おそらく解説記事はいくつも出ると思うので、今後新型コロナ対策はどう変わるのかを要旨のみ時事通信の「新型コロナ「5類」引き下げ、5月8日に 公費負担継続、マスク見直し―イベント規制撤廃も・政府決定」を元にまとめてみた。事実誤認が含まれている可能性もあるので詳細は各記事・各報道をご確認いただきたい。まだ「今後決まります」というものもあり流動性がある。
変更点(要旨のみ)
すでに変わったもの
大声での声援を伴うスポーツやコンサートなどは1月27日から即時解禁された。
5月8日ごろまでに変わるもの
マスク着用は個人の判断を基本にする。5月8日より前倒しで開始する可能性もある。具体的な日付は今後検討。NHKの情報によると、航空・鉄道・小売・外食などの各種団体は今後ガイドラインを構築する予定になっている。規制をするにしても「業界の自発的な取り組み」ということになる。政府の関与がなくなるため、おそらく業界ごとに自主規制はまちまちになるだろう。個人判断というより業界ごとの自主規制まかせということになりそうだ。
5月8日の分類切り替え後に変わるもの
2類相当でできていたことができなくなる。
- 感染者の全数把握は取りやめになり「定点観測」に簡素化される。
- 医療費とワクチンの公費負担は「当面継続」されるが医療費には自己負担が導入される。ワクチンは「必要な場合は公費」となっている。つまり「原則個人負担」ということのようだ。病院の診療報酬特別措置は見直される。詳細は3月上旬。
- 対策本部は廃止される。
- 法律に基づく協力要請・行動制限なども法的根拠がなくなるため終了される。この中には海外からの水際対策なども含まれる。
- 保健所がやっていた入院調整も法的根拠がなくなるため終了されるそうだが、報道によっては調整機能を残す都道府県もあるようだ。
時期が未定なもの
対応医療機関は「順次拡大」となっている。今回はこの点が最も大きな懸念材料になっているようだ。興味のある方は次の「懸念」セクションも参照していただきたい。
懸念
NHKは「懸念」についてもまとめているがどちらかと言えば政府広報として懸念の払拭に力を入れている印象だ。「職場や集まりでは話し合いなどで合意することが望ましく、対策を行うことや逆に対策をやめることが強要されないよう、個人の選択を尊重する配慮がされるべきだ」といっているが要するに「職場でそれぞれ話し合ってみんなが納得して決めてください」と「自主的な取り組み」を求めている。「なんとかハラスメント」が横行している職場で「みんなが納得できる決まり」が作れるのか少し不安にはなる。ただし、入院調整の負担が増えるなどの現実的な課題もきちんと押さえられている。政府広報的なNHKでさえも不安になるという状態のようだ。
朝日新聞は「「コロナを診なくなる病院も」 忽那教授が語る5類移行前の対策とは」としている。見出しだけを読むと「受診もできなくなるのか」と思ってしまうが、実際には入院できなくなるということのようだ。これまで政府と地方自治体が病床確保をやっていたがこの仕組みがなくなる。つまりこれまで補助金をあてにして病床を空けていた病院が対応を縮小させることになる。入院調整については心配している媒体が多い。おそらく今後問題になるだろうが「高齢者特有の問題」と見做されて大きく報道されることはなくなるかもしれない。
最も大きな懸念を表明しているのが普段から政権に批判的な東京新聞だ。現在病院では発熱外来を作って動線を分けているが、これが廃止されると「熱がある人は来ないでください」ということになりかねない。皆保険制度の日本では医者に「応召義務(受診を拒んではいけない)」が課せられているがそれがなし崩しになっていると記事は指摘している。記事の二ページ目は岸田政権批判になっており「G7前に正常化させたかったのでは」とか「費用を他の支出に回したいのでは」などとなっている。これは東京新聞ならではといったところだろう。
東洋経済は「5類分類=コロナ終了」という間違った解放感がもっとも怖いのではないかと指摘している。この懸念があたるかどうかはおそらく5月以降になってからでないとわからないだろう。東洋経済は「段階的な移行=ソフトランディング」が重要と指摘している。現在の2類相当であるという分類は単なる政府の都合でしかないのだが、それが象徴的に大きな意味を持ち過ぎていることがわかる。すでに「もうマスクをしなくてもいいんですよね」などと聞くと反発されることがある。コロナ対策にうんざりだという人と感染すると重症化しかねない人たちの間で二極化が生まれていることがわかる。