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政治と若者の狭間でNHKが頑張れば頑張るほど嫌われてしまうのはなぜか?

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たまたまNHK会長が出演する「会長ラジオ」という番組を見た。第三回目のテーマは「みなさんに届く番組を目指して」だ。NHKは若い制作者を起用してさまざまな番組を制作していると会長は主張している。これが少し痛々しく感じられた。アピールすればするほど嫌われてしまうことが分かりきっているからである。ここで改めて「NHKはなぜ嫌われるのか」を考えてみた。原因はおそらく若者を利用したいという魂胆が見抜かれているからである。

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前田会長はみずほファイナンシャルグループの出身である。放送業界の経験はない上に1945年の生まれである。おそらく前田会長にできることは少ないだろう。

前田さんの前の会長は特定の層からの評判が実に悪かった。政治に忖度しているということを隠さず広報に徹したからである。安倍政権を嫌っている人たちからは今も嫌われているに違いない。ちなみに次の理事長は日銀出身者になるそうだ。こちらはもっと大変なことになっている。前田さんと近い人を次期会長にしたくない政府・自民党サイドが「前田さん以外なら誰でもいい」と動いたようだと東洋経済が書いている。

前田氏は政治とのしがらみを嫌い自民党や官邸に相談することなく話を進めようとしたために「とにかく前田人脈はダメだ」と言うことになったらしい。近所の自治会の会長選挙のような感じで「好き嫌い」によって人事を決めているのだ。

批判ばかりを展開しても面白くないので、今回はまず成功事例から見てゆこう。

若者にコンテンツを浸透させるために重要なのがペネトレーション戦略である。一般的には安価な製品やサービスを提供することが重要だとされる。成功例は二つある。一つが音楽好きをターゲットにしたiPhoneでもう一つがYouTubeで浸透したK-POPだ。どちらも若者に憧れさせる戦略をとっている。この「憧れの対象」を可視化するためには間口を広げる必要がある。そこで比較的安い値段で裾野を広げる浸透戦略(ペネトレーション・ストラテジー)という戦略が採用される。

「廉価(安い製品やサービス)」は目的ではなく手段だ。ここを勘違いして失敗した事例にRakutenモバイルがある。iPhoneは音楽が好きで限られたお小遣いの中でたくさんのいい音楽を聴きたいと言う人に訴求したのだが、Rakuten Mobileはとりあえず安いものでいいやと言う人をターゲットにして失敗した。つまり、ペネトレーション・ストラテジーは「廉価でサービスを提供すればいい」と言うことではないというのがよくわかる。

登場した当時のスマホは「なんだかよくわからない」特殊な携帯電話に過ぎなかった。また、K-POPや韓国コスメが登場した当時の韓国文化や韓国製品は日本版の劣化版コピーのような扱いだった。ところが消費に意欲的な層に刺さったことで「単価は安いがボリュームがある」層を取り込むことに成功した。憧れを利用して「自ら選びたくなる」ように仕向けたことで大きなヒットに結びついた。

若年層は学校を通じて仲間との連携が強い。一見繋つながっているようでいて一人ひとりが孤立しておりそもそも可処分所得が少ない社会人層や新しいものが受け入れられなくなっている中高年とは違った活発な消費者だった。

一般的に人々は操作されるのを嫌う。ソフトバンクは最先端のイケているカルチャーを知っている人々に浸透することでiPhoneを成功させた。韓国コスメの牽引役になったのもYouTubeなどで露出している韓国アイドルだった。一方でRakuten Mobileはゲーミフィケーション手法を使って無料やオトクが好きな人を操作しようとして嫌われ続けている。

ではNHKはどうなのか。NHKの現在のイメージは「押し売りおじいさん」である。

東洋経済に「NHKは若者から強制サブスクだと受け止められている」と書かれている。つまり、NHKは若者受けのサービスを追求しようとすればするほど「いらないサービスを押し付けられている」として嫌われる宿命にある。おじいさんが「今時の若者はこういうのが好きなんじゃろう」と送ってくるものが「なんか違う」となりがちなのに似ている。

前田会長は「NHKは若手制作者にチャンスを与えている」と言っている。残念ながらこれが老人の自己満足にしか見えない。出てくる製作者は「誰これ?」というような人たちばかりであった。いわゆる中の人なので当然といえば当然だ。しかし、前田会長が「インフルエンサーを利用したバズる仕組み」を考えられるはずはない。そもそもそういう経歴の人ではない。

前田さんが若者アピールに走らざるを得なかった理由はおそらく政治から睨まれてしまったからだろう。冒頭の東洋経済の記事に戻る。

前田会長と政府自民党の決裂が決定的になったのは菅元総理の肝入りだった「NHK値下げ」に前田さんが従わなかったからだそうだ。「携帯電話が安くなります」とか「NHKが安くなります:と訴求すれば自民党の人気取りができると考えた政府が前田さんに値下げを押し付けようとしたのだろう。1000億円の減収になるということで前田さんは衛星放送の値下げだけでまとめようとして「嫌われた」のだそうだ。

そもそも自民党はNHKを単なる選挙の道具としか見ていないことがわかる。ここで追い込まれた前田さんは若手を起用して「アピってみた」のだが全く刺さらなかった。さらにアピればアピるほど「なんか違うよね」となる。紅白歌合戦のラインアップでは「若者に媚び過ぎている」というネガティブな評価まで出てくる始末だ。

いずれにせよ若者は単に「まだ自分達を支持してくれていない人たち」としてしかみられていない。おそらくこれがアピればアピるほど嫌われる原因なのだろう。結局彼らが何を見たいのかには誰も関心を持っていないのだ。

そもそも押し売りである以上一定の値下げをしたからといってNHKが好かれることはないだろう。

若者のエンターティンメント環境は「好きなものを選ぶ」ように変化している。おそらく好きなものにはお金を注ぎ込むだろうが「空気のように当たり前に存在する」ものに投資したいとは思わないはずである。皆様に一般的な常識を広めるべきNHKが目指すにふさわしいターゲットなのかはもう一度考えた方がいいのではないかと思う。

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