ざっくり解説 時々深掘り

あれから一年。今度はモルドバが狙われている。

あれから一年が経とうとしている。バイデン大統領がキーウを電撃訪問したが経済制裁の効果は乏しく停戦の見通しは立っていない。そんななかでモルドバの情勢が緊迫化している。一般市民の生活が苦しくなり、国民の不満を背景に親ロシア派が台頭しているのだ。

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バイデン大統領がキーウを電撃訪問した。現地で演説を行いウクライナに対して支援を約束したようだ。「経済制裁を強める」と言っているのだがロシアには中国経由で物資が流れ込んでいる。またトルコも半導体を横流ししているようである。どちらも紛争が長引けば長引くほどアメリカを牽制しい自分達の国際的地位を有利にすることが可能な国家だ。特にNATO同盟国であるはずのトルコの裏切りはアメリカにとっては頭の痛いところだろう。

さらに、隣国のモルドバの状態が怪しくなっている。親ロシア派の政党が台頭しており首都では抗議運動が起きている。

アメリカのロシアに対する経済制裁は全く効いていないがロシアのモルドバに対する制裁は確実にモルドバの人々を追い詰めている。モルドバはロシア産のガスに依存しており今では世帯収入の7割が光熱費で消えてゆくのだという。モルドバはルーマニア系の国だがソ連の構成国だった歴史がある。またトランスニストリアにはすでに親ロシア派が実効支配する地域がある。

ウクライナの北にはすでにロシアと同盟関係にあるベラルーシがある。モルドバはウクライナの西にあるため、モルドバがロシアの手に落ちればウクライナは西と北を親ロシア派の国に囲まれることになってしまう。このためアメリカはどんな手段を使ってもモルドバを引き留めておかなければならない。

生活苦を背景に首相が退陣を表明し、大統領は親欧米派の新しい首相を任命した。

アメリカはモルドバの政権を安定させるために現在の政権の支援を表明している。「民主主義を守るため」にはモルドバの政権を支えるしかないとバイデン大統領は考えている。

だがアメリカの一般市民たちは「外国の支援よりむしろ自国の経済政策をやってほしい」と考えているはずだ。環境重視や民主主義の防衛といった高邁なスローガンは保守派から「woke(意識高い系)」と揶揄されることが増えた。また政府は債務上限に達しており6月以降の政府ファイナンスの目処がまだ立っていない。議会との調整は全く進んでいないのである。

一旦国際社会への叛逆を始めてしまったロシアも後には引けなくなっているようだ。今での命の使い捨てのようなことをやって戦線を維持している。若い自国民の命を犠牲にして国際社会に反抗し続けるロシアはもはや正常で健康な国家とは言えない。だがそれを止めきれていないのもまた確かなことだ。こういう状態に陥った国家を正常化させるのは極めて難しい。

民主主義を守るためというスローガンは必ずしも支持されなくなっている。またアメリカや国連が中心となって世界の秩序を守るということも難しくなりつつある。同盟国の中にもあまり協力的でない国がある。バイデン大統領の対立を際立たせて自陣営を結束させるという政治姿勢は現在ではあまり機能していないようだ。

とはいえ日本が民主主義陣営を選択したのは確かである。ここは。周囲の同盟国や同盟地域と連携してなんとか安全保障環境を維持してゆくしかない。

モルドバなどの東ヨーロッパは日本から遠く離れているが、日本の安全保障にも重要な示唆を与えてくれているように思える。極めて難しい状況だがなんとか適応してゆくしかないのである。

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