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ドイツで「ハインリヒ13世」が逮捕される。容疑は国家転覆罪。

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ドイツでクーデター未遂事件が起きたとBBCとAFPが伝えている。BBCのタイトルは「ドイツ、クーデター計画容疑で25人逮捕 議事堂襲撃を画策と」になっている。AFPのタイトルは「国家転覆容疑で極右「テロ集団」を一斉摘発 独」だ。中には朝日新聞のように「ハインリヒ13世ロイス公」という称号を使っているメディアもある。実際にはロイス侯のようだがすでに侯国はないため自称であり各メディアとも鉤括弧付きの「ハインリヒ13世」という表現を使う。

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AFPの記事では極右とされている団体はBBCでは「ライヒスビュルガー(帝国の住民)運動」と表現されている。一つの集団ではなく複数の人々の集合体のようである。この運動の目的は、現在のドイツを終わらせて1871年のドイツ帝国に模した新国家「第二帝国」を樹立することだった。

中にはアメリカの影響を受けた陰謀論者も混じっており議会襲撃も計画されていたようである。ここまではAFPもBBCも同じ内容だ。

だがBBCの記事を読むとこの運動体がたんなる極右でもなさそうだということがわかる。

逮捕された人の中には本物の貴族の末裔も混じっていた。それがタイトルに使った「ハインリヒ13世」である。BBCによると「ハインリヒ13世」は、ドイツの古い貴族ロイス家の末裔で現チューリンゲン州の一部は1918年までロイス家の領地だったと書いている。一族は今でも複数の城を持っておりハインリヒ13世も別荘を所有しているようだ。

朝日新聞は「ハインリヒ13世ロイス公」と書いている。どのメディアも鉤括弧付きで伝えており自称であることがわかる。実際のハインリヒ13世は1800年から17年間地域を支配していた。ロイス侯は代々チューリンゲンのロイス=グライツ侯国という国を統治していたという。男子の名前は全て(兄弟でも)ハインリヒになるため13世の次の君主は19世だった。

BBCやAFPなどを読む限りではあまり現実的でない単なる極右運動のような印象を持つのだが、BBCの記事を読むと元連邦議会議員、裁判官、弁護士などが逮捕されているようである。こうした人々がアメリカの影響を受けた陰謀論的な極右思想と結びついているという点を考慮すると「ある極端な団体が無分別な行動を起こした」というわけでもなさそうだ。ドイツ当局は2万1000人の支持者がいるものとみているようだ。

「ハインリヒ13世」にはもう一人の主犯格の協力者がいた。それが「リュディガー・フォン・P」である。彼は運動体の軍のトップになる計画だったそうだ。つまり「ハインリヒ13世」を旗頭に軍隊を立ち上げようとしていたことになる。共同通信は「ドイツ極右が政府転覆計画容疑 25人拘束、議事堂襲撃狙う」という記事の中で運動体は射撃訓練を行なっていたと書いている。つまり軍事教練もやっていたことになりかなり本格的なテロ計画だったことがわかる。

この運動がどの程度の地域に広がっていたのかは不明だが「ハインリヒ13世」の地元のチューリンゲン州は東西冷戦時は東ドイツだった地域だ。極右とされる「ドイツのための選択肢」(AfD)の活動が活発な地域だが反発も根強い。2020年にはAfDに支持された首相が1日で辞任するという騒ぎも起きている。

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