ざっくり解説 時々深掘り

12月のアメリカの雇用統計を好感してダウが急反発。FRBタカ派政策解除の明るい兆しになるか?

アメリカの2022年12月の雇用統計の結果を受けてダウが急反発している。FRBのタカ派政策継続によって苦しめられている投資家は良い材料を見つけて積極的に反応しているようだ。このままタカ派政策が継続解除となるのか。このまま株価は回復するのか。関連記事を読んでみた。明るい兆しもある一方で懸念材料もある。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






まず、雇用統計の内容を見てゆく。米雇用者数、22年12月は22.3万人増と堅調 失業率3.5%に改善となっている。経済が再開された結果として急速に労働者の需要が高まった。この結果予期せぬ賃金競争が起きインフレの要因の一つとなっていたというのが大方のストーリーだろう。この需要回復局面が落ち着き失業率が完全雇用状態に近づきつつある。時間当たりの賃金も下がっておりインフレの原因の一つが取り除かれた格好だ。

共同通信は雇用が市場の予想を超えて堅調だったため「タカ派政策の解除に慎重な意見も出るのでは」と書いている。だが、アトランタ連銀の総裁は経済減速の兆候なのではないかと見ている。労働者が増えても賃金上昇さえ抑えられればいずれタカ派政策は解除できるのだから「次は0.25%で済むかもしれない」と楽観的な見方である。良い材料を積極的に探している投資家が好感するのも無理はない。

つまり「タカ派政策解除」とまではいかないが徐々に明るい兆しが見えてきたのではないかということになる。トンネルの向こう側に明るい出口が見えたというような状態である。

現在の市場の懸念はこのままFRBが急激な利上げを継続することだ。これが若干落ち着いたことで時事通信の「NYダウ、急反発 雇用統計受け一時500ドル超高」という流れにつながったわけだ。つまり次が0.25%ならば利上げ継続ではあっても喜ばしい動きなのである。

真っ暗闇の向こうに仄かに光る明るい兆しが見えたとするならばアメリカの投資家にとっては喜ばしいことである。日本の株価もアメリカの影響を受けるため日本の投資家もほっと一息といったところだろう。

一方では懸念もある。景気の減速が市場の予想を超えて進んでいる可能性がある。元々株価を支えているのは成長期待なのだから経済そのものが冷えてしまっては元も子もない。「トンネルを抜けたら不景気でした」では話にならないのだ。

次のイベントはCPIとされている。ここで予想を超えて景気減速が観測されればまずは為替には大きな影響が出そうだ。ドルじり高か、米CPI下振れなら波乱=来週の外為市場という記事がロイターから出ている。

ではこれはどのようなロジックなのか。

ここで指摘されているのは黒田総裁の12月末の「事実上の利上げ」発表は驚きだったがやや円高に進みすぎた可能性だ。黒田総裁は新しい上限を設定したが2週間で上限に達してしまった。次のサプライズでもないかぎりこのまま「事実上の利上げ」期待はしぼみ年末のサプライズによって生じた期待は修正されるだろうと見ているようだ。

つまりこのままでは円安が進行するという見立てである。ただしFRBの政策が効きすぎ市場予測を上回る景気減速があれば「ドル急落」という可能性も捨てきれないというのが現在の予測である。

もう一つの懸念材料はアメリカの労働市場の構造だ。冒頭のロイターの記事によると業界によっては人手不足が続いているようである。仮にこれが社会の中枢を支える比較的低賃金ではあるが熟練を要する労働者の空洞化を示しているとすると中長期的には大きな問題になりかねない。

おそらく南米などからの移民の流入で低賃金・低熟練労働者は足りているはずだ。一方でコロナ禍で現役引退を早めた労働者も多くいる。仮に彼らの穴が埋まらなければ労働力の空洞化が起こる可能性がある。

人々の頭の中は「いつタカ派政策が終了するのか」ということでいっぱいだろう。おそらく労働市場の構造変化について心配している人はほとんどいないのではないか。労働市場の内容について詳しく議論している記事はなかった。

アメリカの議会は依然下院議長が決まっていない。議会が停止していても予算への影響があるわけではないのでしばらく影響は出ないだろう。だが、議会の機能不全が続くだろうという予測になればアメリカ経済にとっては悪材料となることだろう。

2022年の市場動向はFRBの金融政策に左右されてきた。だがこれは「少なくとも議会がねじれておらず政治は安定的に動いているから」こそのことだった。FRBが見通しを立てられないなか、議会もどうなるかわからないという不安が市場に定着すれば状況は変わってくるものと思われる。アメリカの政治動向にも注目が必要だ。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です