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まだまだ元気なトランプ氏が今度はアメリカの憲法停止を主張

BBCが「トランプ氏、憲法の「終了」を主張 米政府は非難」という記事を出している。英語ではTerminate(停止)という言葉を使っている。ホリデイシーズンでアメリカの政治はおやすみ状態のはずなのだがトランプ氏は依然元気である。前職の大統領が米国憲法の停止を主張するのはアメリカ合衆国では極めて異例だ。うんざりした共和党の中からも脱トランプを模索する動きが出てきたが、脱トランプへの道はなかなか険しいようである。

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トランプ氏が運営するトゥルースソーシャルでの主張は、2020年に自分がアメリカ大統領になれなかったのは間違いなのでその間違いが正せないとしたらそれは決まりや仕組みが間違っているというものだったようだ。仮にその決まりや仕組みの中に憲法が含まれるとしたら当然それらも停止させられるべきだと言っている。

つまり自分の主張のためなら憲法は守らなくても良いという主張になっている。選挙に負けたという事実が2年経っても受け入れられないのだろう。

アメリカ合衆国は民族国家ではない。「イギリスからの独立」という精神に賛同して集まってきた人たちの共同体ということになっている。この象徴が合衆国憲法だ。つまり、アメリカ合衆国がまとまっているべきだとするならばそれはアメリカ合衆国という理念があるからだということになる。

リベラル系のメディアは「トランプ氏の主張は共和党の主張でありアメリカ建国の精神に対する挑戦である」という絵を作ろうとしている。CNNなどはこの論調である。

CNNはTrump calls for the termination of the Constitution in Truth Social postという記事の中で、トランプ氏は選挙結果を覆すために憲法の停止を呼びかけたと批判的に報道した。アメリカの秩序に対する反乱者だという含みがあるのだろう。また共和党内部から十分に批判の声が上がっていないことを指摘し「共和党の中にはトランプ・シンパが多いのだろう」と仄めかしている。

この記事によるとトランプ氏はハンター・バイデン氏に対するニューヨークタイムズの記事を投稿したあとで「憲法停止」を呼びかけている。マスク氏とトランプ氏の一連の発言を組み合わせると次のようになるだろう。

ハンター・バイデン氏のニューヨークポストの報道が広く知られていればバイデン氏が大統領になることはなかっただろう。これを阻止したTwitterは「ビックテック」に操られているかもしれないので、その過程は洗いざらい公表されなければならない。

いわゆる陰謀論の類である。

一方でリベラル系でないメディアもトランプ氏の過激な主張を持て余し始めた。

トランプ氏には大勢のサポーターがいるのだが共和党の政治家たちは一連の過激な発言にうんざりし始めている。共和党の上下院トップはそろってトランプ氏の発言を非難し距離をとり始めている。白人至上主義者と会食をしたというニュースが流れるとロイターは次のような記事を出して議会共和党の反発を伝えた。

ポリティコの主張もどちらかといえば「切り離しを図る方向」だ。

ポリティコによるとトランプ氏は憲法の停止を主張したわけではなくフェイクニュースが虚偽の情報を流していると主張しているそうだ。一方でトランプ氏は共和党で現在唯一次の大統領選挙への出馬を明言しているという点と「選挙が盗まれたという虚偽の主張」を繰り返しているとも指摘している。つまりトランプ氏の言い分は伝えつつも擁護はしていない。

別の記事では上院共和党が憲法停止の話でもトランプ氏を非難しているとしている。トランプ氏と共和党が一体であるというイメージが必ずしもプラスに働かないということに気がつき始めているのだろう。

だが、ソーシャルメディアの中にはトランプ氏を擁護する声もある。以前、ニューヨークポスト(ニューヨークタイムズではない)で伝えられたハンター・バイデン氏に対するニュースをTwitterが配信しないという判断を下したことがあった。イーロン・マスク氏はこの結果が正しかったかどうか全てのプロセスをを公開すると言っている。トランプ氏はTwitterには参加しない。だがサポーターたちはトランプ氏の発言を引用しTwitter上でキャンペーンを行うことになるのではないかと思われる。こうした連携は今後も続くだろう。

アメリカでは自由意思をもった市民がどの政党のどんな主張を信じるかについて規制をしてはいけないことになっている。ただ結果的に議会共和党はこうした支持者たちを持て余しはじめているようだ。以前多くのトランプチルドレンを抱えておりTwitterの擁護も入っている。

つまり議会共和党側が切り離しを図ろうとしてもSNSにはトランプ氏を支持する人たちが一定数いる。これが共和党に有利に働くとは思えない。一時はトランプ氏の勢いを頼って党勢を盛り返した共和党だが、かなり高い代償を支払うことになりそうだ。

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