このところ秋葉賢也復興大臣への追及が強まっている。色々分析しようと思ったのだがそもそも疑惑がまとまっていないことに気がついた。そこでここでは分析は最低限に止めて秋葉さん関係の報道をまとめてみようと思う。もともとは文春が「統一教会と関係があるのでは」と目をつけていた人だったようだがFRIDAYが地元情報を拾い始めたことでいろいろな問題が見えてきたというのが経緯だ。実は地元で色々とささやかれていたらしい。よく疑惑が雪だるま式に膨らむなどというが、一つの疑惑が積み重なって収拾不能になるという意味では典型的な雪だるまである。選挙区では接戦で立憲民主党の候補にまとめており選挙に苦労していたのかもしれない。
秋葉復興大臣は松下政経塾出身。宮城県議会議員を経て宮城第二区から衆議院に立候補した。宮城第二区は仙台市の一部から構成されている。一度は選挙区当選したようだがその後は苦戦が続いており比例復活での当選となっている。ライバルは立憲民主党の鎌田さゆりさん。秋葉さんの派閥は茂木派(旧竹下派)である。
立憲民主党側から見れば秋葉さんの疑惑を宣伝することで次の選挙が有利になるという側面はあるのだろう。ただそれにしても次から次へと色々出てくるなあという印象だ。
親族への事務所賃料支出問題
9月の記事では「この件は地元ではよく知られた話だった」とか「同じ自民党の関係者なので指摘がしにくかった」となっている。この時に指摘をしていればこんな大事にはならなかったのだがそもそも指摘がしにくい人だったのかもしれない。選挙区事情を見ると「あるいはそれどころではなかったのかなあ」とも思う。
当初、岸田政権の問題は統一教会との距離感だった。文春は「統一教会ライン」で秋葉氏をターゲットにしていたなどと書かれている。ところが、この時にFRIDAYは地元の取材などを通じて秋葉氏に別の問題があるなど報道していたわけだ。結果的にはこちらの方が大きな問題だったのだが「国葬問題」で揺れる当時はそこに気がついている人は多くなかったようだ。わずか数ヶ月前のことだが空気が完全に変わってしまった様子がわかる。
最初の報道では「10年間で793万円が奥さんに支払われている」となっている。もともと事務所は秋葉氏本人が購入したものだが妻に贈与されていた。つまり妻は贈与された資産から賃料をもらっていたことになる。11月23日のFRIDAYの別の記事では「秋葉氏の複数の政治団体が、事務所家賃として合計1414万円を妻や実母に支払っていた」と書かれておりその金額が膨らんでいる。
後にこの問題は「家賃をもらっていたのにお母さんは収入として報告していなかった」という「脱税疑惑」問題に発展する。この時に出たのが「母と私は別人格」発言だ。
- 秋葉復興相と寺田前総務相、関連政治団体が21年も家族に事務所家賃(朝日新聞:2022年11月25日)
ただ報道はこれでは終わらなかった。
関連政治団体への虚偽記載
秋葉氏が代表を務める政党支部が活動実態が不透明な義兄の政治団体に対して600万円を寄付していたという疑惑だ。
FRYDAYが品川区にある事務所所在地に行ってみると、秋葉さんの義父が出てきて「名前が出ているのは自分の息子(つまり秋葉さんの義兄)だとあっさり認めてしまった。その上で「すくなくともこの住所には事務所などない」と言っている。活動実績がないのだから「お金が親族を通じて議員本人に還流しているのでは」という疑惑になっている。すでにこの団体は存在しておらず繰越金として残った312万円がどこに流れているのかはよくわからないのだという。
秋葉さんの義父は随分あっさりと疑惑を認めている。つまりそれほど違和感を感じていなかったということである。これが次の秘書たちの疑惑につながる。
ここまでで、お母さん、奥さん、奥さんのお兄さん、奥さんのお父さんが出てきた。家族ぐるみで選挙に苦労しているんだなあという印象は持つ。世襲でない政治家が「家の後ろ盾」なしに選挙事務所を維持するのはかなり大変なようだ。
選挙運動員買収疑惑
当選無効の恐れも…秋葉賢也復興相「選挙運動員買収」疑惑(11月23日)
上記二つの問題が解決しない中で、番頭角の秘書がFRIDAYデジタルの取材に対し選挙事情を説明した。これが結果的に「告白」になってしまう。この人は公設第一秘書なのだがおそらく全く罪悪感を感じておらず当たり前のことだと思っていたのだろう。
