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エルドアン大統領のかなり露骨な政敵潰し

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イスタンブール市長が有罪判決を受けたというニュースがあった。判決は政治活動の禁止だった。エルドアン大統領が政敵を潰そうとしているのだろう。だがアメリカもヨーロッパもこの露骨な政敵潰しを表立って批判できない。エルドアン大統領はロシアとNATOの間を器用に渡り歩いておりNATOの結束のためにはトルコの協力が必要なのだ。トルコは北欧二カ国のNATO入りをまだ承認していない。

その犠牲者は明らかにトルコ国民だ。トルコ経済は制御不能なインフレに苦しんでいるが出口は見えないままである。

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エルドアン大統領と大統領が率いる政党AKPは国民からの強い支持を背景に政権基盤を充実させてきた。宗教と政治が分離されてきたトルコで「イスラム伝統への回帰」を全面に押し出してきたからである。一方で露骨な政敵潰しやメディアの弾圧なども行っていたようである。

AKPにはCHPと呼ばれるライバル政党がある。絶対的な優位を誇ってきたエルドアン政権だがこのところ支持が伸び悩んでいた。原因はトルコの経済運営の失敗だ。トルコはリラ安とリラ安によってもたらされたインフレに苦しんでいるが不況を恐れるエルドアン大統領は頑なに低金利政策に固執している。2021年の10月にはエルドアン大統領に逆らった中央銀行総裁らが更迭された。

この結果、トルコのインフレはほぼ制御不能と言っていい状態に陥っている。

最新の世論調査では「トルコは間違った方向に進んでいる」と考えトルコが直面している問題は経済だと答える人が急増している。アルモニターという世論調査会社が994名に8月30日と11月30日に調査をしている。

独裁者となったエルドアン大統領は自分の考えに逆らう人たちを更迭しメディアも粛清した。2016年にはクーデター未遂が起きたとして敵対勢力のギュレン派の公務員たちを粛清し、関連するメディアから免許を取り上げている。

2022年11月にはイスタンブールの繁華街でテロ事件が起きた。手回しよくシリアで訓練を受けたクルド系が摘発されその後にシリアとイラクに対して空爆が行われている。テロの報復と考えられるが、国民に対してトルコの治安を守っているのはエルドアン大統領なのだと思い起こさせる意味合いがあるのだろう。

NATOとロシアの間をうまく渡り歩き近隣国に広がるクルド人を叩いている。このためトルコ国民の中には経済運営に疑念を感じつつもAKP支持をやめられない人たちが大勢いるようだ。自分達の国は間違った方向に進んでいると思いつつもそれが修正できないと言う状態になっている。

さらにエルドアン大統領はバラマキ政策を実施し支持率を上昇させた。2023年度予算は補正を含み2022年比で70%増しとなる。ただしこれだけ財政支出を増やしてもエルドアン人気は6月までは持たないだろうと言われているそうだ。つまり予算を増やしてもその効果は長続きしないということになる。

経済に行き詰まりつつも軍事・外交でなんとか凌いでいると言う状態のエルドアン大統領だが今度は「政敵を潰してしまう」という作戦に出たようだ。

イスタンブールのイマモール市長の罪状は「選挙管理委員会を侮辱した」ものなのだそうだ。禁錮2年7ヶ月と政治活動の禁止が判決だという。イマモール氏は当然ながら上訴すると言っている。イスタンブールでは数万人規模の大規模講義集会が行われたそうだが全土に広がったと言うニュースは入ってきていない。2021年12月の記事ではイスタンブール市はインフレ対策として安いパン売り場を提供していると紹介されている。難しいことはよくわからないが生活を助けてくれる政党がいい政党という理解なのだろう。この結果AKPの支持率が下がり、AKPが「インフレ対策」を発表すると支持率が戻ると言うような状態になっている。

メディアの意見集約がないため人々は「生活実感」でしか政治の良し悪しが判断できない。短期的には財政出動でなんとか凌げるものの持続性はない。民主主義の安定のためには健全なメディアが必要だと言うことがよくわかる。

NATOは北欧二カ国の加盟を承認したいためトルコをあまり怒らせたくない。トルコはこのカードもできるだけ有効に使うつもりのようだ。承認を引き伸ばしつつ政治的カードとして使っている。アメリカもEUも失望や懸念は表明したもののエルドアン大統領を非難する声明にはならなかった。ヨーロッパとアメリカは「民主主義との戦い」をやっていることになっているのだが、その裏でトルコ国民の経済が犠牲になっている。

トルコの経済状態はかなり悲惨だ。それでも政権が転覆されないのはエルドアン大統領が「トルコの治安は常に近隣から脅かされている」との継続的な宣伝活動を行なっているからだろう。まともなメディアがあれば反対の意見集約ができるのだろうが段階的に潰されてきておりまとまって大統領に対抗できるような民意の集約手段がない。このためトルコ国民はエルドアン大統領の恩寵に期待しつつ明けないインフレが収まるのを待つしかないという状態になっているようだ。

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