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東京五輪談合の発覚はADKの自己申告だったようだ

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次々と新しい疑惑が出てくる東京オリンピック・パラリンピックだが、現在「テスト大会を巡って談合が行われていた」という話が出ている。実はADKの自己申告だったと読めるような記述になっている。このブログ記事も当初はその想定で書いていた。ところが毎日新聞から別の情報が出てきている。毎日新聞は「官製談合か」と書いているのである。

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この話はもともと検察広報のように機能している読売新聞が報道して広まった。一件当たりの受注金額は6000万円から500万円だったのだが合計すると5億円になるというのが当初の発表だった。全体予算から見るとそれほど大きな額ではないのだが、談合がなければテスト大会の運営費用は抑えられていた可能性がある。

次の読売新聞の記事によるとこの件が発覚したきっかけは実はADK側の自己申告によるものだったそうだ。公正取引委員会に確認をしたということになっているがソースは「関係者」となっている。この関係者がどこの誰なのかはよくわからない。

自分達から申告すると課徴金が減免される制度を利用したものなのだそうだ。つまりADKがすでに認めていることになり、裁判を待たずに「検察の正当性が証明された」といえる。発表が先行することでADKに取材が殺到することもなく彼らもまた表に立たずに済む。AKDの社長は日テレの取材にノーコメントと応じた。全ては粛々と進んでいるのだから余計なことは言わないということなのかもしれない。ここで話の辻褄が合わなくなるのは避けたいはずである。

ではなぜADKは自己申告したのだろうか。実はAKDではすでに社長が逮捕されている。つまり、この件で責任を問われかねない人たちはすでに捕まっていることになる。ただし前社長は容疑を否認している。

逮捕された前社長はTOBを利用して会社を非上場化させた。株主の意向を気にすることなく自由に組織改革ができると宣伝会議では説明されている。だが実際にはBCPEMKLPという投資ファンド系列の会社が株式を取得していたそうだ。つまり、現在ベンチャーキャピタルの支配下にあるのだ。前の社長の体制を一新するにはある意味「良いきっかけ」になったのではないかと思える。後は流れに任せていればそれほど悪いようにはならないだろう。

読売新聞は「関係者によると、計画立案業務の入札に関し、ADK側から公取委に「事前の受注調整があった」などと違反の自主申告があったという。違反した場合は課徴金納付命令や刑事罰を受ける可能性があるが、公取委の調査前後に談合やカルテルを自主申告すれば、課徴金が減免されたり、刑事告発が見送られたりすることもある」と書いている。

ADK側にもそれなりの事情があるのかもしれない。再上場するにせよそのままどこか別の会社に売るにせよ問題を処理した上で企業を成長させ高く売りたいというのがベンチャーキャピタルだ。社長はオーナーの意向に沿ってビジネスを最大化する必要がある。ビジネスとしては極めて正当なものである。そのためには懸念材料は払拭しておきたいと考えても不思議ではない。

ところが毎日新聞を読むと全く印象が変わってしまう。「広告会社などから大会組織委員会に出向した複数の職員がテスト大会の業務について入札開始前に広告業者側に希望する競技会場を聞いて回り」という一説があるのだ。

毎日新聞がこれを「官製談合」と書いているのは彼らが広告代理店から出向した職員であるからなのだろう。つまり、職員なのか広告代理店出身者なのかで印象が全く変わってしまう。仮に官製談合防止法が適応されるならば組織委員会の監督責任が追及されることになるだろう。

札幌オリンピック招致を目指すためには「過去の問題を清算」が重要である。政治が組織大会から撤退し札幌オリンピック招致の前に問題を全て清算しておきたいと考える人たちにとっては「大掃除」にうってつけのタイミングと言える。「全ては一部の不心得者のせいでしたと」いうことにできるからだ。情報を制するものがその後の印象を決めてしまうことができるとするならば「広告代理店(出身)の人たち」が勝手にやったのだから、スポーツ界出身の人たちは関係がないといえる。全ての悪い人たちは捕まったわけだから「これで禊が済んだ」といえるわけだ。

いずれににせよ、自己申告がなければ談合疑惑が露見することはなかった。山下会長は「ごめんなさい」と謝っているが「当時の状況では問題は把握できなかった」と言っている。つまり自分達は関係ないという主張だ。これでは「自分達では談合を排除できない」と宣言しているのと同じことだ。大会が決まればまたスポンサー探しでこうした不透明な慣行が残った広告代理店に頼ることになる。毎日新聞の記事によると組織委員会は「組織委は大会公式報告書で、テスト大会の発注先について「総合評価方式一般競争入札により、厳正かつ慎重な選考に基づき決定した」としている。」と関与を否定しているようだ。

山下会長の知らなかった発言が正しかったとすると、彼らは全員お飾りで職員たちが勝手に差配していたことになる。確かに刑事責任は問われないのかもしれないのだがガバナンスには問題があるといえるだろう。

繰り返しになるが東京オリンピックパラリンピックで談合を排除できなかったということは本来よりも高い価格設定をされていたということである。この中には公費が入っているということは、多くの税金がつぎ込まれたということだ。さらにいえば次回も同じことが起こりかねないということを意味している。

現在、オリンピックで談合が疑われているケースはテスト大会くらいしかない。他の取り組みがクリーンだったからテスト大会の談合ぐらいしか表に出てこなかったのだと思いたいのは山々なのだが、当初「国民に負担をかけないコンパクトな大会」だったはずの経費は最終的に見積もりの2倍以上に膨張している。これをテスト大会の談合だけで説明することは難しい。

日経新聞でも色々と分析をしている記事を見つけた。確たる証拠もないために「群がる人たちが多かったのだろう」などとは書けない。このため「リーダーシップが不足していたのだろう」という無難な表現に留まっている。リーダーシップが不足しているというより当初から「食い扶持」を期待して集まってきた人たちが大勢いたとした方が説明はしやすい。

札幌オリンピック招致のためには国民の熱心な支持が必要だ。国民が納得できる形でこうした談合が排除できない限りは立ち止まって考えるべき時期に来ているのかもしれない。今回の「清算」で次の札幌招致を心から応援できるかどうかは、読む人一人ひとり違うだろう。ここではあえて立ち入らないことにする。

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