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「防衛費はやっぱり増税で」と政府が提言。個人所得税も視野に。

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防衛費をめぐる議論が錯綜している。相当な増額をすると言ってみたり、分類を変えると言ってみたり、当面は国債だと言ってみたり色々な声が出ている。今回は「幅広い税目で」と言い出したのだが、今度は主語が政府になっており開催者は岸田総理だった。「幅広く」というのは所得税などを意味しているようである。政府はまだまだ国民には余裕があると思っているのかもしれない。

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提言を出したのは「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」である。内閣官房によると主催者は内閣総理大臣であり内閣官房で情報発信されている。座長は日経新聞によると佐々江賢一郎元外務次官だそうだ。何回か見直してみたのだが「個人所得税も視野に」という表現があることから、増税プランの中には個人所得税も入っているようだ。

実は所得税の議論は官邸が勝手に言っているわけではない。与党は所得税の増税について検討を始めている。まだまだ庶民から税金が取れると認識しているのだろう。

3回の会合で全ての会合が終わりこの結果は11月下旬に集約される。つまり、これが最終答申に盛り込まれることになりそうだ。

この記事を読んで何回も見直してしまった。テレビで流れてくる話とかなり違っているからである。テレビでは「庶民の暮らしは大変だから総合経済対策をやらなければならない」ということになっている。つまり所得税増税などできそうにない。だが防衛費に関しては「増税も検討する」と言っている。一体政府の本音がどこにあるのかはよくわからない。

政府・与党は反対する財務省を押し切って大方の補正予算を決めた。長期国債では消化ができそうにないために短期国債などを組み合わせる苦肉の策で財源を捻出しているため利上げなどに脆弱な体質になっている。長期国債と違い短期国債などは急速な金利上昇の影響を受けやすいため、イギリスのような状況に陥れば「ゲームオーバー」になりかねない。一方潤沢な予算は使い残された。2019年から2021年までの間の予算は2割未執行で13兆円が繰越になったという報道も記憶に新しい。

少子高齢化の対策もできておらず賃上げも掛け声だけで一向に進みそうにない。だがその裏では粛々と増税に向けた議論が行われていることになる。それぞれがそれぞれの議論をしているのはよくわかるのだが、それが一つの像を結ばない。

ここは疑り深く別の記事を探してみることにした。だが、時事通信も「防衛費増額「国民全体で負担を」 安定財源、増税が軸―財政審」と書いている。やはり間違いはなさそうだ。経団連は「企業が負担することはない」とお断り宣言をだしていることから現役世代に背負ってもらうしかないという判断になりそうだ。

アメリカのバイデン大統領への口約束から始まったこの議論は「相当な増額」という言葉が一人歩きしている。このままでは「相当な増額」にもなりそうにないことから岸田総理は研究開発などの予算の組み替えを計画しているようだ。時事通信は「岸田首相、「総合防衛費」創設表明 研究開発やサイバー、別枠計上」と書いている。つまり研究開発を防衛予算として計上することで数字を上乗せしたいと考えている。

一方で選挙への影響を避け保守派にアピールしたい自民党の別のチームからは「当面は国債を活用しては?」という意見が出ているようだ。国民負担が反発されれば統一地方選挙に負けかねないという気持ちもあるのだろう。危機感を募らせる公明党は選挙対策の一環もあり6兆円の子育て支援策を提案している。政府に大胆な子育て支援策を受け入れさせたと宣伝するポスターが支援者の家などに誇らしげに貼られることになるものと思われる。

自民党の「防衛チーム」が国債の発行を主張してもやはり無い袖は振れないわけでやがては国民生活に負担がのしかかることになる。岸田総理の見切り発車発言は結局「個人への負担」という形で国民にのしかかってきそうだ。

ただ今の時点で政府批判をするつもりはない。そもそも財務省に近いチームが行っていることと防衛省に近いチームが言っていることが全くまとまっていない。岸田総理は両方の発言をただ聞いているだけにしか見えない。

さらにJアラート発出後の避難をどうするのかという話も聞こえてこない。そもそもシステムに信頼性がない上に「どこかに逃げましょう」と言われても困惑するだけだが全国各地にトーチカを建設しようなどと提案されても単に税金の無駄遣いになるだけだろう。国民避難については全く検討せずなぜか「敵基地を打撃すべきだ」とか「サイバー防衛も先制攻撃(積極的防衛・積極的防御という名前がついている)だ」などという勇ましい話が飛び交っている。

単に議論を傍観しているようにしか見えないのだが、もしかしてこれが岸田総理のいう「聞く力」なのだろうか。

政府を批判するつもりはないが「一体どうまとめるのだろうか?」ということは気になった。

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