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選挙には大敗したが漁夫の利を得たマレーシアの国民戦線(BN)がアンワル新政権に参加

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先日、マレーシアで選挙が行われたが結果が出ていないとお伝えした。国王による調停がまとまり大連立が発足することになりそうだ。長年マハティール氏の後継者と目されていたアンワル氏がついに首相に指名された。面白い現象も起きている。ライバル同士で協力ができなかったため選挙で大敗した与党連合の国民戦線(BN)が政権入りしそうなのだ。このため厳密には政権交代にならず「事実上の政権交代」などと表現されている。アンワル新政権の課題は財政の立て直しである。失敗すれば通貨リンギの下落につながりかねないという極めて厳しい状況なのだが国民は緊縮財政を支持していない。

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マレーシアはアジアの中堅国である。核になっているのはイスラム系マレー人だが経済は中国系の人たちが握っている。さらにインド系もいるという複雑な多民族国家である。1990年代には9%台の経済成長を記録していたが成長率は鈍化している。また近年政府の赤字が続いていおり財政再建が課題になっている。

アンワル氏はもともとマハティール氏の息子とか弟子などと表現されてきた。国民はマハティール氏からアンワル氏への権力移行を望んでいたがマハティール氏はアンワル氏を排除しようとしている。野心的な経済成長路線を主張するアンワル氏を嫌っていた可能性が高い。

ロイターの報道によると最終的に国王が二つの選択肢の中から新しい首相を選ぶことになった。

  • 経済成長路線のアンワル氏
  • イスラム保守派を含むムヒディン氏

マレーシア国王は大敗した与党連合国民戦線の国会議員らに「本当はどう思っているのか」と面会をし、最終的にアンワル氏を首相に指名した。つまり、最終的に決定権を持っていたのは大敗して30名しか議員がいなくなったはずの国民連合だったことになる。典型的な「第3極によるキャスティングボート」である。国民連合(BN)が政権に協力することから政権交代にはならず「事実上の」政権交代になっている。

なぜマレーシア国民が与党連合から離反したのかはわからないが時事通信はアンワル氏が現在の体制を「腐敗している」と批判して躍進したと紹介している。政権交代と言われているが、そもそもマハティール氏とアンワル氏は共に60年以上も政権を担当してきた与党の出身である。マハティール氏が先に離反して新しい政党を立ち上げた。だがアンワル氏も外に出て「今の体制は腐敗している」と批判しはじめた。日本で言うと自民党の内部で分裂が起こりお互いに派閥同士で罵り合っているような状態だ。政治が行き詰まっているが次の政党が出てこないと言う点も日本に似ている。財政赤字を修正できないと言う点もそっくりだ。

アンワル氏の最初の仕事は予算の確定になる。対立している各党派をまとめることができるのはアンワル氏しかいないのではないかと期待されているようだ。

総選挙前の来年度(2023年度)予算案は公的支出を抑えた緊縮的なものになるのではないかと予想されていたという。

マレーシアの財政状況は悪化しており財政の立て直しが喫緊の課題である。大敗したBNは2023年中の選挙を模索していたが結局2022年の選挙に追い込まれた。アンワル新政権がこのBNの予算案を引き継ぐかどうかはわからないのだがBN大敗したことから緊縮財政政策の続行は極めて難しいものになりそうだ。

ただし、隣国のシンガポールは消費税増税に踏切り財政再建を目指す計画になっている。つまりこのままマレーシアが拡張的な財政政策を維持すれば通貨リンギが下落しかねない状況になっている。マレーシア・リンギはすでに23年ぶりの安値圏に入っており更なる下落が懸念されているようだ。

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