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「プーチン大統領が狙っていたのは実は日本だった」情報の信憑性と集団思考の恐ろしさ

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ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた…FSB内通者のメールを本誌が入手という物騒な記事をNewsweekで見つけた。記事自体は煽り気味のタイトルなのだがロシアが考える情報戦の内情がわかる興味深い内容だ。さらにこれについて考えてゆくとロシア指導部が陥っている集団思考の恐ろしさもわかる。

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情報の発信源はFSB職員が人権擁護活動家のウラジミール・オセチキン氏に定期的に送っているメールの一つなのだそうだ。オセチキン氏は現在はフランスで亡命生活を送っておりプーチン政権に敵対的であることには留意する必要がある。

メールによるとプーチン政権が当初攻撃対象にしていたのはウクライナではなく日本だった。なぜ最終的にウクライナが選ばれたのかはわからいという。軍事的には電子戦用のヘリコプターを展開が検討されていたそうだ。さらに「情報戦」として日本にナチス・ファシストのレッテルを貼ろうとしていたのだという。

このうち軍事侵攻については「信憑性が乏しい」という声が一般的である。兵器の総量が限られているため部分侵攻でも持ち堪えることは難しいようである。仮にプーチン政権がこんなことを計画していたとしたら「プーチン大統領はどうかしている」ということになりそうだ。だが実際には無謀な侵攻に突き進んでおり「本当にどうかしていた」可能性は高い。

ところが、FSBの情報戦は実は事実のようである。第二次世界大戦中の文書や写真などの機密情報を解禁し反日情報キャンペーンを行なっていた。

関連記事を検索したところ毎日新聞と産経新聞の記事が見つかった。「理由はわからないかロシアが歴史問題で日本を牽制している」という内容になっている。毎日新聞の記事は途中までしか読めないが「新しい事実はない」ことからそれほど問題にならなかったようだ。産経新聞はは北方領土問題に絡め「北方領土の不法占拠を正当化する狙いがあったのだろう」とまとめている。

ロシアに近ければ近いほど「プーチン大統領は冷静な戦略家であり勝ち目のない戦いには挑まないだろう」という気持ちが強かったようだ。ウクライナ侵攻前ということもありこの頃の記事はどうにかして合理化を図ろうとしている。

産経新聞は対日宣伝だけでなく、対欧でも盛んに自己正当化の宣伝活動が行われていると書いている。

このプーチン氏の歴史に対する挑戦は一体なぜ生まれたのか。CNNの英語版に歴史戦争に関する分析記事があったので読んでみた。日本語にも翻訳されている。ソ連崩壊後ロシア経済は大混乱期を迎える。それまで国のために働いていたプーチン氏も白タクの運転手としてその日の稼ぎを得なければならなかった。プーチン氏が「なぜ自分がこんな目に遭わなければならなかったのか」を考え始めてたどり着いた答えが「歴史が正しく理解されていない」という問題だったということになっている。この記事は2021年12月に書かれており「ウクライナが侵略されるかもしれない」と予測している。後にそれは現実になった。

ソ連(ロシア)は第二次世界大戦の偉大な戦勝国であり日本は敗戦国だ。だが結果的に日本は経済的に成功し、ロシアは経済競争に負けてしまった。プーチン氏にとってこの事実を受け入れることは難しく「これは本来あるべき状態ではない」と考えたのだろう。プーチン氏の戦いはソ連崩壊後に始まったと言える。つまり元々は個人の喪失体験なのである。

だがこの喪失体験はごく一部の人たちに共有され集団思考的な歴史修正の試みへとつながってゆく。あるいは狭い共同体の中で共有されたからこそ大きく広がった可能性がある。

国家という巨大なエコーチェンバーの中で周りが見えなくなりさまざまな非現実的な選択肢が検討されたとすれば無謀としか思えない「日本攻撃論」が検討されていたとしても不思議はない。日本に対する敵対心の現れというより「すっかり現実が見えなくなっていたのだ」と考えた方が理解はたやすいだろう。

Newsweekの記事にはYahoo!ニュースに体裁されているため識者のコメントがついている。オセチキン氏は煽りすぎだとしつつ対日宣伝が活発化してきたのは事実だと言っている。これは毎日新聞や産経新聞が指摘していた通りである。

侵攻直前にはおそらく視野狭窄に陥っていたと思われるのだが現在はどうなのだろうか。現在の状況を読売新聞が伝えている。プーチン氏に賛同する人たちを集めて「人は誰でも死ぬものなのだ」と主張しているそうだ。

この中でプーチン氏は「交通事故やアルコールで死ぬよりも国のために戦って死んだ方が有益な死に方である」という独自で身勝手な見解を披瀝している。おそらく国内にはプーチン大統領の賛同している人はそれほど多くないはずだ。「誰かに言い訳をしたい」と考えたうえで周りに賛同者を集めて説明をして見せたのかもしれない。だがその説明はもはや支離滅裂になっている。どうせ無駄死にするくらいなら俺のために犠牲になれと言われて戦いに出ても有能な戦士にはなれないだろう。

プーチン氏の発言も行動も常人の理解を遥かに超えている。だが、国連安保理はこの暴挙を抑止することができていない。結局ウクライナの人たちが暖房機器なしに一冬を過ごさなければならないという過酷な運命を引き受けている。キーウ市長は真冬の退避を呼びかけているが、早くも11月30日には零下6度が予想されているそうだ。

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