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手っ取り早く2022年末の日本政治がわかるかもしれない3つのポイント

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そろそろ2022年を総括するというような番組が増えてきた。だが色々あり過ぎて何を見ていいかわからないという人もいると思う。ポイントになりそうなものを3つだけ集めてきた。なお「来年のことを言うと鬼が笑う」というので2023年の予想はやめておく。

トピックは、国民民主党の取り込み基金と保険住宅ローンの3点である。

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麻生・茂木ラインが国民民主党の取り込みを狙う

どうやら麻生・茂木ラインが国民民主党を狙っているようだ。「連立政権構想があった」としている記事がいくつかあった。東洋経済によると支持母体の「連合」が狙われているようだ。結局連合が乗らなかったことでこの構想は完成していない。

狙いは二つありそうだ。

一つは自民党の表にいる吉田茂や池田勇人に連なる「名家」の出身者たちが自民党の政治を取り仕切るべきだという世襲貴族主義と実際に政治を裏回ししてきた地方議会出身の二階俊博氏や菅義偉氏らの実力者との潜在的な対立構造である。ただし「名家」の側の人たちは地方政界出身の大物政治家(菅義偉・二階俊博)に依存せざるを得ない。自民党と公明党の関係は地方政治の選挙協力で成り立っている。つまり細かい陳情関係がある限り地方政治に依存し続ける必要がある。このため、細かく地方に張り巡らされてきた人脈を作ってきた人たちの方が有利なのである。

もう一つは高齢化が進む創価学会や宗教票に代わる「労働組合」という新しい票田の切り崩しである。創価学会の活動を熱心に支えてきた第一世代が減少している。集票力の減少につながるため「自民党を支える新たな票田が必要」と考えるのは無理もない。これは野党側にも同じことが言える。これまで盤石と思われてきた共産党だが赤旗を縮小している。

全体としては政治離れが進んでおり、少ない組織票をめぐって水面化で駆け引きが続いている。おそらく現在の政治の一番の問題は政治不信ではなく政治離れなのだろう。

防衛と子育てに基金と保険

おそらく現役世代が政治に興味を持てないのは自分達向けの政策が実現しないからだろう。仮に現役世代に優しい政治が進めば与野党共に支持層を拡大することができるはずだ。ではそれができているのかというのが次の課題になりそうだ。

ここで注目したいのが基金と保険である。

2022年末は「防衛増税」議論で揺れた。だが、実際にはやりたいことと財源がセットというペイゴー(PayGo)原則が導入されようとしている。この財源をどこから持ってくるのかを見れば政治が誰に負担を背負わせようとしているのかがわかる。

防衛費の次の課題は子育てになりそうだ。ここで小泉進次郎氏が提案していた「こども保険」というアイディアも復活するのではないかと言われている。つまり財源を税ではなく「保険料」にしようというのだ。少なくとも小泉進次郎氏の提案していたこども保険の担い手は現役世代である。企業と労働者を保険に加入させて財源を確保しようとしていた。

NHKは「連帯基金」と報道している。日本の子供が少ないのは現役世代が頑張らないからだと政府は考えているのだろう。だから「連帯責任」を追わせようとしているのである。

仮にこれがうまく使われれば「社会全体で子育て費用を負担する」良い制度になる。ただ、年金など過去の例を見るとこうした保険や基金は「政治家の打出の小槌」として利用されただけでそれが破綻した時にはもう誰も責任は取らなかった。年金基金で作られたグリーンピアが最終的に民間に安値で買い叩かれたことを記憶している人も多いだろうが「安倍政権以前のことは知らない」という人も増えているかもしれない。

防衛費も財源として「余剰金を溜め込んで基金化しよう」という動きになっている。これも有効に使ってもらえれば問題はない。だが基金として本予算と切り離してそれを好きに使いたいと考える政治家が多いのもまた確かだ。増税分は法人税や所得税に「うまく混ぜ込む」方式が検討されている。

一つひとつは軽微なのだがそれが集まると現役世代にとっては重い負担になりそうだ。「将来利権になりそうな箱」を作ることは決まった。あとはそこにどう水を流し込むかという話になっているが、実際にどこから水を持ってくるのかという議論は一年間先送りにされた。2023年末に同じような議論が聞かれるはずである。

「我田引水」の諺通り基金制度は作った政治家が潤うように設計されることが多い。年金基金の例を取ると「後のことは後の政治家が考えればいい」ということにされ結局誰も責任を取らなかった。

住宅ローンの金利上昇

住宅ローンの金利が上昇すると言う動きがある。金利上昇も問題なのだがむしろ「この先何がどうなるかがよくわからなくなっている」点の方が深刻だ。日銀は政策変更をしていないのだが金融市場が「勝手に長期金利を上げる」というよくわからない動きになっている。

ではなぜこんなことになってしまったのか。

ポイントは黒田総裁の個人的な資質である。黒田総裁が財務省を退官した時の記録が見つかり共同通信で報道された。速水総裁のやり方に疑問を持っていたようだ。黒田さんは「日銀と財務省がリードすれば日本を再び成長軌道に乗せられる」と自分の実力を過大評価していたようである。だがこの目論みは達成できなかった。

結局黒田さんは「当局が金融市場を善導する」というかつての護送船団方式の意識が抜けなかったようである。当局が守ってやっているのだから黙って従えばいいとばかりに市場とのコミュニケーションを徹底して軽視してきた。

このため金融市場と日銀の信頼関係は損なわれてきた。今回黒田総裁が「政策が変わったわけではない」と力説しているにもかかわらず市場が勝手に動いたのはもはや市場が日銀総裁のいうことを信頼していないからなのだろう。ロイターを読んでいるとこの「市場とのコミュニケーションの不足」というキーワードがよく出てくる。

伝統的な金融理論や常識が通用しないためおそらく今後先行きが不透明化するのではないかと思われる。つまり何が起こるかよくわからなくなっている。

次の日銀総裁は黒田氏のある種の傲慢さによって選択肢が狭められることになる。また黒田氏が損なった市場との対話を再開させる必要もあるだろう。次の日銀総裁がなかなか決まらないと言われているようだが、かなり難しい金融政策運営を迫られることになりそうだ。

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