FOMCが先ほど0.25%の利上げを発表した。このまま利上げは進むがそのペースは緩やかなものになる。出口が見えてきたという安堵感が広がったようだ。ドル円相場とニューヨークの株価には変動があった。
Blombergの記事の冒頭は極めてわかりにくい。
FOMCはインフレ抑制に向けた取り組みを続けているが、そのペースを減速させた。一方、今後さらに複数回の利上げが適切になるとの認識も示した。
FRBは市場の楽観論を抑えるためにわざとわかりにくい表現にしているのだろう。各紙の分析記事を待ったが発表直後には目ぼしいものはなかった。サプライズなしということだったのだろう。ロイターはかなり遅れて最初の分析評価記事の日本語版を出してきた。明確なサプライズはなくどちらかというと方向を読みあぐねている印象だ。
日本の金融政策には動きがないため為替相場は単純に日米の金利差が問題になっている。アメリカの利上げが今までのようには急速に進まないだろうという予測から円高方向に触れているようだ。現在の円相場は128円台。ひと頃に比べてかなり落ち着いたなという印象だ。
ダウ平均は発表前に利益確定の売りがあり反落で始まったそうだが、発表直後には反発している。ただしサプライズなしの発表直後なのでロイターやBloombergなどの大手は議長の声明などを見つつゆっくりと記事をまとめているところだろう。市場の反応については記事を待った方が良さそうだ。FOMC発表後の動きと一夜明けてからの評価が変わるということはこれまでも多かった。
いずれにせよ予想通りだったことでサプライズを伝える記事などは見つからなかった。2022年の夏頃の状況を思い起こすとかなり「平和」な状況に思える。この落ち着きぶりがニュースといえばニュースである。
実は安堵感はじわじわと広がっている。資金が戻りつつあるようだ。
実は2022年12月あたりから株式と債権には資金が戻りつつあるそうだ。つまり「冬の最も厳しい時期は終わった」と考える人が多いのだ。日経新聞は海外債権型の投資信託に資金が流れているとしている。2022年実績では株式が不調だったため債権の魅力が比較的に上昇しているというのだ。では株式に魅力はないのかということになるが、ロイターは株式ファンドにも資金が流れ始めていると言っている。このロイターの記事は1月30日リリースなのでこれが最新状況なのだろう。
ではこれで投資家は「冬は終わりました」とばかりに気持ちを緩めてもいいのか?ということになる。
まず政治状況だが、ロイターの「米債務上限協議で具体案見込まれず、大統領・下院議長が示唆」でわかるように引き続き議会と大統領の不毛な駆け引きが続いている。議会は国家デフォルトを人質に取るように政府の債務上限拡大提案を妨害し続けている。アメリカ合衆国が国家デフォルトに陥るなどと予測する人は誰もいない。だが、偶発的な事故の可能性は高まったという見方がある。重要箇所を抜粋したが文脈はぜひ元記事を読んで判断していただきたい。「もし〜ならば」とか「〜と比べると」などが多い非常にわかりにくい文章だ。
- 合意に至らなければ6月にも米国債のデフォルトにつながる恐れ
- 今回の方が政治情勢などが厳しく、政府資金が枯渇寸前もしくは枯渇するまで解決策を見いだすのは難しい
- 「誤算の可能性は今回の方が高い」との見方
Bloombergは「「世紀の空売り」バーリ氏、「売れ」と一言ツイート-FOMC発表前」という記事を出している。バーリ氏はアメリカ経済に破滅が迫っているなどという物騒な警告ツイートを出しているそうだがその真意は明かされないままである。バーリ氏がなんらかの兆候を掴んでいる可能性もあるが、たんに思惑から予想を出している可能性も否定できない。いずれにせよバーリ氏がいうようなことは、今のところとりあえずは起きていない。
ただ、アメリカの国家デフォルトはないにせよバイデン大統領が思い切った経済政策は打ち出せそうにないというのは確かだ。
政治的に膠着状態が続く一方で海外債権・株式には資金が戻りつつある。Bloombergの「ガンドラック氏、FOMCは方向転換説を否定するだろう」にみられるように、FRBは投資家の過度な楽観論を抑えるために方針転換と見做されるような発言はしないだろうなどと予想されている。裏返せば危険な楽観論が広がっていることがわかる。これをFRBがかろうじて抑えているという状況だ。
市場に広がる抑圧されてきた楽観論が再び「インフレ」に火をつけるものの政治が身動きが取れなくなるという事態は十分に予想できる。ガントラック氏は「投資家が金利の行方を見定めるために金融当局ではなく市場を観察すべきだ」と言っている。つまり、投資家の間に楽観論が広がればFRBはそれに追随してタカ派政策を降りられなくなるということになる。すると今度はそれに連れて円相場もまた円の下落につながるということだ。
かつてはFRBの動向を見て金融市場が動いていた。だが実は現在では投資家の動向がFRBの政策を縛っているのである。
いずれにせよ短期的な状況判断と中長期的な状況判断は分けて考えた方が良さそうだ。短期的には一定の安堵感が広がっているが、中長期的な状況判断はまたこれとは幾分異なっている。身をすくめて冬をやり過ごしている時期よりも「もう安心」と気持ちを緩めた時のサプライズの方が危険度が高いように思える。