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NATO加盟国のポーランドにロシアからのミサイルが着弾し2名が死亡か

今週は外交ウィークなので大したことは起こらないのだろうと思っていたのだがポーランドにミサイルが着弾したというニュースが入ってきた。ポーランドはNATO加盟国なのでロシアがNATOを攻撃したことになる。ミサイルが着弾したのはポーランドのPrzewodówという村だ。2名の死亡が伝えられている。Googleマップで確認するとこの村はリビウの北側約70kmに位置する。ポーランドが若干ウクライナに張り出した地域である。

まだ「速報」レベルなのでこの記事にも事実誤認が含まれる可能性がある。またこの記事は予告なく修正されることがある。くれぐれも今後の報道を注視していただきたい。

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AFPの日本語の記事は情報ソースはアメリカのメディアだと言っている。ロイターによるとAP通信が伝えたもののようである。つまり情報源はアメリカだ。APによればモルドバの電力供給にも被害が出ているという。

APの記事はその後「ウクライナが大規模なミサイル攻撃を受けている」という話につながっている。背景にあるのは屈辱的なヘルソンの撤退である。ロシア国内でも悲壮な空気が漂っておりその払拭を狙った可能性がある。これから冬に向かうウクライナのインフラを破壊する動くは戦略的というより「感情的報復」という気がする。

APの記事を読む限りポーランドが狙われたというよりもウクライナへの攻撃の一部が誤って周辺国に広がったというような感じのようだ。Cross Into(横切る・通過する)という表現が使われている。

ロシア国防省は報道そのものを否定しており「情報が確認できてない」とする報道各社もあり着弾以降情報は錯綜している。

しかし国際社会は「状況がはっきりするまでは静観しよう」という感じではいられない。当事者のポーランドと周辺国が反応しているからだ。

ポーランドのモラビエツキ首相は国家安全大臣と国防大臣に対して緊急会議を呼びかけているとドイチェベレが伝えている。またラトビアの副首相兼国防大臣もTwitterで「犯罪的なロシアの体制」がウクライナの市民だけでなくNATO加盟国にも着弾したとプーチン政権を非難した。日本時間で11月16日午前3:41の発進である。急速にニュースとして広がっているようだ。

今後注目されるのはアメリカとG20の対応だろう。

G20にはロシアのラブロフ外務大臣が出席している。G20加盟国はロシアを非難する方向で結束しているが共同声明が出されれば「ロシアの意見」も乗るはずだ。議長であるインドネシアのジョコ大統領はG20で解決すべきなのは安全保障問題ではなく「経済問題だ」としつつなんとか声明は出したいと考えているのではないかと思う。

一方でアメリカ合衆国もロシアへ批判的な姿勢は維持しつつNATOの参戦は避けたい。レッドラインを「ロシアの核兵器使用」に設定することによってこの問題を管理したいと考えているはずである。

一時は「単にロシアの攻撃が偶発的に飛び火しただけなのでロシアがポーランドを攻撃したわけではなさそうだ」という反応が出ていた。現在「破片が入っただけ」とか「80kmの誤射」などの情報が飛び交っている。

国際社会にはこれ以上経済的な混乱を広げたくないという思惑がある。

一方で、軍事情報に詳しいJSF氏は「大変なことになった」と表現している。ポーランドがこれをNATOに対する攻撃だと見做せばNATOは対応を迫られる。「ロシアに再発防止を求める」くらいでは済まないだろう。ポーランドやラトビアが「自分達は攻撃されている」と対応を求めれば加盟国はこれに対応する必要が出てくる。つまりロシアの意図が何であったにせよ「ポーランドの反応に全てがかかっている」という状態である。

黒井文太郎氏も「かなりまずい」と表現している。やはりNATO領域というインパクトがありこれまでの反応とは違っているようだ。

今回のミサイル着弾がロシアの意図的なものであるとは考えにくい。国際会議で「自分達の意見」を採択してもらおうとしているところだからである。そもそもPrzewodów村に戦略的な価値はなく、ロシアがわざわざミサイルを着弾させてポーランドを刺激するような合理的動機は見出しにくい。一方で「アメリカが国際世論を変えるために情報を出したのでは」とも考えたのだがラトビアの副首相兼国防大臣のTweetと見ると着弾を主張しているのはアメリカだけではないようである。

むしろポーランドやラトビアといったロシアからの脅威を直接受けている国がアメリカ合衆国やNATO各国に対して毅然とした対応を求める可能性もある。リトアニアの大統領は「NATO領土の隅々まで防衛必要」と発言している。

今後数時間でこの問題がどう動くのかはわからないのだが、国際社会の主要なメンバーがインドネシアに集まっているという最悪のタイミングで「偶発的に」起きた可能性も高そうである。今後の各国首脳の発言に注目が集まる。

参考文献

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