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カタールゲート:EU議会副議長エバ・カイリ氏が解任され自宅から多額の札束が見つかる

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このところ、民主主義の破綻と言うニュースを扱うことが多い。今回テーマとして挙げるのはEUの副議長らが汚職で逮捕されたという事件だ。ワールドカップカタール大会に絡んだ汚職事件だと言われている。日本ではあまり報道されていないがヨーロッパではカタールゲートなどと報道されているようだ。カタールゲートで検索するとルモンドの記事が見つかった。ただしヨーロッパのメディアはこの問題を大きく取り上げておりヨーロッパの民主主義がかろうじて守れていることがわかる。

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ベルギー警察はギリシャ選出のエバ・カイリ氏を含む4人を汚職容疑で逮捕した。

ワールドカップサッカーによってカタールの人権状況が問題になっていた。スタジアム建設で大勢の死者が出ている。イギリスのメディアは6,500人が亡くなったと報道する。ところがエバ・カイリ氏はカタールを弁護する発言を行い疑惑が持たれていた。エバ・カイリ氏はEU議会に14人いる副議長の一人だったが今は解任されている。

なお、カイリ氏は容疑は否認している。なおベルギー警察はこの湾岸国がカタールだとは公表していない。マスコミに名指しされたカタールも容疑を否認している。

エバ・カイリ氏らは容疑を否定しているが関係者の自宅からは多額の現金が見つかっているそうだ。ベルギー警察は家宅捜索で押収した札束をこれ見よがしに公表した。このショッキングな映像は世論の注目を浴び「カタールゲート」と報道されるようになる。これを見ればエバ・カイリ氏らがカタールの状況を弁護して「おいしい思い」をしていたのは一目瞭然である。

当初このニュースはそれほどの騒動にはなっていなかった。EU議会が腐敗していることは周知の事実だったとCNNは指摘する。

だが札束が出てきたことでようやくカタールゲートとしての広がりを見せるようになった。

EUはどこの国にも属していないためマスコミからの監視をあまり受けていない。政治家が説明責任を果たすべき国民が存在しないからだ。このためやる気になればいくらでもやりたいことができる環境になっている。

つまり国際組織であるEU議会はマスコミ監視網の抜け穴になっていた。

ヨーロッパを中心に組織されたIOCやFIFAなどの国際的なスポーツ団体も同じような構造だ。権限と予算を持ち説明責任を果たす「国民」を持たない組織は必ず肥大化し腐敗すると言ってもよいだだろう。

FIFAそのものもカタールとの後ろ暗い関係を指摘されているがインファンティーノ会長は意に介さない様子だ。ヨーロッパのファンたちも表向きは人権を気にするだろうが勝ち進めば勝ち進むほど勝負に夢中になり細かいことを忘れてしまうとよくわかっているのだ。

日本のオリンピックでも広告代理店全般に談合疑惑が広がった。IOCにも同じような体質があることがわかる。だが日本のマスコミは政治家の管理責任について追求することはなかった。記者クラブ体制によって政治から守られておりことを荒立てたくないという気持ちがあったのだろう。

だがIOCはかなりこの件について真剣に受け止めているようで選定プロセスを延期している。「ほとぼりが冷めるのを待っているのだろう」と言う気もするが、共同の記事は「招致できる都市が少なくなっている」と指摘している。寒い国は限られており民主主義が発達した国が多い。そもそものビジネスモデルが成り立ちにくくなっている可能性がある。

再選を狙う札幌市長は透明性の確保を約束している。札幌市長の一存で透明性が増すようには思えないがこのままでは札幌招致は難しいだろう。地元住民の支援が得られない。

今回のカタールゲートにおいてヨーロッパのメディアはかなりうまく機能しているようだ。当局の発表を待たずにさまざまな報道を行っている。

もちろんマスコミが機能しなくてもそれなりに抵抗を示す手段はある。

中国ではウイグル人が大勢火事で犠牲になった事件がきっかけになり暴動が起きた。主導したのはゼロコロナ政策に反発した学生たちだ。いつの間にかウイグル人のことは忘れ去られ、当局はゼロコロナ政策を放棄した。ただゼロコロナ政策を放棄した結果今度は大勢の死者が出るだろうと言われている。民衆は大衆運動を通じて政策を変えることができる。だが、その後の代替案を提案することはできない。

例えばトルコでは多くの国民が国の将来について否定的な見方をしている。だが直接的なエルドアン大統領への抗議運動はそれほど目立っていない。政権に批判的なメディアが排除されており国民の意見集約が進まないからだろう。

同じような構造がロシアにもある。プーチン大統領の一方的な軍事侵攻はロシアの経済に大きな被害を与えている。だがロシア国内で目立った反戦の動きはない。ウクライナの軍事侵攻がうまく行っていないのも「軍の指揮官たちが無能なため」との説明がなされることが多いそうだ。

ペルーでは暴動が起きている。主役になっているのはこれまで政治的に脇役だった貧しい人たちのようである。今回初めて自分達の代表と呼べるような大統領が出た。貧困層は自分達の境遇を課せ合わせ「大統領が議会にいじめられている」と認識したようだ。さらに中南米の左派政権の中にも「前大統領の復権」を求めるリーダーがいる。しかしながら民衆は落とし所を提案することはできない。ペルーの情勢は今も不安定である。

このようにマスメディアは問題を追求するだけでなく「その後国がどのような進路を取るべきなのか」を建設的に提案する機能を担うことができる。

ただメディアが健全に機能するかどうかは受け手次第である。つまりマスコミの呼びかけを真剣に受け止めるかどうかは受け手である国民にかかっている。今回は自宅から押収されたとされる札束の入ったスーツケースが大きなインパクトを与えたようだ。

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