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旅行者も帰ってこれないというペルーの混乱

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マチュピチュのあるペルーから旅行者が帰ってこれないというニュースがあった。このニュースを見てなぜ突然こんなことになったのかと感じた人は多いだろう。実はかなり継続的な混乱なのだが「地球の裏側」の出来事なので突然降って沸いたように感じられてしまうのだ。背景にあるのはやはり民主主義の問題だ。

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まず、今回の報道にはかなり違和感がある。ペルーで国民が怒っていて死者がたくさん出たと言う話になっている。死者の数は徐々に増えており最新の犠牲者の数は15人である。だが「なぜ人々が怒っているのか」についての報道はない。

これについて「なぜペルー人が怒っているのか?」で検索してみた。見つかったのはガーディアンの英語版の記事である。アンデス地方の貧しい農村部にはカスティジョ大統領に親近感を持っている人たちが多い。彼らはカスティジョ大統領を自分達の代表者だと感じていたのだろう。政治的に難しいことがわからない彼らはカスティジョ大統領が汚職にまみれているとは思いたくない。むしろ被害者だと思いたいのだ。

さらに同じスペイン語を話す左派政権の国々がカスティジョ大統領の復権を求めている。外国とはいえ同じスペイン語圏の指導者たちが「カスティジョこそ犠牲者だ」といえば当然そちらの方を信じたいと言う気持ちになるだろう。ガーディアンは政治的には不安定だが経済的には安定していたというペルーのパラドックスは過去のものになるかもしれないと言っている。ついに黙っていた人たちが「やはり自分達は被害者である」と自覚するようになったのだ。その結果起こったのが暴動である。

天然資源を国有化してペルーの富を国民に分け与えるというカスティジョ大統領が当選したのは2020年だった。ペルーには全国政党がなく個人商店的な政党が乱立している。このため大統領は議会と衝突する運命にある。また政治が十分に透明化されていない。こうした事情があり政治に不慣れだった大統領本人や閣僚らも汚職に手を染めるようになっていったようだ。

JETROがIPSOSSの調査を紹介している。既得権が侵害されることを嫌がる議会は大統領の排除を目指していた。だがその議会が全く信頼されていない。2022年夏時点での支持率は14%だったそうだ。

ペルーには憲法秩序と形式的な民主主義はある。だがその民主主義は機能していない。そもそもペルー国民が一体となって支持できる政治的固まりが存在しないからである。

最初の弾劾はかろうじて否決されたがその後も疑惑はなくならなかった。3回目の弾劾は避けられないとなった時にカスティジョ大統領は起死回生の策に出た。政治経験が乏しいカスティジョ氏は「議会を解散すればいい」と考えたのである。小学校の先生から労働運動の指導者になったカスティジョ氏は気がつかなかったのだろうが国内外で「これはクーデータだ」ということになった。おそらくそれほど計画的なものではなく軍と警察は追随しなかった。大統領はメキシコに逃亡しようとしたが結局大使館にたどり着くことはなく逮捕されてしまう。国外逃亡の恐れがあるとされており最新の情報では18ヶ月の勾留延長が決まったそうだ。

その後大統領の地位を継承したのはボルアルテ副大統領だった。任期満了まで務めるとしていたが国民の怒りは収まらなかったようだ。結局大統領選挙を前倒しするということになりそうである。現在ボルアルテ大統領が提案しているのは2023年12月だがそれでもまだ1年間ある。

いずれにせよ「国民」の怒りは収まらなかったようだ。各地でデモは続いており、鉄道は無期限のストライキに入っている。NHKによると抗議運動では7名の死者が出ているそうだが、日経新聞では8名になっている。冒頭に書いた通り時事通信の最新情報では15人の死者が出たと書いている。つまりペルーは今も燃え続けている。

中南米には左派政権が多く4つの国が「カスティジョ氏こそが犠牲者である」と復権を呼びかけている。こうした外からの働きかけが抵抗運動にとっては追い風になる。現在、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、メキシコが新しい大統領を信任していない。

おそらくペルーにはこれまでも憲法秩序と言う形式的な民主主義は存在したのだろう。だが民主主義は憲法によってのみ作られるものではない。これまで政治的な権利を主張するだけの意見集約ができなかった貧しいペルー国民たちは「大統領がいじめられていると外国の指導者のも言っている」と理解したのだろう。JETROによると暴動は8州15県1地区に広がっていると書かれている。ペルーの行政単位は24県・1特別区だとするものが多い。この区分だと県の下の行政単位は郡である。

おそらく選挙をやり直しても議会と大統領の関係が改善することはないだろう。前回の選挙ではケイコ・フジモリ氏が対抗馬だったため今回も有力な候補になるかもしれないがフジモリ氏にも汚職の疑惑がある。

遠く離れたペルーの出来事ということだったので日本ではそれほどニュースになっていなかった。今回「あのマチュピチュのあるペルーから帰ってこれない」ということでようやくニュースになった。

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Comments

“旅行者も帰ってこれないというペルーの混乱” への1件のコメント

  1. ブラジルのリオデジャネイロの空港✈️離着陸に見るキリスト像はみものだ。ロープウェイて登る事も出来る。