にだけ昭和の伝統的な家庭が温存されているようなものである。「古き良き時代」が動態保存されているのはいいことなのかもしれないのだが、新聞掲載漫画だったサザエさんには今では問題になりそうな表現がいくつもある。フジテレビのテレビ漫画はその毒を慎重に抜いて慎重に「お茶の間風」に仕上げたものだ。

そういえば日本でもディルバートを読むことができたなと思った。調べてみたところ1997年に「ディルバートの法則」としてアスキーが単行本を出している。ウェブではITmediaエンタープライズが漫画を掲載していた。今でも記事自体は残っているのだが2019年で掲載が止まっているようだ。リンクを辿るとかなりの量の漫画がそのままサーバーに残っているようである。

ITmediaエンタープライズの記事には漫画の他に簡単な解説が載っている。英語を勉強したいITエンジニア向けの補足説明と思われる。アメリカなどの多国籍企業に就職したいエンジニアにとっては職場で使われる英語表現とアメリカの企業文化(知らなくていいことまで含まれてはいるのだが)を学べる楽しいコンテンツだったと思う。

この件に関してイーロン・マスク氏は「この掲載中止こそ白人とアジア人に対するメディア差別だ」と反論しているという。ロイターの記事には発言の詳細が出てくるのだが、マスク氏がなぜアジア人を含めたのかはよくわからない。黒人(アフリカ系)をその他と対置させたかったのかもしれない。

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