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陰謀論に煽られた暴徒がブラジル議会などを襲い大勢の逮捕者が出る

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ブラジルで議会襲撃が起きた。以前から危険性は指摘されており「ああやっぱり」という印象を持つ人が多いようだ。アメリカのメディアの論評は二つに分かれているがイギリスBBCが興味深い記事を書いている。アメリカ議会襲撃を煽ったあのバノン氏が関与しているのではないかというのである。陰謀論者に煽られた結果市民たちが大勢巻き込まれて逮捕されたことになる。この件についてのSNSの対応は別れている。手段である表現の自由を守るのか目的である民主主義を守るのかという意見の違いである。

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メディアによって逮捕者の数は違っている。BBCは200名と書いている。「いや300名だ」「400名になった」とする記事もある。なぜこのような事態になったのか。

ボルソナロ大統領はアメリカのトランプ大統領を模倣するような言動で注目を集めてきた。だが一般的には「失敗した大統領」と見做されており左派のルラ氏には勝てないであろうとされていた。ところが大統領選挙では意外に健闘する。結果的に2名による決選投票が行われ僅差でルラ大統領が逃げ切った。なぜ健闘したのかはよくわかっていない。

ボルソナロ氏は敗北を認めなかったが、表向きは非合法的な抵抗運動は「左派のやり口だ」と批判している。一方でルラ氏の勝利は認めず逮捕を恐れアメリカに向けて出発した。現在もどこにいるのかはわかっていないようだ。自分は安全なところにいて推移を見守っているのである。

議会、大統領府、最高裁判所が同時に襲撃されたことから組織的な行動であることは間違いがない。だがその組織的背景は不明である。暴徒たちが易々と国会議事堂などに入り込むことができたことから警察内部に同調者がいる可能性はもある。Bloombergは「警察は催涙スプレーを使用したがデモ隊を鎮圧できていない」と書いているのだが、そもそも鎮圧するつもりがあるかどうかが問題なのだ。つまりどれくらい支持が広がっているのかがよくわからない。

掴みどころなくうっすらと広がる不気味な雲のような今回の暴動事件だが、背景にあるのはやはりSNSのようだ。

BBCが「【解説】 ブラジルで選挙否定派が議会襲撃 トランプ氏の側近らが応援」という興味深いレポートを出している。アメリカの議会襲撃と今回の件が似ていることを根拠に、バノン氏らアメリカの議会襲撃を煽っていた人たちの関与があるのではないかとみている。もちろんバノン氏が直接関与しているという証拠はない。単に情報を提供し行動を促しているだけである。結果的に暴動が起これば扇動した人は面白おかしく推移を見守ることができる。だが特に政治的にトクをするわけではない。

BBCの記事はTwitterの関与についても書いている。Twitterは政治的な主張を持つアカウントを「恩赦」しており、これが今回の火元の一つになっているとみられている。AFPに別の記事「マスク氏「恩赦」のツイッター 陰謀論者らの巣窟に 専門家」によるとTwitterはその他のさまざまな陰謀論者の巣窟になりつつある。大手の温厚な広告主が撤退したためその穴埋めに政治広告の解禁も検討しているようだ。

一方でFacebookはブラジル議会襲撃を賞賛する記事を削除している。確かに表現の自由は大切なのだが、議会生民主主義がめちゃくちゃになってしまえば表現の自由どころの騒ぎではなくなる。単に機械的に表現の自由を守りさえすれば問題が全て解決するというわけにはいかない。ある程度は機械的に見つけるのだろうが最終的な判断は人の手に委ねられるのだろう。

Twitterは極めて危険な火遊びを通じて「表現の自由」に対する付き合い方を学びつつあるようだが、それは煽られた大勢の市民が逮捕されたあとなのかもしれない。時事通信社は「「行動起こすしかなかった」 参加者ら、記者を羽交い締め―ブラジル」という記事で善良な市民を取材している。今回の暴動に参加した人の中には善良だがメディアリテラシーのない市民も混じっているのだろう。「これは大変だ」と考えて暴動に参加した可能性がある。

愉快犯のような人たちがメディアで「なにもかもめちゃくちゃになってしまえばいいのに」とばかりに騒ぎ立てる。ただ彼らは安全なところにいて逮捕されるのは実際に行動を起こした人たちだ。ボルソナロ氏はトランプ氏の教訓を生かし表向きは暴動を否定する側に回っているのだが自分は安全なところに避難しており「火元」であり続けている。政治的信念に基づくのであれば自分達が先頭に立って戦えばいい。だが、おそらくそうではないのだろう。

SNSは危険だ。では既存メディアを信頼すればいいのではないかと思う。だがこれもどこか心もとない。

CNNのようなリベラルなメディアはこれを1月6日の議会襲撃と重ねあわせており「民主主義を覆す危険な兆候である」と批判している。アメリカでトランプ大統領が再び当選すればアメリカの民主主義も滅茶苦茶になるだろうという主張をしたいものと思われる。日本のメディアもこの論調で事件を紹介するところが多い。

ところがそうでないメディアもある。ポリティテコは面白い書き方をしている。ラテンアメリカには左派政権が誕生しておりハイチの大統領暗殺・キューバの抗議活動・ペルーの大統領弾劾とそれに続く混乱など問題が多く起きているとしたうえで「ブラジルの事例は左派政権によって引き起こされた最新の混乱である」と指摘する。ラテンアメリカの当局者はバイデン大統領に「移民というレンズを通じてのみラテンアメリカを見るのではなく、もっとラテンアメリカの状況に注意を払うべきだ」と警告していると言っている。つまり左派政権には統治能力がなくバイデン政権もその一つであるというような印象をつけたいのだ。

ここまでメディアの論調が分かれると人々は何を信じていいかわからなくなってしまうだろう。日本でも「マスゴミは信頼できない」とSNSを鵜呑みにする人は多いがアメリカの状況はもっと極端だ。結局愉快犯たちのオモチャになってしまうのである。

アメリカが緩やかにブラジルの状況にリンクしていることからバイデン政権はこの問題で厄介ごとを抱えることになった。アメリカはロシアからの選挙干渉には極めて神経質なのだが、今回は結果的に火元を匿い情報の発信源になっている。

ボルソナロ氏をこのまま匿い続ければ国際的な批判に晒される可能性も高いがボルソナロ氏が関与したという明確な証明はない。また、ボルソナロ氏は表面的にはこの件に関しての関与を否定しており大統領退任前にアメリカに渡航したことから外交ビザはボルソナロ氏が出国するまでは有効なのだそうだ。

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