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自民党内の政局になった日銀総裁人事

遅れていた日銀総裁の人事が14日にも国会に提示されるようだと各紙が伝えている。そんな中でBloombergが少し角度の違った分析をしている。自民党の党内政局として扱っているのである。Bloombergは候補者のポジションについてわかりやすい図表も出している。黒田氏と距離の離れた人が候補として提示されれば相場が動くだろうという見込みがあるものと思われる。このような状況で人事は「1周、いや2周したんじゃないかな」と語る人もいる。あえて火中の栗を拾う人はいないのだろうからこれも当たり前なのかもしれない。

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日銀総裁人事を政局化したのは民主党だった。これを引き継ぐ形で安倍総理が政策協定を結んだことで現在の形ができている。黒田総裁の政策はアベノミクスの第一の矢として政府の経済政策の根幹として捉えられるようになった。

自民党内では現在でもこれがかなり意識されているようだ。黒田路線の修正は安倍派の否定と捉えられかねない。

Bloombergは「ある自民党議員の話」として白川体制を支えてきた山口氏が指名されるようなことになれば自民党内から異論が出るだろう言っている。白川氏は黒田氏の政策(すなわちアベノミクス)否定論者として知られている。つまり白川派の復権はアベノミクスの否定と受け取られかねないという含みがあるのだろう。ただでさえ難易度の高い時期日銀総裁ポストだが自民党内部の派閥の争いが問題をさらに複雑化させているようだ。

Bloombergの記事の中で議員は「党内がまとまらない」と言っている。みんなが納得しないというのは日本語では私は許さないという意味だ。つまり、自分達を否定するなら岸田氏には従わないと宣言しているということになる。ただしあくまでも匿名が条件である。つまり表立っては言いたくないが岸田総理に「下手な判断を下したらどうなるかわかっているんでしょうね?」とメッセージを送っている。

自民党の一部が懸念するのは日本の金融政策・経済政策ではない。あくまでも自分達の面子がどう守られるかが重要なのである。

統一教会問題に始まり同性婚・LGBTの権利に至るまで安倍派にとっては肩身の狭い状況が続いている。ここでアベノミクスの本丸である日銀総裁人事まで安倍路線否定につながればますます肩身が狭くなる。国民にとってはさほど大きな問題ではないが派閥の競争は自民党内部では最重要課題だ。

一方で金融市場の関心も「山口氏が指名されれば相場が動く可能性がある」という点にあるようだ。Bloombergの記事は候補者の顔写真入りの図表が提示してあり「誰がタカ派で誰がハト派か」が一目瞭然でわかるようになっている。黒田総裁を中心としてここから距離が離れた人が時期総裁になれば「相場が動くだろう」ということなのだろう。かなり多くの名前が提示されておりその距離感もまちまちである。

岸田総理は国会に対して「国際的な発信力も重要だ」と答弁している。これは特定の候補者を念頭に置いているものと見做された。ここで総理の発言通りの候補者が示されたとするならば「総理大臣は初志を貫徹した」ということになる。一方で「党内の一部」の主張通りに黒田日銀路線を引き継ぐ雨宮氏が指名されれば「おそらく党内の一部に屈服したのだろう」ということになりそうだ。

岸田総理大臣は「私自身がしっかり検討した」と主張しているのだが、実際には安倍派に対してどのような配慮をするのかあるいはしないのかという点が一番の問題になっているように見受けられる。

一方で受ける側の候補者も実は逃げ腰だったようだ。エコノミストは「めぼしい候補者の間でたらい回しがあり最初の候補者に戻ってきたのではないか」と書いている。「1周、いや2周したんじゃないかな」と書かれている。確かに失敗すれば国民から非難される上に下手に動けば自民党内の安倍派からも糾弾されかねないという極めて可燃性の高いポストである。あえて火中の栗を拾う人がそれほど多くいるとも思えない。さらに言えば候補者の数は限られているのだから同じ人たちの間をぐるぐると回ったとしても不思議ではない。

いずれにせよ岸田総理がどのような判断を下したのかは来週にはわかることになりそうだ。

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