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寺田稔総務大臣に新たな文春砲 ハンコ発言の葉梨康弘前法務大臣との共通点も

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寺田稔総務大臣に文春砲が出ている。衆議院選挙の時に「虚偽記載があったのではないか」という。とにかくお金に関する問題が次から次へと出てくるという状態になっており会期がタイトな国会運営の次の障壁になりそうである。それにしてもなぜ岸田政権ではこのような問題が次から次へと起こるのだろうか。

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葉梨康弘前法務大臣は東大法学部卒で警察庁官僚というエリートだった。葉梨家に認められ婿になったようだ。しかし地元や周りの評判はあまり良くなかった。とにかくプライドが高いなどと週刊誌に書かれており辞任騒ぎがあった時にも味方は少なかった。一連の評判はデイリー新調が「“ハンコ失言”の葉梨法相 法務省内からは「この大臣がいる限り、次の死刑執行はムリ」」という記事にまとめているが、このほかにも似たような記事は出回っていた。

実は寺田稔氏も同じような経歴である。こちらは財務官僚出身なのだそうだ。

寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚である総務相に起用された。

と記事には書かれている。

日本の政治には

  • 国会議員は家業であり
  • 家のものが継ぐべきだが
  • 男の仕事でもあるので
  • 娘しかいない場合には婿を取らせる

という日本的な慣行がある。

つまり衆議院の選挙区は昔の藩のような利権になっており「藩主の家」から次の殿様が出るような仕組みになっているのである。殿は男性ではなければならないので後継者が娘の場合には婿を取るということになる。

こうした家に好まれるのが普段からやりとりのある見込みのある官僚なのだろう。能力があっても家柄がなければ殿様にはなれないということだ。

こうした問題はいかにも本質的ではないように思える。加えて葉梨さんは葉梨家に婿に入っているが、寺田さんは池田家に婿に入ったわけではない。慶子さんは池田勇人元首相から見れば外孫にあたるうえ寺田さんは慶子さんの姓を継承したわけでもない。

ただ、文春オンラインの記事を読むと慶子氏が代表をしているという記述が多くみられる。慶子さんが代表をしているといって慶子さんが自分で管理しているのではないのかもしれない。つまり家老のような人が別にいる可能性がある。おそらくはこの辺りの事情が分かれば資金管理の実態もわかるのだろう。

仮に寺田稔氏が選挙に強く直接地元と繋がっていたのであればこうした家老たちに強い打ち出しをすることもできただろう。だが、文春の報道を読む限り寺田氏はそれほど選挙には強くなかったようだ。

葉梨さんの場合外から入ってきた婿が実はプライドの高い人だったというような話だったわけだが、寺田さんの場合は官僚出身でプライドが高い上に地元でどのように繋がっているのかはわからない。こうなると家老格の人を強く問い質せない可能性があり「説明しようにも本人にも実態がわからない」のかもしれない。たたそれでも「自らの不徳の致すところだ」と認めることができればいいのだがそれも難しい。

では「まるで江戸時代のような」やり方は今すぐやめるべきなのかという話になるのだが、これもそれほど単純な話ではない。世襲ではなく県議会議員から苦労して自民党の衆議院議員になった河井克行元法務大臣の事例がある。経歴を見ると選挙に苦労した人だったようだ。政権に批判的な溝手顕正氏を追い落とそうと自民党執行部から多額の資金を提供されるのだがこれが大規模な贈収賄事件に発展した。イエといった後ろ盾がない議員が持ちなれない資金を持つとどうなるのかということがよくわかる。結局実刑判決が出ており3年の実刑のあと5年間は公民権が停止される。

日本の政党は必ずしも組織化が整備されているとは言えない。このため古くからある旧態依然とした「イエ」に頼るしかないというのが実態のようだ。イエと言っても単に血縁で結びついているわけではなく「家臣と家老」のような関係の中に存在している。

つまり「婿や婿同然だからどうだ」という話ではなく日本の政治家を支える基盤に現代的なモデルがないとところが問題なのである。

これに加えて、岸田総理はおそらく周りを大学入試に勝ち抜いたような秀才で固めるのが好きなのだろう。官僚が書いたシナリオ通りに進んでいるうちは問題が起きないのだが、一度問題が起きるとそうはいかない。これが支持率低迷につながっているのかもしれない。これまでの人生で失敗したことがないため一度問題を起こすとどうしていいかわからなくなってしまうのかもしれない

葉梨氏の場合は釈明を聞いているうちに岸田総理が「ああこの人はナイなあ」と感じたようである。つまりそれまでこうした葉梨氏の「空気が読めない側面」を知らなかったことになる。岸田総理もどうしていいかわからなくなり、外交日程を犠牲にするほどのパニックになった。

あるいは寺田氏に対しても同じような感覚を持っているのかもしれない。これまで修羅場になるような経験を共有していなかったのだろう。政権運営が初の修羅場になってしまったのだ。

どういうわけか岸田総理は「間違いが少ない官僚出身」依存をやめられない。葉梨法務大臣の後任の斎藤健法務大臣は東大経済学部出身の通産官僚出身なのだそうだ。

新型コロナについてほとんど説明をしない加藤厚生労働大臣も東大経済学部を出て財務省に入り加藤六月さんの家に入った秀才の婿なのだそうだ。検査すると姉と喧嘩して破断になったものの妹と結婚したなどと書かれている。「間違えない秀才」の大臣たちはプライドが高く自分の非を認めたがらない傾向も持っている。答えが決まっている問題に関しては極めて優秀だが答えがわからない問題には答えが出せない。この体制が支持率回復につながるのは微妙なところだ。

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