中国各地でなんらかの抗議運動が広がっているようだ。中には習近平氏に退陣を求める声もあるという。テレビニュースを見ていると漠然と中国全土が大変なことになっているような印象を受けるが、どうもよくわからないので情報をまとめてみた。実は2つの塊があるようだ。また報道の新しい役割も見えてくる。見出しによって印象を作っているメディアもあればSNSから情報を拾い出そうとしているメディアもある。
新疆ウィグル自治区の火災が上海で体制批判につながる
まず、最初の塊がこれである。
まずウルムチで火事が起きたて10名が亡くなった。消火活動が遅れたのは政府の厳しすぎるコロナ対策が原因だったのではないかという抗議運動が起きた。避難しようとする人を「外に出るな」と押しとどめたという話もでている。上海のウルムチ通りでも火災に抗議するデモが起きたが次第に習近平国家主席の退陣を求める声に変わった。
中国のゼロコロナ対策が行き詰まり学生を主体に抗議運動が起こる
次の塊がこれだ。
中国ではゼロコロナ政策が行き詰まり、感染者が増えている。地方当局の抑制が激しくなり各地で抗議運動が起きている。主体はどうやら学生のようである。メディアによって都市名は違っているのだが、北京・広州・武漢・蘭州などでデモが起きているらしい。北京の清華大学でもゼロコロナに対する抗議運動が起きている。民主化を叫ぶ一派もいたようだがすぐに当局に抑えられてしまった。
二つの情報が合成されて一つの見出しが作られる
時事通信はこの二つの塊を合成した見出しにしている「退陣せよ」を先に持ってきているので、「中国で体制転覆でも起きてくれないかなあ」などと思っている人が見出しだけを読むと体制批判が各地に広がっているように理解できてしまう。TBSも同じような見出しだがさすがに体制批判は後ろ回しだ。NHKの記事は二つを分離して別々の情報として扱っている。
CNNの英語版は1989年の天安門事件も学生の運動がきっかけだったと指摘している。つまり二つの塊を合わせると「さまざまな不安が重なり体制が動揺し始めているのではないか?」という読み方ができる。一方でロイターは「エリート層が同調していないため体制が揺らぐことはないだろう」と慎重だ。また、見出しも二つの事象を分けている。
確かに2つの抗議運動を合成しあたかも中国全土で習近平氏退陣の動きが起きているというような絵を作ることは容易だ。だが逆にこれが「全く西側の願望を込めたでっち上げ」だとも言い難い。中国では反体制運動が厳しく抑えられているからである。そもそも体制批判がSNSで拡散されること自体が異例なため内部で動揺が起きていることは確かだろう。
イランでは何が起きているのかを探るためにSNSが活用される
何かと不確定な情報が広がるSNSなのだが、実はその中から真実を探すのにも役立つ。
これが実際に行われているのがイランである。道徳警察に逮捕された女性が亡くなったことをきっかけに各地で抗議運動が起きている。主体は女性と学生のようだ。当初イランでは政府への抗議運動など起こらないだろうといわれていたのだが、予想に反して抗議運動は広がっている。報道では動向が掴みきれないためBBCはSNSにアップされた情報を検証し「実は抗議運動で多くの若者が亡くなっている」ということを掴んだ。
イラン政府は情報を封じ込めようとしているがSNSで拡散した情報を完全に制御することはできない。
同じく報道が制限されている中国でこうした抗議運動が一体何を目指しているものでどこに向かうのかを正しく知るのは極めて難しい。このまま鎮圧されてしまう可能性もあるのだが、あるいは海外にいる中国人同胞の手によってSNS画像が解析され「何が起きているのか」を間接的に知るようなことになるのかもしれない。新しい報道の形とメディアの役割がある。記者クラブから情報をもらうだけでなく、積極的にSNSde情報を探しそれをまとめる力が求められているのである。
参考資料(順不同)
- ロイター
- NHK
- TBS
- 時事通信
- CNN
- AFP
- BBC