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文春の新しいターゲットは河野太郎氏の最側近

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文春が新しいターゲットを見つけたようだ。秋本真利外務大臣政務官である。国会で「事実と異なる答弁をした」と話題になっている。ただ秋本さんって誰?という人が多いのではないだろうか。文春は「河野太郎デジタル相の最側近」と書いている。

今ひとつ記事にインパクトに欠ける。「秋本さんって誰なんだ?」というのがよくわからないからである。大臣副大臣クラスではないため特に岸田政権の倒閣に使えるわけでもなさそうだ。ただ内容を細かく検討すると「ブラック企業のパワハラ」という側面があり興味深い。

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秋本氏の選挙区は千葉市の一部・四街道市・佐倉市・八街市が含まれる。いわば都市近郊である。ただ同じ千葉市と言っても花見川区や美浜区のような準都市地域とはかなり色彩が異なる。

秋本さんと地元の千葉市議会議員とのつながりはあまり感じられない。若葉区に限って言えば立憲民主党の議員の方が系列化が進んでいる印象がある。また同じ千葉市選出の小林鷹之さんは岸田総理の最側近の一人であり「かなり大きな差がついたな」という気がする。

つねづね「この人は誰なんだろう?」と思っていたのだが富里市議時代に河野太郎さんが講演会でリクルートした人なのだそうだ。その河野氏から『お前、国会議員になれよ。俺と一緒に働こう』と誘われ、国政への転身を決めたそうですと文春は書いている。

岸田政権になってこの手の不祥事は増えている印象だが炎上するまで手をつけないという特徴があるように思える。炎上するまで待つのが岸田流だ。中にはそのまま鎮火するものもあるのだろうが、秋本さんの話はどんどん大きくなってきている。文春は3つの問題を発掘している。

  • まず秋本氏の地元事務所は市街化調整区域に無許可で作られていた。
  • 次に再エネ事業を手掛ける「レノバ」との関係をめぐり特別顧問から献金を受けていた。
  • さらに秘書給与疑惑が浮上した。

最初の事務所問題は都賀駅の近くの若松町の市街化調整区域に無許可の事務所が作られていたというものだ。この問題は形式的な違反というより象徴的な意味合いが大きい。仮に地元議員の目があれば国会議員が率先して建築基準法を破るというようなことはなかっただろう。仮に市議会議員ときっちり連携が取れていればこんな問題は起こさなかったはずだ。ここから千葉市の議員との関係が希薄であるということがわかる。つまり地元をまとめきれていなかった可能性が高い。

千葉市側の対応もどこか間が抜けている。おそらく事務所があったことはわかっていたはずだが全く把握しておらず取材が入ってから「これはアウトでしょうな」と対応していたようだ。千葉市らしいと言えば千葉市らしい対応だ。一事が万事こんな調子なのである。

実はこれが今回の炎上の原因の一つになっている。秋本さんは何らかの理由で地元をまとめきれていない。このため秘書にプレッシャーをかけて「新規顧客の獲得業務」をやらせていたようだ。

文春は請負を受けた本人に取材をしている。「自分達の保身のために事実を認めないのは残念である」とコメントしている。秘書が不満を持つのも当たり前である。週刊文春の別の記事には次のような記述がある。

「C氏は平日9時から18時まで議員会館で勤務していました。2021年10月の衆院選の時は毎日のように千葉まで通い、秋本氏の指示を受けて約300社を訪問。秋本氏から直接、『ただ支援者回っても意味ねぇんだ、金か人、どっちかとってこいよ』などと怒鳴られたこともあったと聞きました」

ブラック企業の顧客獲得営業マンのような扱いをされていたのだ。

実際の秘書は小林亞樹さんという弁護士だ。小林さんもこんなことはやりたくなかっただろうなと思う。一応「多忙だったために事務所に顔を出せなかった」と言っているが本当のところはわからない。業務を避けていた可能性もある。

いずれにせよ多忙ということで逃げていた小林さんの代わりに常設の議員を置く必要があった。ただ、秋本さんは秘書に給与を支払っておらず小林さんが給与を支払っていた。これが問題だとされているようだ。多重請負のような感じになっているのだが、形式的には「秘書への寄付の要求」に当たり秘書給与法21条の3に違反する疑いがあるとうう。

つまりこの問題を探ってゆくと「ブラック企業のパワハラ営業問題」や「多重請負問題」という労働者にとってはあまり好ましくない状況が浮かび上がってくる。

この件が政治的に大きな影響を与えるのかという点だけを考えると「特に大きな問題にはならないだろう」と思う。第一にこの地域にはおそらく「自民党の政治家であれば誰でもいい」という有権者が多数いる。つまり秋本さんでなくても自民党推薦であれば誰でもいいという側面がある。

また、この地域は組合組織率が高いようだ。このため組織票をまとめている立憲民主党の奥野総一郎氏が非常に強い。両者は拮抗しているため惜敗率という観点では2名が当選する可能性が非常に高い。一方で無党派層にとってみれば「誰に入れても当選する人はいつも同じ」という状態が続いており今後もそれが続く可能性が高い。

奥野総一郎氏は総務省官僚出身だ。自民党という看板に頼れないため地元の系列議員との連携を密にしてなんとか地盤を固めてきた。一方で自民党は何もしなくてもなんとなく票が集まる。しかし文春の記事を見る限りにおいては支援者を固めきれず直接雇用関係がない「秘書」にパワハラまがいの新規営業をやらせていたことになってしまう。確かに本業が忙しい弁護士の小林さんはこんな新規営業はやりたがらないだろう。

つまり象徴的に言えば「河野太郎系列」の議員が実はブラック企業の経営者のような人だったくらいの意味合いしかなさそうだ。その人のリーダーとしての器が側近たちの質によって図られるとすれば、おそらく河野太郎さんはその程度の人なんだろう程度の意味合いしかないことになる。

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