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ベネズエラでグアイド「暫定政権」が崩壊。行き詰まるアメリカの対ベネズエラ政策。

ベネズエラでグアイド氏が率いる暫定政権が崩壊した。背景を調べるとバイデン大統領の政策変更が影響しているようだ。バイデン大統領がベネズエラとの関係を見直した結果、合衆国が支援した「政権」が崩壊したことになる。バイデン大統領はトランプ政権が凍結した政府資産の問題とベネズエラの移民問題という二つの問題を解決する必要がある。

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この記事を詳しく読むと「暫定政府」と鉤括弧付きで書かれている。つまり「なんちゃって」政権の「なんちゃって」大統領だったというような意味合いになる。つまりこの「暫定政府」はすでに詰んでいたことになる。

話は2019年のマドゥロ大統領の2期目から始まる。ベネズエラの政権は反米左派政権だ。大統領の再選に対抗して当時多数派だった国会議長が「自分こそが大統領である」と宣言しアメリカがこれを支援したというのが図式である。つまりトランプ政権は反米政権排除のために内部の権力闘争を利用したのだ。

実は現在もマドゥロ氏が大統領である。さらにマドゥロ氏が率いる与党は国会でも最大議席を奪還した。つまり現在はマドゥロ氏側が与党ということになり「暫定政府」の正統性の拠り所だった多数派という事実もなくなっていた。2020年の選挙で野党連合が敗れ向こう5年はマドゥロ氏側が国会を掌握するとJETROの記事には書かれている。

アメリカはこの反米左派政権を嫌いトランプ政権時代に政府資産を全凍結し国会議長側を支援した。資産凍結でベネズエラの内政に干渉したのだ。よく中国がアメリカに対して「内政干渉だ」と非難することがある。実際にアメリカは経済制裁を通じて第三国の内政に干渉するようなことやっていることになる。問題はこのことが良いか悪いかではない。それが有効かそうでないかだ。

こうして誕生したのがアメリカが支援する「暫定政府」である。ところがバイデン政権になって状況が変化した。国内の石油産業との対話がうまくゆかなかったバイデン大統領は産油国ベネズエラとの関係改善に乗り出す。マドゥロ政権と野党の対話がメキシコで行われた。さらに資産凍結解除に向けた動きも再開していた。

自由と民主主義を標榜する民主党のバイデン政権としてもいつまでも不法にベネズエラの資産を凍結するわけにはいかなかったのだろう。国会でもマドゥロ派は多数になっている。つまり民意はマドゥロ派を支持していることになる。つまりアメリカの介入も2020年の総選挙時点で根拠を失っていたのだ。

このようにマドゥロ派と野党が対話を始めてしまうと「マドゥロ氏の対抗馬」として存在していたグアイド氏に居場所はなくなる。結果的に「暫定政権」は崩壊しグアイド氏は退場させられることになった。

アメリカ合衆国の対外政策は常に場当たり的だがバイデン大統領の外交下手はすでに周知のもののになっている。この先バイデン政権がマドゥロ氏と対話をして石油を分けてもらうのか、あるいはそのまま対決姿勢を維持するのかに注目が集まる。マドゥロ氏から見れば自分たちを潰そうとした国ということになる。あまり友好的な関係は期待できそうにない。

ではこの介入はいい介入だったのか悪い介入だったのかということになる。これは悪い介入だった。ベネズエラから多くの人が逃げ出している。向かう先はアメリカ合衆国である。実際には経済移民だがアメリカ合衆国はベネズエラの政府に反対してるのだから「政治的亡命から保護してもらえる」という期待が生じてしまうのだ。

つまり、バイデン大統領はベネズエラがらみでもう一つ難民問題という懸案を解決しなければならない。政治の側は「凍結された政府資産」の扱いに熱中している。ベネズエラの民主主義に絶望した国民が次々と国を捨てる選択をしている。民主主義に絶望した人々は危険な中米地峡とメキシコを北上し「ベネズエラ移民の雪崩」を引き起こしている。

バイデン大統領はこの雪崩を食い止めるためにメキシコに依頼して一部の移民を引き取ってもらうことにした。さらにコロナ対策を言い訳にしたタイトル42という政策は裁判所の仲介によって「暫定的に維持されている」状態である。バイデン大統領はこの猶予期間の間に新しい対策を講じる必要があるのだが、その目処は全く立っていない。

いろいろな意味でアメリカ合衆国の対ベネズエラ政策は「詰んでいる」のだがバイデン政権は現実的なさまざまな問題を残りの任期でかいけつしなければならない。

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