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防衛増税と恒久財源議論は2027年ごろまで先送り

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このブログでは防衛費の恒久財源議論について継続的に書いている。共同通信によると2027年まで先送りすることが決まりつつあるようだ。

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木原誠二官房副長官が2027年までにきちんとした財源について決める必要があるとフジテレビの朝の番組で宣言したそうだ。その後共同通信は追加取材をしたのだろう。夜になって「政府、防衛増税を当面先送りへ 27年度に向け安定財源確保」という記事を出している。

正確に言えば「2027年には正常化させたい」ということなので議論そのものはもっと早くから進めることになるはずなのだが、今決められないものが将来決められるわけではない。

この件については財務省側の議論が先行していた。財務省側は盛んに国債に頼らない財源が必要だと主張していた。俎上に上がっていたのは消費税以外の財源だ。所得税や法人税増税が念頭にあったようである。この議論をまとめたのは岸田総理が主催する有識者会議だった。アメリカとのパイプが太いと思われる佐々江賢一郎氏を座長にして「恒久的財源が必要」との報告書をまとめさせた。

ところが萩生田政調会長側がこれを押し返した。沖縄、九州、中国、四国の県連の代表者を呼び寄せて話を聞いたそうだが「地方選挙を戦えない」という声がでたようだ。

今回の木原官房副長官の発言と共同通信の追加取材は政調会長側の意見がとりあえずは通ったことを意味しているように思える。つまり統一地方選の争点にはしたくないのだろう。「ああこれでよかった」と思いたいところなのだがそうはならないのが岸田政権である。

岸田総理はまずアメリカに「防衛費を相当額増額します」と宣言した。バイデン大統領はこれを歓迎しており増額そのものは既定路線化している。しかしその後の財源についての議論がまとまることはなかった。国会では退路を絶って年末までに決めますと宣言してしまっている。国会会期は12月10日までなのであと数日しかない。

時事通信のこの記事などをまとめると次のようになる。

  • GDP2%のための財源を捻出するように強い決意で鈴木財務大臣に指示
  • 足元の有識者会議からは恒久財源が必要という提言を受け取っている
  • だが、自民党側からの押し返しにより先行して「2027年まで先送り」の報道が出る。
  • 国会では「年末までに決めます」と宣言

これをどうするのだろうか?という気がするのだが、当面は「特別会計の剰余金活用やムダの削減」で乗り切る考えのようだ。だが「これでは財源は捻出できない」という声が支配的であり「いずれは増税をお願いします」という議論になっている。手遅れになってから手をつけるというのは辞任ドミノ問題で一貫して見られた総理大臣の態度であり、支持率に悪影響を及ぼしている。

確かにこれまで1%という枠は破られてこなかったのだから、仮に岸田総理がこの枠を突破すれば歴史に名前が残ることにはなりそうだ。だが新しい財源が降ってくるわけではない。そもそも日本が成長しなければ防衛費の増額のためにはGDPに占める防衛費の割合を伸ばして行かざるを得なくなる。その分他に回せる予算が削られてゆくことになるだろう。

財源議論については「偉い人がなんとかしてくれる」のかもしれない。おそらく「ないものは出せない」ということで目標が達成できないということになるのではないかと思う。他の予算を削って防衛費に充てるというような強引なリーダーシップはこの政権にはないだろう。

時事通信の記事は首相官邸関係者は「決断力を示すことは内閣支持率の回復につながる」と期待を込めて語ると書いている。ただ、総理大臣が決断力を強調すればするほど「決められない」という姿勢が鮮明になるというのが岸田政権のようだ。

によると岸田政権の支持率は下がっているが野党の支持率が上がっているわけではない。国民・有権者は次第に政治そのものへの興味を失いつつあるようだ。

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