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「いい人って思われたい」習近平国家主席のイメージアップ大作戦

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岸田総理が名指しで中国を批判している。日中首脳会談はないのではないかと思っていたのだが17日に開催する方向で進んでいるそうだ。仮に実現するとすれば中国側にも何か狙いがあるのだろうなと感じた。それがイメージアップ大作戦だ。中国は実利的な会合とフォトセッションを使い分けている可能性があると感じた。

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米中会談は最初から実りのないものになるだろうと考えられていた。にもかかわらずなぜ会うのかと疑問だったのだが、米中首脳会談の写真を見てその理由がわかったような気がした。

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習近平国家主席というと普段は笑わない写真しか出てこない。このところ国内政局に集中していたため国際舞台に登場することもなかった。この不在の間に「中国は現状変更を狙って台湾にも軍事侵攻をするのではないか」という観測が大きく広がった。習近平氏としてはメディアにこのような写真を流させることでイメージアップを図っているのかもしれない。いかにも「慣れていない」と言った感じで効果の程は定かではないが、努力している様子は伝わってくる。

実はこうしたイメージ戦略は中国では早くから採用されてきたようだ。2016年の文藝春秋に「ゆるキャラ戦略」という習近平氏のPR手法を紹介する記事があった。2021年には教科書でもイメージ戦略が採られるようになった。こちらは朝日新聞の記事を見つけた。親しみのある国家指導者というイメージづくりをしたいのだろう。

西側のメディアに慣れた国民は「これ程度」でイメージが変わることはないと考えるだろう。つまり「フォトセッション」に儀式以上の意味はない。

だが、党が国家を指導する体制の中国では「これくらいのことをやれば相手が納得してくれるだろう」という期待があるのかもしれない。文藝春秋の記事は「農民の心は鷲掴みに」と書いており習近平国家主席がどの層をターゲットにしているのかがわかる。数の上では少数派のリベラルやインテリではなく庶民層を狙っているのだ。海外でこの写真がどれくらい取り上げられるかはわからないが少なくとも国内向けの絵は作れる。

習近平国家主席はすでにドイツを含む地域の主要国と会談をおこなっている。特にドイツはEUでも懸案材料となっており「ドイツは中国に近づき過ぎているのではないか?」と言われているようだ。

おそらく習近平国家主席は実利的な会談と単なる「フォトセッション」を使い分けているのだろう。国内向けに世界の指導者たちと平和について語り合うという印象を作る。運が良ければ海外の人も「意外といい人そうだ」と思ってくれるかもしれない。

そう考えると名指しで批判している相手に会うということは、岸田総理との面談は単なるフォトセッションだと割り切っているのかもしれないと感じた。国内の支持率が低迷し「得意の外交で挽回を図りたい岸田総理が対中国外交でどのような成果を上げることができるのかが期待される。

今のところ松野官房長官は「米中会談の内容も見極めつつ」と言っておりアメリカが提示した正解をそのまま模倣するような会談になりそうだ。「とにかく間違えないこと」にこだわる岸田総理らしい外交姿勢と言える。

ただしどのような写真を撮られるかに神経を尖らせるのは習近平国家主席だけではない。G20では「ラブロフ外相と一緒の写真に写るのが嫌だ」という首脳がおり集合写真は撮らない方向で調整が進んでいるそうである。「一部」となっているのだが、これが複数なのか単数なのかは共同通信の記事からはわからなかった。

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