アメリカ合衆国政府の債務上限到達とデフォルトの可能性について考える

アメリカ合衆国が国家デフォルトするかもしれないなどと言えば笑い飛ばす人が多いだろうし中には「煽り記事だろう」と読み飛ばす人さえいるかもしれない。確かに基軸通貨国のデフォルトの可能性はほぼゼロに近い。金融情報を得たい人は以下の文章は読まなくていいと思う。ただ、アメリカでは今「デフォルトの可能性」を念頭に置いたチキンゲームが始まっている。






アメリカの下院は共和党が支配している。だが上院の支配権は得られず下院議長選びも難航した。自分達の議席をできるだけ高く売りたいMAGA・フリーダムコーカス系と呼ばれる議員たちがキーになっていた。闘争の結果、議員たちは望むものを手に入れたようだ。

彼らはバイデン政権の政策に反対しており「大幅な歳出削減」を求めている。そんななかアメリカ合衆国政府の債務が上限に達した。イエレン財務長官は「直ちに政府の支出ができなくなることはないが6月までになんとかしてもらいたい」と言っている。これが特別措置を開始するとマッカーシー新下院議長に宣言したという記事になった。

共和党強硬派はこれに応じるつもりはないようだ。債務上限の拡大に応じてもいいが優先順位をつけろと政府に迫っている。議長選挙にも最後まで抵抗したタフな人たちだ。今回もなかなか折り合いはつかないだろう。

ホワイトハウスは債務返済に優先順位などをつければ市場が混乱しかねないと抵抗する。またイエレン財務長官も「アメリカがデフォルトすれば世界経済に壊滅的な打撃を与えかねず、アメリカドルの国際通貨としての信頼性も失われる」と言っている。つまり危険な賭け事はやらないようにと議会に警告している。

もちろん金融市場関係者の中に「現実問題としてデフォルトが起きる」などと考えている人はいないだろう。では、政権側のデフォルトの仄めかしにはどんな効果があるのだろうか。政権は「共和党の強硬派が強いアメリカを毀損しかねない」という印象を与えたいのではないかと思う。国を取り戻すどころか滅茶苦茶にしていると言いたいのである。

民主党寄りのCNNは「債務上限:デフォルトの脅威が増す中で我々が知っておくべきこと」というタイトルの記事を出している。英語の原題(Debt ceiling: Here’s what you should know as threat of default looms)のloomsは「危機が醸成される」というような意味だ。誰が醸成しているかは書いていない。

  • 債務上限は100年以上前に作られ、民主・共和両政権によって100回以上も修正されてきた。つまり民主党バイデン政権が失敗したわけではない。
  • 当初は借り入れを容易にするための措置だったが次第に政治的なゲームに変わっている。
  • 現在設定されている期限は6月初旬だが、確実に6月初旬まで大丈夫とは言えない。
  • 国債の利払、年金の支払い、連邦職員の給料の遅配など影響が懸念されるが、今まで実際に起こったことがないため何が起きるかはよくわからない。
  • イエレン財務長官はこうした悲惨なことが起こるのを防ぐためにさまざまな努力をしている。これを「特例措置」と呼んでいる。
  • 一方でマッカーシー議長が共和党強硬派を抑えることができるのかはよくわからない。共和党の中には「政府がどの支払いを優先するべきか」を議会が政府に指示するべきだという人たちもいる。
  • ちなみに債務上限が拡大と予算の承認は別の問題だ。先月可決されたのは「予算の承認」だ。この結果9月30日(会計年度末)までの政府の運営に対する資金は提供されている。

つまり共和党の強硬派は「政府がどの支払いを優先するのか」について指示することで事実上バイデン政権の選択肢を縛りたい。バイデン政権側はこれを議会の「脅し」と捉えている。脅しに屈服するのは「ひよわな人」がやることであって、ギリギリまで粘り強く交渉するというのがアメリカ式である。

議会ではこのようなチキンゲームが繰り広げられているのだが、そもそも国民が「予算案(これはすでに承認されている)」と「債務上限」の区別がついているかがよくわからない。仮に区別ができていれば「予算を承認する時に一緒に債務上限について決めなかったのはどうしてだろう?」との疑問が湧くはずだがそのような議論は実はあまり聞かれない。とにかく民主党と共和党が何かに対して争っているようだという認識があり、多くの人たちがこの争いに夢中になっている。

おそらく今回の債務上限延長も同じようなゲームになるだろう。ギリギリまで粘った人が勝ちということになる。ただ基軸通貨国の彼らが賭けているのは「世界経済」だ。

いずれにせよ「ヒリヒリした状態で諦めずに駆け引きするのがカッコイイ」ということになっている。バイデン大統領はマッカーシー新下院議長と会談しこの問題について話し合うつもりがあると表明したというのが最新の情報である。「俺は逃げないぞ」ということなのだが具体的な会談計画については触れなかった。要するに現時点では話し合いの予定すら立っていないのである。

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