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FOMCは依然「タカ派」維持だが市場の反応は鈍かった

12月のFOMCの結果が発表された。これまでFOMCの結果株価やドル円為替相場が急激に動くという動きが見られたのだが、今回はそれほど大きな乱れはなかった。これまでは突風のようなニュースだったのが、今回のニュースは「寒い冬がしばらく続きそうだ」と言うニュースだったように思える。金利は高止まりし経済的に影響を受ける人も増えるだろう。

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これまでのFOMCは直後の動きが重要だった。株価が急速に動き円の下落が見られた。

だがそのフェイズは去り「この状態がいつまで続くのだろうか」と言う点に注目が移りつつある。

中でも気になるのは市場とFRBの意識の乖離である。市場がFRBを信頼しなくなっておりFOMC通りに動かない可能性もあるのだという。FOMC通りに動かないとこのままインフレが高止まりする可能性があり世界経済に大きな影響を与える。防衛増税議論で揺れる日本にとっても決して他人事ではない。

パウエル議長の発言要旨を見ると「状況は山場を越えたが今油断するとまた体調が悪化する可能性がある」と警告する医師の発言のように聞こえる。

だが患者は「初期のような危険な状態は乗り越えたからもう大丈夫なのではないか」と思っているようだ。ロイターの「識者はこう見る」はFRBと市場の楽観論の乖離について指摘している。

金融市場がパウエル議長の警告を無視し楽観論に流れるのは厄介だ。再びインフレが始まれば2022年夏のような過剰な金利上昇とその後の金融市場の「嵐」が再現される。だが嵐がなくても「寒い季節は続く」と言うニュースであることには変わりがない。

このようにパウエル議長と市場の見方が乖離するのはどうしてなのだろうか。それは金融市場が「やがてパウエル氏が景気失速に耐えられなくなる」と見ているからのようだ。金融市場が早くタカ派政策の解除を望んでいるという希望的観測も混じっているのだろう。ロイターの別の記事は「FRBと投資家のチキンゲーム」と言っている。

「医師の言う通りに寝ていればいいのに」とは思うのだが投資家の気持ちもわからなくはない。ニューヨークの株式市場はまたしても大荒れだった。記事を整理している数時間のうちに株価が下がってゆく。同じ時事通信の記事である。これは心臓に良くない。

それでもアメリカ合衆国の経済は比較的安定している。ここまでの激しい政策変更にもかかわらず労働市場は堅調である。ホリデーシーズンを前にしたブラックフライデーやサイバーマンデーもそれなりに堅調だったようだ。

BBCは今後の展開を次のように予測する。この予想がかなり厳しい。まずインフレ率は2025年ごろまで3%以下にはならない。さらに金利高騰による景気減速の影響が出てくる。さらに好景気の影響を受けて一時的に改善していた労働環境も悪化し失業率は4.6%まで上昇すると見られているそうだ。

新興国からはマネーの引き上げが起きている。新興国の中には目に見えて政情が不安定化するところも出てきた。こうなると中国の投資が連鎖反応的に影響を受ける可能性が高い。好調な経済を前提に強気の貸付計画が立てられているため経済が不安定化すると国家デフォルトが起き結果的に中国も貸付の回収ができなくなるのだ。

アメリカの金利が高止まりすれば当然世界各国の金利も高止まりする。日本ではついに国債が含み損を出すようになった。0.38%を超えると債務超過状態になる。

債務超過で直ちに日銀が破綻すると言うシナリオは起こらないだろうとされている。だが、別の懸念を持つ人たちもいる。山崎元氏は金融市場が荒れることに耐えられない地方銀行が出てくるだろうと指摘する。外債の金利上昇は即ち外債の価値が暴落していると言うことだ。地方銀行の中には自分たちで運用ポートフォリオを組めないところがあり証券会社から指南を受けていたという。証券会社は地銀の経営には責任を持ってくれないのだからいざと言うときは「自己責任」ということになる。ただし地方銀行が傾けば地域の中小企業は大きな影響を受けることになるだろう。

さらに野口悠紀雄氏は日銀が債務超過に陥れば日銀納付金が政府に支払われなくなると指摘する。1兆円以上の納付金が突然ストップするようなことになれば政府は財源探しを余儀なくされるという。

現在防衛増税で大騒ぎになっている。政局通の観測によるとこの後「子育て増税」がくる可能性がある。さらにこれに加えて金融混乱による財政混乱も予想されている。岸田総理が慌てて増税の突っ走っているところを見ると国民には説明されていない何らかの兆候が出ているのかもしれないと感じられる。

ただ、不安は不安のままだ。誰も払拭してくれないところに厄介さがある。

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