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ゼロコロナ政策解除後も中国を苦しめ続ける4つのDとは

中国でゼロコロナ政策が解除された。しかし、急激な政策変更によりちょっとした混乱に陥っているようだ。学生たちのデモにより政策が動いたことで「成功体験」を味わった人たちが大勢いる。しかしながら彼らがここで満足することはないだろう。この先中国は4つのDと呼ばれる変化に晒されることになる。この4つのDに対して今回成功体験を得た人たちがどのように行動するのかは誰にもわからない。

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おそらく渦中にいる人たちは「ゼロコロナ政策が終われば経済は元通りになるだろう」と感じるだろう。経済停滞の原因は政府のコロナ政策だったわけだからそれがなくなれば元の暮らしが戻ってくると感じると期待するはずだ。庶民の不満を背景にした学生たちの訴えは成功した。だがおそらく結果は元通りにはならない。

まず最初に経験するのは急激なインフレだ。これまで人為的に需要が抑圧されていたのだからその跳ね返りがある。すでに世界的には急激なインフレが起こっているため周回遅れでその影響を受けることになるだろうとロイターは指摘する。

さらにこれまで医療体制を構築してこなかったツケを支払うことになる。一部では200万人の死者が想定されている。世論は元通りのゼロコロナ政策をとってほしいという人ともううんざりだという人たちに割れるだろう。

しかしこれを乗り越えたとしても中国が抱える中長期的な課題が解決するわけではない。

フォーリンポリシーにアメリカ外交問題評議会フェローの記事が掲載されておりNewsweeek Japanに転載されている。

記事は中国の経済は元に戻らないだろうと言っており要因を「4つのD」に分類している。

世界経済が減速しており世界の工場の需要(Demand)は回復しないだろう。また中国では住宅バブルが加熱していたため家計が大きな債務(Debt)を抱えている。中国全体で見るとかなり多くの金が海外に貸し出されている。発展途上国に多額の債務がありこれらの一部が焦げ付く可能性も高い。さらにアメリカは急速に中国経済からの切り離し(Decoupling)を図っている。つまり政界経済が回復したとしても中国の需要は戻らないだろう。最後の問題は最も厄介だ。それが人口動態(Demography)である。

記事は「アメリカは中国に手を差し伸べるべきだ」と言う終わり方をしている。しかしながらアメリカが中国に手を差し伸べたところでDebtDemographyの問題は解決しない。そもそも民主党・共和党共に中国には敵対的だ。民主党は中国の専制主義が許容できず共和党は経済的なライバルだと考えている。政治が分極化しているアメリカにおいて中国敵視の政策は唯一両党が歩み寄れる共通の課題でもある。

中国政府の敵はアメリカだけではない。これまでの宣伝の成果とも戦わなければならない。

中国政府は躍起になって人口対策をやろうとしているようだが、これまでの一人っ子政策に慣れた国民の意識を変えることができていない。これまでの強力な刷り込みがその後の国民意識に大きな影響を与えているようである。コロナでも同じようなことが起こるだろう。一度「怖い病気だ」と刷り込まれた結果それを払拭できなくなる。

急激な変化の後で「元通りにならなかった」という意味では中国は日本とよく似ている。

しかしながら日本と中国には大きな違いがある。日本は民主主義国家だが中国はそうではない。皮肉なことに日本では民主主義で政治に関与しても政治は変えられないと学んでしまった。つまり政治に諦めてしまったといえる。一方で中国の学生世代は「自分たちが動けば政治は変えられる」という成功体験を得てた。いつまで経ってもコロナ前に戻らないと彼らが気がついた時に何が起こるのかは誰にもわからない。これは日本にはない不確定要素だ。民意は政策を立案できない。

さてここまでは「よくある」中国が危ない論でしかない。ではこの洞察はなぜ重要なのだろうか。

日本政府は潜在的な中国脅威論を煽り立てて増税に利用しようとする一方で林外務大臣を中国に差し向けて経済的な結びつきを強めようとしている。実はこれは「中国はこれまでの既定路線を進むだろう」と見ているからだ。つまり何をしでかすかわからないままで何もしないでいてくれるのが最も好ましく「管理可能だ」と考えているのだろう。

だがおそらく今後の中国は我々の期待通りには動かない可能性が高い。おそらくシナリオが緻密であればあるほど「想定外のこと」には耐えられないだろう。シナリオの剛性が強すぎるため脆く崩れやすくなっているのだ。

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