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たいして期待も反発もされず単に受け流された岸田総理の「子育て予算GDP4%」宣言

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先日岸田総理が子育て予算を2倍にすると答弁した。現在GDP比で2%程度を使っているそうなのだが、これを4%に増やすのだと言う。思い切った政策変更だがこれが全くニュースにならなかった。具体策がないうえに期限も決まっておらず「どうせ後ほど修正されるだろう」と思っていた人が多いからだろう。結局「みなさまの予想」は当たった。即日修正が出たのである。政府の内部からは総理の勘違いだろうという声も出たそうだ。

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松野官房長官が即日発言を修正した。東京新聞が「打ち消した」と書いている。子育て政策への注力はアピールしたいが財源論には踏み込みたくないのだろうと書いている。総理大臣が財源の裏打ちのない国会答弁をしたことになってしまうのだが、もはやこれを問題視する人はいない。誰もできるとは思っていないからである。

磯崎官房副長官も翌日になって発言を修正した。もともとの発言の趣旨もよくわからないのだが「将来的な倍増を考える上でのベースとしてGDP比に言及したわけではない」のだという。産経新聞は「防衛費に見劣りするわけではないということを示したかったのだろう」と書いている。

のちに松野官房長官が「防衛費と比べ見劣りせずとの趣旨と松野氏」と釈明している。防衛にばかり熱心であり単に増税したい総理大臣なのだというイメージが一人歩きしているため、これをどうにかしたかったのだろう。

時事通信がその後の周辺の反応を書いている。関連予算をかき集めて「子育てに優しい政権」を演出しようとしたようだ。官僚視点で見ると美味しい話である。子育てと名前をつけてプレゼン資料を作れば通る可能性が増える。少子化担当大臣経験者は「総理の勘違いだろう」と言っている。菅総理は「俺がやれと言ったらやるんだ」という感じだったが、岸田総理は「難しいですね」と担当大臣が言えば「ああそうか」となってしまうのだ。

例えばアメリカの大統領だと一般教書演説は一応はファクトチェックをしてもらえる。具体的な状況をまず述べた上でどう対策するかについて言及するからである。現状把握が間違っていれば対策も間違えるだろう前提がある。ところが日本の場合は「どうせやらないしできないだろう」と言う前提になっているようだ。

そもそも一般教書演説にあたる所信表明で総理大臣はどのような発言をしていたのか。

まず「全世代型社会保障の福祉を実現する」とした上で、子育て世代の支援は「分配の第二の柱」になっている。そもそも現状把握や分析を全く行わず単に意欲を述べているだけという感じだったようだ。

第2の柱は、中間層の拡大、そして少子化対策です。中間層の拡大に向け、成長の恩恵を受けられていない方々に対して、国による分配機能を強化します。大学卒業後の所得に応じて「出世払い」を行う仕組みを含め、教育費や住居費への支援を強化し、子育て世代を支えていきます。保育の受け皿整備、幼保小連携の強化、学童保育制度の拡充や利用環境の整備など、子育て支援を促進します。こども目線での行政の在り方を検討し、実現していきます。

改めて所信表明演説を見て驚いた。「明けない夜はない」と言っている。つまり今は夜の真っ暗闇だと言っているのである。アベノミクスでデフレではない状況を作り出したという認識は実は持っていないようだ。立憲民主党が失われた10年と主張する理由がわかる。総理大臣の日本に対する現状認識が実は「ほぼ絶望状態にある」ことを意味しているからだ。だがなぜそう思うか、これをどう変えてゆくかという具体策はない。いずれにせよこの発言を気にする人もいなかった。全て聞き流されてしまったのだろう。

立憲民主党は安倍派を他派閥と引き剥がせば自民党の内部崩壊を引き出せるという見込みがあるのだろう。盛んに安倍政権批判を展開しているが総理からは反論はない。今は夜明け前の真っ暗闇だと本人が思っているからである。

立憲民主党は過去にこだわり総理大臣は「今は真っ暗闇だ」という現状認識を示し国民は未来の約束を信じない。それでも時事・政治系のニュースには一定の関心が集まる。実に不思議な状態である。

時事通信の調査によると岸田政権の支持率は30%を切っておりこの「低空飛行」が定着しそうだ。支持はできないが他に代わりになる政党を探すのも面倒だと考える人が多いのだろう。「支持政党がない」という人が58%に昇っている。時事通信は「危険水域」と書いているがおそらく政権を失うことはないだろう。野党にも支持が集まっていない。どちらかと言えば「無関心率」と言ったところである。

安倍政権時代はこれでも構わなかった。リベラルな人たちは「安倍総理が何かしでかすのではないか」と考えていたが実際には何もやらないし何もできなかったと言って良い。しかしながら岸田総理の政策を実現するためには子育て世代をその気にさせなければならない。また再分配するためにも企業にその気になってもらう必要がある。

おそらく岸田総理は人を動かすのには最も向かない政治指導者だといえる。発言を信じる人の反発する人もいない。単に受け流されてしまうのだから。

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