実は現在の公職選挙法では失職中の公設秘書が「対価をもらって」選挙運動を手伝うことは運動員買収にあたるそうだ。公職選挙法では認められている単純労働(選挙カーの「うぐいす嬢」など)以外で対価をもらうことはできない。また失職しているので秘書の資格も失われている。つまり、選挙運動を手伝うためには「タダ働き」をしなければならないという規則だ。また、公設第一秘書は出納責任者でもあったので「被買収」だけでなく「買収」の罪にも問われることになるという。
さらに実は実際の出納実務者は秋葉さんと奥さんだったようだ。つまり「単なる名義貸し」の可能性も出てきている。ここでも「家族ぐるみ」で選挙運動をやっていて各種操作のために名前を借りていたんだなあというような経営実態が伝わってくる。
秋葉大臣は答弁の中で「公職選挙法で決められている労働の対価としてのみ」謝礼を出しているといっている。当初のFRIDAYの取材とはあきらかに違う位置付けになっているのだが、形式を整えることで乗り切ろうとしているようだ。
統一教会関連団体への出席
旧統一教会問題は被害者救済に自民党が前向きでないのは公明党に遠慮しているからだということになっている。つまりマスコミの興味は被害者救済法の行方に向かい「統一教会と政治家の関係」について語られることはなくなった。
だが、秋葉さんは数々の疑惑にさらされており「別枠」になっている。
おり悪く11月になって2021年分の政治資金収支報告書が公開になった。時事通信が宮城県選挙管理委員会の公表した政治資金収支報告書の資料をもとに報道している。すぐさま報道され立憲民主党の攻撃材料になってしまった。
支出自体に法的問題はないものの「旧統一教会との関係は全て調査する」としていた時には公表されていなかったことから「調査が不十分だったのでは」ということになっている。また、内閣改造の際には統一教会に関係していたとする人たちは交代させられており正直でない人が大臣のポジションを獲得して「トクをした」という点にも批判が集まる。
最新の情報では費目が訂正されている。会費ではなく雑誌購読料ですよということだ。つまり形式さえ問題なければ野党も追求できないだろうという姿勢のようである。
「なりすまし」の影武者疑惑
立憲民主党のYouTubeチャンネルにやりとりが出ている。次男に候補者の襷を渡し「お父さんのために辻立ちをした」そうだ。この指摘に対して「次男が辻立ちをした」ことは認めたものの「選管や警察から特に注意されなかったから罪には当たらない」との独自見解を披歴している。校則違反にあたる行為は認めたが風紀委員や先生に見つかったわけではないから俺は謝らないというような言い訳に似ている。統一教会「会費」も雑誌購読料にすれば形式的には問題がないだろうという姿勢なので「捕まらなかったから犯罪にならない」という申し開きも秋葉さんらしいといえるだろう。
立憲民主党がこの次男の写真をどうやって手に入れたのかはわからないのだが、あるいは「後で使える」と考えたのかもしれない。こうしたさまざまな噂は選挙のたびに怪情報として伝わるがせいぜい「ご近所の噂話」程度で終わってしまうことがほとんどである。本来ならば県連あたりででなんとか処理をすべき問題なのかもしれない。裏返すと現在の岸田政権や自民党執行部はこうした問題をコントロールできなくなっている。
まとめ
一つの問題が片付かないうちに次々と新しい問題が出てくるという点でマスコミの格好の餌食になっているといえる。また親族や秘書の名義を借りるということも常態化しているようだ。ルールに問題があるならばルールを変えることも必要なのだろう。世襲でない政治家が事務所を維持するのに苦労しているとするならばルールを変えて誰でも選挙に出られるようにしないと世襲政治家だらけになってしまうのだろう。
だがその一方で「決まったことも守れない」人がルール(法律)を作る側にいてもいいのかなという気はする。岸田総理は「説明責任を尽くすように」と言い続けておりこの問題に対応するつもりはないようだ。
宮城二区のような接戦選挙区では選挙結果に影響を与えかねない重大な問題といえるのだが、岸田政権に取っても「辞任ドミノ」という好ましくない結果につながっている。
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