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マーク・ポンペオ氏によればインドとパキスタンは核戦争の一歩手前だった

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アメリカの政治家は引退した後に回顧録や講演会で収入を得ることになっている。トランプ政権で国務長官だったマーク・ポンペオ氏も回顧録の宣伝のために「インドとパキスタンは核戦争寸前だった」と主張している。ポンペオ氏によればそれはとても難しい状況だったそうだ。

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BBCなど一部のメディアの報道を元にするとポンペオ氏の話をまとめると次のようになる。

インドのある高官が電話をかけてきて「パキスタンが核攻撃を準備している」と主張した。ポンペオ氏は慌ててパキスタン側の将軍に「ホテルの小さな通信設備」を使って連絡をとった。するとパキスタン側の将軍も「いやいや我々はインドが核攻撃を準備していると考えている」と言う。これが誤解であると双方を説得するのに数時間かかった。

このポンペオ氏の主張自体はあまり深刻には受け止められていない。おそらく本の宣伝だと受け止められているのだろう。

ポンペオ氏が世界を救ったかどうかはわからない。だがおそらく何もないところから話をでっち上げたとも思えない。こうした偶発的な核衝突の脅威は実際に存在するのだろう。

おそらくインドとパキスタンの関係は最も単純な部類だろう。現在さらに危険な状態になりそうな地域がある。それが中東だ。ロシアが発端になりドミノ状態になっている。

アメリカ合衆国はイランとの「核合意」の枠組みに復帰することが期待されていた。だが、事実上これが破綻している。きっかけはロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた経済混乱だがその破綻の背景は意外に複雑だ。

NHKが核合意復帰の困難さについて短くまとめている。

世界経済が不安定化するとイランの経済が不安定化し国民の反発が強まる。イラン政府が国民の抗議運動を抑えようとするとアメリカ合衆国はイラン政府と交渉ができなくなる。

ロシアとウクライナの関係がイランを不安定化させる。イランが核開発を進めるとそれに刺激される国がある。今の所サウジアラビアは目立った動きは見せていないが「イランが核兵器を持つようなことがあれば我々も安全保障環境を考え直す必要がある」と言っている。つまり「ドミノ」が倒れるようにロシアの判断がサウジアラビアを硬化させかねない。

ところが中東にはもっと厄介な国がある。それがイスラエルである。アメリカ合衆国が何もしてくれなければ2〜3年後にはイスラエルがイランの核施設を攻撃するかもしれないと国防大臣が明言している。イスラエルは近年になく右傾化しているため、これが単なるこけおどしだとは思えない。

アメリカ合衆国は対応にかなり苦慮しているようだ。右傾化したイスラエル政府を納得させる必要がある。かといって核合意も放棄していないのでイランも刺激したくない。大規模な軍事演習はやったがイランを仮想目的にしなかったそうだ。

インドとパキスタンは2つの大国がお互いに対峙している。どちらもアメリカとの関係を保っているため仲介がしやすい。だが中東の事情はそれよりも複雑だ。イランとアメリカは関係が悪く直接仲介ができない。さらにイスラエルとアラブという三つ巴の構造になっており相互調整は極めて難しい。

アメリカが直接仲介できない核保有国がもう一つある。それが北朝鮮だ。おそらく北朝鮮は核兵器を使う時にアメリカに相談するようなことはしないだろう。

終末時計はロシアとウクライナの問題を念頭に「人類の終末が近づいた」と言っている。だが実際には偶発的に衝突が起こりかねない地域は増え続けている。ポンペオ氏は難しい状況から世界を救ったと主張しているのだが、実はおそらく「最も単純な構造」だったと言えるのである。

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