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「次の日銀総裁はもしかすると女性なのでは?」報道

なぜかデイリー新潮が「次の日銀総裁は女性になる可能性がある」と報道している。岸田総理が日銀人事に関心を示しているのだという。「岸田さんはこれまで関心がなかったのか」と思った。さらに「まだ決まっていないのか」とも思った。記事を詳しく読んでゆこう。

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第一に「日銀総裁人事」に岸田総理が関心を示しているとしたら岸田総理の感覚は「正解」だろう。このブログでも黒田総裁に関する記事は多く読まれる傾向がある。安倍総理時代には露呈しなかった「コミュニケーション下手」というマイナスの資質が表に出てきてしまったことが原因なのだろう。年末にはTBSが黒田氏の「家計は値上げを許容」発言を蒸し返していた。金融市場とコミュニケーションが取れず上級国民として国民生活に理解がないというのが一般的な黒田氏のイメージだ。黒田さん自身が変わったわけでは全くないのだが、安倍政権時代とは評価が全く変わってしまっている。

デイリー新潮の記事は非常に生々しい。これまで岸田総理は日銀総裁人人は興味がなかったと書いている。増税ように興味を示す分野とそうでない分野の乖離が激しい人なのだということがわかる。これまで日銀総裁人事は岸田氏には「どうでもいい」トピックだったということになっているようだ。

確かに日銀総裁は金融市場や一般とコミュニケーションが取れる人が望ましい。実際にBloombergがエコノミストに聞いた結果は「副総裁候補(総裁ではなく)」に翁氏を上げる声が大きかったそうだ。総裁はこれまでの慣習通りに決まったとしても「副総裁にはコミュニケーションが取れる人がいいのではないか」という期待があることがわかる。

さらに12月には木原官房副長官が「女性の可能性も(一般論としては)ありますよ」と発言しているそうである。探せばいろいろなところに布石があり「火のないところに……」というわけでもないのだということはわかった。

ただし男性社会特有の女性蔑視も垣間見える。

まずBloombergの調査だが「世界的な潮流だから女性も入れるべきだ」となっている。実力で選ぶと結果的に女性が入ってしまうというわけではなく「なんとなく男ばかりでは格好がつかない」という程度のジェンダー意識に留まっている。

デイリー新潮は「スカーフ姿など、華のある情勢候補たち」という写真で日本総研の翁小百合氏を紹介している。一般企業で「他の社も取締役会に女性を入れているみたいだから」とか「女性の方がコミュニケーションが上手だしスカーフがあって華がある」などと発言すれば女性を軽視していると思われかねないが、政治報道の世界ではその手の女性蔑視が常識として流通しているようだ。

財務省関係者は何を考えているのだろうか。ミスター円として知られた榊原英資氏は「元副総裁の雨宮正義氏と中曽宏氏が最有力候補」としている。榊原さんは過去にも盛んに次期日銀総裁議論に「参戦」してきており、おそらく財務省界隈は「既定路線で行ってほしい」「慣例は踏襲してほしい」と考えているのだろうということがわかる。

2017年にも榊原英資氏は「黒田総裁は中継ぎで本命は雨宮氏だがいきなり総裁にはできないので副総裁として経験を積んでいるのだろう」というような独特な言い方で財務省の狙いを代弁していた。財務省のいうことをよく聞いてくれる「日銀生え抜き」が好ましいと財務省は思っているようだ。あくまでも財務省・日銀コミュニティというものがあるということがわかる。

今回の議論はまるで鎌倉時代以前(つまり平安時代)の貴族社会のようである。何をなすべきかということが議論されるわけではなく人事を通じて影響力を誇示したいという人たちがそれぞれの思惑でさまざまな議論をしている。これはNHKの次期会長人事でも見られた問題だ。資質ではなく「俺のいうことを聞いてくれそうな人」が好まれるのである。

その最新の観測が「女性なら華があってコミュニケーションも上手なのではないか」という観測だということになる。

人事自体は決まる時には決まるだろう。このニュースの一番の驚きは「まだ本命になる後任がいない」という点にあるのかもしれない。「慣例通りに日銀出身者がいい」とか「女性は華があってコミュニケーションも上手そうだ」などという話ばかりが語られ「誰が日銀総裁になればこの南極を乗り切ってくれるのか」というような議論がほとんどない。

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