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経済政策に行き詰まるバイデン政権が狙いをつけたAppleとGoogleのアプリ市場

菅総理大臣が「私が携帯電話料金を引き下げます」と宣言し話題になったことがあった。バイデン政権も同じようなことをやろうとしている。「バイデン政権、AppleとGoogleのアプリストア開放を議会に要請」というニュースを見つけた。背景にあるのはおそらく経済政策の行き詰まりだが、中国・ロシアの次はAppleとGoogleなんだなと感じた。

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ニュースの内容は極めて簡単だ。報告書を発表し米Appleと米Googleが運営する現在のモバイルアプリストアモデルは「消費者と開発者にとって有害であり、修正するためのポリシー変更が必要」と主張したというものである。「なんだ報告書か」とは思うのだが、バイデン大統領も今のアプリストアは「搾取だ」と断罪したようだ。

搾取とは穏やかではない。

テッククランチの英語版はこのレポートは既によく知られている問題を列挙しただけだと書いている。またレポートが出たからすぐに法規制が始まることはないそうだ。議会で法律を作る必要があるのだが共和党主導の議会がどう反応するのかはわからない。ただし、議会が何もしなければ「共和党支配の議会は「経済搾取」に対して何もやっていないではないか」と言いやすくなる。

仮に本当に問題を解決するつもりならAppleやGoogleと協力して問題解決にあたれば良いはずだ。それをやらずいきなり「搾取」と断罪するところから政権の狙いはおそらくどこか別のところにあるのだろうということがわかる。

バイデン大統領は積極的な財政政策を打ち出した。だが、これは結果的にアメリカのインフレの呼び水になった。つまりこの政策は失敗だったと言って良い。FRBはインフレを軽視し続けていたが物価上昇が抑えきれなくなると一転してタカ派政策に転じることとなった。このタカ派政策は投資環境を冷え込ませているが、ようやく「長い冬も終わるのではないか?」という兆しが見え始めていると言った状態である。資金が戻り始めているそうだ。

バイデン大統領の経済政策の成否は定かではない。だが、経済政策の恩恵はさほど感じられておらず、国民は共和党の議員をより多く選出した。つまりバイデン政権の経済政策は国民の信任を得られなかったことになる。退任が噂されていた国家経済会議(NEC)のディース委員長の退任が正式に決まり、一般教書演説の後に新しい経済対策チームの陣容が発表される。

バイデン政権は決して認めないだろうが、事実上失敗を認めて立て直しを図っている。ただ失敗の代償は大きかった。

民主党は下院の支配権を失っているため、新しいチームもこれまでのような積極的な対策は打ち出せないだろう。政府債務が上限に達しており今のままでは「可能性としては国家デフォルトも起こり得る」というような緊張した状態になっている。国家デフォルトはあり得ないだろうが偶発的な事故の可能性は高まったとする人までいる。下院議長はしばらくは債務上限を拡大させない意向のためバイデン政権の選択肢は限られる。

経済政策の成否よりも債務の増大と議会の関係悪化の方が影響が大きいと言えるだろう。

中国・ロシア・アメリカ共和党に対する姿勢を見ていると、老練な議会政治家であるバイデン大統領は外に敵を作り出して問題を打開するというようなやり方を好むようだ。今回はここにGoogleとAppleを加えようとしているというところなのかもしれない。

今回のアプリ市場解放に期待を寄せる人もいるだろうが、逆に反発を強める人も出てくるはずである。とはいえ今回の提案が具体的な規制や改善につながる見通しもない。結局のところ回収できる見込みのない問題を作り出し常に戦い続ける姿勢を演出するというのが政権の手法なのだということになる。

市場はどう反応しているのかと思い株価を見てみた。FRBの議長発言は株価を乱高下させているが今回のニュースによる反応は全くなかったようだ。「実効性のある対策は取られないだろう」と少なくとも金融市場では見切られているようである。

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